SDGs ACTION!
コロナ危機で変わる社会

薬とソリューションで社会変革

薬とソリューションで社会変革
エーザイ提供
「公」と「民」の連携で
エーザイ代表執行役CEO 内藤晴夫

SDGsが目指しているのは、企業行動が財務的要素だけで評価されるのではなく、社会においていかなる善を成そうとしているかで判断される社会です。すなわち私たちは企業の目的を根本から見直す革新を求められています。その上で、問題解決の手段としてパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)の重要性を説いています。

SDGsの精神では、企業が短期の利益追求や過度の株主還元を志向するのではなく、社会的インパクトがある行動をとることを評価しようとします。言い換えると、単年でなく中長期、費用でなく投資、あるいは利益の多寡を示す損益計算書(P/L)よりお金の使い方を示す貸借対照表(B/S)を尊重する志向性です。

成長性と持続性のバランスを保ち、屋久杉のごとくきめ細かな年輪を重ねて巨木となることが理想です。またそれを、株主や投資家そしてポリシーメーカーが「良」とすることが求められています。その意味でもSDGs規律とも言える新たな規律が生まれつつあると言えます。

エーザイは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)蔓延(まんえん)下でも、SDGs規律を重視した企業活動に取り組んでいます。第一に考えたのは「信頼」をつなぐこと。通常のコンタクトができない中、いかに相手に我々の想(おも)いを伝えるか。その一策として、備蓄しているマスクなどをお届けすることで連帯する心を伝えようと思い、国内350を超える団体に送りました。また、グローバルヘルスなどで連携している欧米、アジア、アフリカのパートナーへ、感染保護具や支援金を提供しました。 製薬企業の最も重要な使命は、どんな危機にあろうとも患者様の生命に直結する医薬品を届けるということです。事業継続計画をもとに平時より十分な在庫を保有し、全世界にある9カ所の医薬品製造工場を厳重な感染対策を施して稼働を継続することにより、欠品することなく安定供給を維持しています。

2012年、10の「顧みられない熱帯病」の制圧に向けて共闘するロンドン宣言が発表された。日本から唯一参加したのがエーザイだった。右端が内藤晴夫CEO(エーザイ提供)
課題解決にはPPPが必須

また、我々に期待されている「役割」は、COVID-19治療薬やワクチンの創出です。重症敗血症の治療薬として開発を試みた自社創製の化合物には、肺炎の重症化を抑制できるとの期待があり、アカデミアと共同で臨床試験を開始しました。またゲイツ財団と協働し、新たな治療法やワクチンの開発も進めています。今回のようなグローバルな公衆衛生課題は一国、一企業で解決できるものではありません。PPPの取り組みが必須であり、SDGsの精神そのものです。

エーザイがPPPのもと取り組んできたものに、世の中から注目されず貧困地域に蔓延する「顧みられない熱帯病」の制圧があります。その一つ、リンパ系フィラリア症(LF)は蚊が媒介する病気で、感染するとリンパ系に機能障害が生じ、足などが象のように膨らむ象皮症の症状が出ます。世界で約8億9300万人がリスクに晒(さら)されています。感染により就労ができず貧困に陥ったり、差別を受けたりするなど、深刻な社会問題にもなっています。WHO(世界保健機関)とパートナーシップを結び、LFの治療薬をインド自社工場で製造し、これまで28カ国に約20億錠を「プライス・ゼロ(無償)」で提供してきました。全ての蔓延国で制圧を達成するまで、支援を続けます。

エーザイの企業理念「hhc(ヒューマン・ヘルスケア)」は「患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する」こと。この理念実現のため、全社員に就業時間の1%は患者様と共に過ごすこと(共同化)を推奨しています。患者様の真の想いを知り、共感し、どうすれば患者様の憂慮を取り除くことができるか。これを達成すれば、売り上げや利益といった結果は後からついてくると考えています。LF治療薬の無償提供も慈善活動ではなく、理念に基づくビジネスの一環です。貧困を断ち切り、将来の中間所得層を創出するための長期投資として取り組んでいます。

リンパ系フィラリア症の患者様(右から2人目)の話を聞くインド工場の社員。共感し、解決策を探る「共同化」に取り組む(エーザイ提供)
認知症新薬に挑戦

当社が注力している認知症領域での活動は企業理念の実践そのものです。1997年に認知症治療薬「アリセプト」を発売以来、医療従事者や地方自治体などとの連携、認知症当事者やご家族との共同化を進めてきました。

認知症当事者の最大の憂慮は、「自分はいつ認知症の症状が出るか?」「防ぐ方法はあるか?」「家族に迷惑をかけたくない」というもの。これらを取り除くために、エーザイは新たな挑戦をしています。

認知症での新薬開発の難易度は極めて高く、多くの当事者に参加していただく長期の治験が必要となります。我々は、当事者の皆様の憂慮を知っているからこそ、その期待に応えようと、次世代認知症治療薬の開発を粘り強く継続してきました。現在その最終段階を迎えています。

「認知症プラットフォーム(Easiit)」の確立にも取り組んでいます。Easiitを利用する皆様から健康データを提供いただければ、予知や予防に関する情報としてお返しするというものです。それには認知症に関わる独自の高質なデータによる解析アルゴリズムを使う予定です。また、Easiitを基盤とし、当事者を取り巻く様々なステークホルダーをパートナーとする「認知症エコシステム」の構築もめざします。

エーザイは薬とソリューションで社会を変える企業として、誰一人取り残さないという信念で、認知症をはじめとする社会課題解決に全力で取り組みます。

(寄稿)

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