SDGs ACTION!
コロナ危機で変わる社会

コロナ禍機に食の安全へ関心高まる

コロナ禍機に食の安全へ関心高まる
JA全中提供
グループでSDGs全目標達成へ
全国農業協同組合中央会(JA全中)会長 中家 徹

新型コロナの影響は深刻です。全国の産地、多くの品目で大幅な価格下落が生じました。外食の機会や外国人観光客が激減したことで和牛価格が約3割減、式典やイベントの中止が相次いだことで切り花価格が約4割減、といった具合です。お茶や、贈答需要の多い高価格帯の果物なども、大きく落ち込みました。

学校が一斉休校になった影響も大でした。給食がなくなったため、牛乳だけでなく東京では小松菜など給食用につくっていた野菜が行き場を失いました。

農業の現場は高齢化が進み、担い手も年々細っています。このため、外国人技能実習生は繁忙期の貴重な戦力なのですが、彼らが来日できなくなったため多くの産地で働き手が足りない事態となり、これにも悩まされました。

どうやって生産者の経済的な危機を克服し、消費者のみなさんへ農畜産物をお届けするか。それぞれ各地のJAが知恵を絞り、多様な施策を展開しました。

寄付募りユーチューブも

例えば、和牛消費を拡大しようと初めて、クラウドファンディングに挑戦しました。岐阜県の「JAひだ」などが実施した飛驒牛のクラウドファンディングは、1万人の方々から1億円以上の支援をいただくことができました。牛乳対策では、農水省と連携して牛乳の消費を呼びかけたユーチューブ動画をつくったり、JA全農がツイッターでラッシーの作り方などを発信したりしたところ、大きな話題になり、消費拡大につながりました。

国民の皆様に日本農業の苦境をご理解いただき、応援していただいたことがこうした成果につながったと思っています。改めて感謝申し上げるとともに、依然として厳しい状況にあることに変わりはないため、引き続きのご支援をお願いしたいと思います。

こうした中で全中は5月14日、「SDGs取り組み方針」を公表しました。JAグループでは3年に1度、JA全国大会を開催し、グループ全体の方針を定めています。2019年の大会でSDGsに関する取り組み事項を決議しました。その後、組織内で協議を重ね、この春の策定に至りました。

JAは食と農を基軸にした地域に根ざす協同組合であり、持続可能な農業と豊かで暮らしやすい地域社会を築くことを組織理念としています。この理念に立ち、三つの分野・六つの取り組みを掲げています。

一つめの食料・農業分野では、持続可能な食料生産と農業振興に取り組むこと、持続可能なフードシステムの構築に取り組むこと、農業の持つ多面的機能を発揮すること。二つめの地域・くらし分野では、安心して暮らせる持続可能で豊かな地域社会づくりに貢献すること。三つめの協同・組織運営分野では、国内外の多様な関係者・仲間との連携・参画に努めること。全国のJAの取り組みを通じ、グループ全体としてSDGsのすべての目標を達成しようとしています。

JA高知県も農福連携に積極的に取り組んでいる(JA高知県提供)
「国消国産」あらためて

私たち協同組合は、事業そのものがSDGsに直結していると考えています。その一つに農福連携があります。障がいのある方たちに農業へ参加してもらうことで、農業における労働力不足と福祉における就労機会不足を解決する取り組みです。現在70以上のJAが、特別支援学校の生徒への農業実習や就労支援、社会福祉法人などの農業生産に対する営農指導や販売支援をしています。

私たちはこれまで、自国で農業が営まれることの重要性や、食を取りまくリスクが高まっていること、今こそ食料安全保障を確立しなければならないといったことを一貫して主張してきました。コロナ禍の一刻も早い収束は言うまでもないことですが、図らずも今、こうしたことへの注目が高まっているように感じています。

マスクの国内自給率は約20%で、ひとたび輸入が滞るとあれほどの社会問題になりました。日本の直近の食料自給率は38%です。命を育んでいくために、食は何より大切です。持続可能な国づくりという点でも、また日本が必要以上の食料を輸入することで間接的に途上国へ飢餓を輸出しないためにも、自国で消費するものは自国で生産する「国消国産」の考え方や食料安全保障の重要性を、改めて認識したところです。

ただ、JAや農業者だけの取り組みでは、持続可能な食と地域は築けません。工業製品ならすぐに増産することもできますが、農業では難しい。これらをふまえ、1人でも多くの国民の皆様に、農業・農村を支えたいと思っていただけるよう、現状や価値について、あらゆる機会に発信していきます。農業や地域の関係団体などとの連携もさらに進めます。そしてこれからも、おいしくて安全な農畜産物を安定供給していきたいと考えています。

コロナ禍を教訓としつつ、引き続き地道に取り組んでいくことが重要であり、それがSDGsの達成にもつながると信じています。

(寄稿)

JA嬬恋村では……
地元ホテルの従業員 「助っ人」として

高原野菜、中でもキャベツの産地として知られる群馬県・嬬恋村。JA嬬恋村は繁忙期となる4月から10月にかけて、毎年200人前後の外国人技能実習生を受け入れる窓口となってきた。が、今年は受け入れ予定の264人中150人ほどが入国規制にあい、来日できなくなった。

求人サイトなどで募集をかけたが間に合わない。そんな折、地元のリゾート「ホテル軽井沢1130」から、「希望する従業員を人手不足で困っておられる農家の手伝いに」との申し出があった。ホテル側も国内外の観光客激減で、100人弱いる従業員の雇用確保に悩んでいた。

ふだんは繁忙期が重なることもあって、近いようだが遠い存在だった両者だが、初めてニーズが一致。管内の嬬恋キャベツ振興事業協同組合と一緒に村も加わって協議し、JA経由では9人が「助っ人」として農作業に加わってくれた。

収穫期となる6月終わりからはお天気をにらみながら明け方からの作業が続く。労働関連法や給与・社会保険の仕組みなど制度上の壁もあり、簡単に「協業」とはいかなかったが「地域振興を一緒に、との機運はつくれた」と企画審査課長の小林俊也さん。

すでに来年度の実習生受け入れに向けた希望数のとりまとめなど作業が始まっているが、感染者数は再び勢いを増しており、見通しについては予断を許さない状況が続いている。

(高橋万見子)

キャベツの収穫に追われる嬬恋村の夏(JA嬬恋村提供)
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