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ガラスの天井に挑む~女性首相への道

「パリテ」で女性議員を増やせ

「パリテ」で女性議員を増やせ
撮影・朝日教之
立憲民主党参院議員/蓮舫さん

参院議員の蓮舫さんは旧民進党の代表を務め、9月に新たにできた立憲民主党で代表代行に就くなど、常に女性政治家の先頭を走ってきた。女性候補の発掘も進め、女性の声が反映される政治を目指してきた。しかし、このまま自然に増えるのを待つだけでは、女性首相の誕生はおろか女性国会議員が「減少してしまう」と危機感を抱く。「みんなが普通に暮らしていける社会」をつくるために、女性政治家をどう増やしていくか。蓮舫さんの考えを聞いた。(聞き手・大海英史)

高いハードル、票ハラ、セクハラ……

——日本で女性首相が実現するのはかなり難しい状況です。なぜでしょうか。

「首相を生むための分母である女性政治家の数が絶対的に少ないからです。現状の日本では、政治は男性が担うという性的役割が固定されています。衆参両院のホームページによると、我が国では国会議員の女性の割合が衆院は9.9%しかなく、参院でも22.9%です。女性議員は当選回数を重ねることもできず、首相に手を挙げる環境にもない。今回の自民党総裁選を見ても、推薦人を集めることができず、立候補を断念せざるを得ない状況でした」

——どうして女性の政治家は少ないのでしょう。

「国会や地方議会で政治家になろうと挑戦する場合、家族や友人、働き先などから賛同してもらう必要があり、女性の場合は簡単ではありません。独身であれば親や家族、既婚であればパートナーや親族の理解が必要ですが、『やめてくれ』と言われるケースがあります。女性に対して、周囲は『負けたら恥だ』という意識が男性の場合より強く、ハードルが高いのです。私たちは党で女性国会議員の候補者の発掘をしてきましたが、こうした壁に突きあたります」

「さらに、国会は男性議員ですでに席が埋まっていて、新たに女性が割って入るのは難しい。先ほど触れたように、政治を志す女性が立候補を決断し、周囲を説得する作業には時間がかかります。男性はその作業に時間がかからないのですぐに立候補が決まり、候補者の席も埋まってしまうのです」

——女性が政治家になるには高い壁があるということですか。

「立候補の難しさだけではありません。女性候補者は『票ハラ』(支援者からの嫌がらせ)やパワハラ、セクハラにもさらされています。これは当選して議員になってからも続くのです。カラオケや会食などを強要されたという被害が報告されています。私たちはこうしたハラスメントを禁じることも議論しています」

「クオータ制」で女性候補を一定割合に

——これでは女性の政治家を増やすのは難しそうです。増やすには何が必要ですか。

「このまま自然に増えるのを待っていたら、むしろ減ります。国会と地方議会で男女の候補者ができる限り均等になるよう政党に女性候補の擁立を促す『政治分野における男女共同参画推進法(候補者男女均等法)』(2018年5月施行)を、超党派の議員で何とかつくりました。でも、政党に対して『努力義務』でとどまっています。これでは女性政治家の数は現状を維持するだけで精いっぱいです」

「これを打破するには、選挙の候補者を男女同数とする『パリテ』を導入しなければならないと思います。立憲民主党は綱領に『ジェンダー平等』を掲げ、党のパリテを実現するための議論を進めています。また、国会議員の候補者の一定割合を女性にする『クオータ制』の導入も議論しています。まずは政界に女性が挑戦できる環境を整備したい。男性で埋まっている議席を女性が得られるように、段階的に女性候補の割合を上げていく。昨年の参院選では立憲民主党の女性候補者比率は45.2%でしたが、2年後の参院選ではパリテを実現できるように取り組んでいきます」

撮影・朝日教之

——女性の政治家が増えることで、政治や社会は変わるのでしょうか。

「私たちは女性の尊厳を保つ社会をつくりたいと思っています。性暴力、あらがえない虐待や暴力、貧困に苦しむ女性が多い。シングルマザーにはいくつもの仕事を掛け持ちするダブルワーク、トリプルワークで暮らし、雇用も安定しない人も多い。でも、それは自己責任でそうなったんだと切り捨てる文化が依然としてある。彼女たちを追いつめている社会から女性たちが逃れ、貧困や格差をなくす社会に変えていかなければならないんです」

「新型コロナウイルスの危機では、政府が特別定額給付金10万円を配りましたが、世帯主へ給付されることになりました。しかし、『家に居場所がない』『DV(家庭内暴力)や虐待を受け、家にいられない』という女性や子どもがいるのです。私たちは世帯主でなくても受け取れるよう主張し、DV被害者などが直接受けられるようになりました。でも、こうした議論は目立つニュースにならないのです。政治も行政も報道も含めて男性社会で、『女は家を守る』『夫を支える』という前例踏襲の価値観が根強くあり、女性を苦しめています」

女性が普通に生きていける社会を

——9月に菅義偉首相が就任し、新しい政権ができました。ジェンダー平等の進展は期待できますか。

「むしろ後退するのではないかと心配しています。菅首相は『安心して子供を産み育てることができる社会』と言いました。立憲民主党の綱領にも同様の表現がありますが、『社会全体ですべての子どもの育ちを支援し、希望する人が安心して子どもを産み育てることができる社会をつくります』となっています。首相の発言の根底には、女性は結婚して子どもを産み育てる、子育ては女性が担うという固定化された意識が見え、女性に負担を強いるのではないかと危惧しています。さらに、来年度には新婚世帯への補助を30万円から60万円に増やすなど対象を広げるとしています。でも、本当に必要なのは、結婚したらお金をあげるという一度きりの支援ではないでしょう。不妊治療や待機児童、貧困、格差の固定などを自己責任とせず、女性の負担をなくす政策です」

「安倍政権の時は『女性が輝く社会』を打ち出しました。でも、多くの女性は活躍しろとか、子育てをしろとかプレッシャーを与えられるのではなく、普通に生きていける環境を求めているのです。自分が思うような生き方を自由に選択できるようにすることが大切なのです。たとえば、夫婦別姓が認められないと、結婚したり離婚したりした時に姓が変わって様々な手続きに手間がかかる。そんな不都合をなくし、女性が普通に暮らしていける社会が大切だと思います。女性に限らず、息苦しさを感じない、プレッシャーがない社会が大切です」

参院予算委員会で安倍晋三首相(当時)に質問する蓮舫さん(右側手前から2人目)=2020年3月9日、岩下毅撮影

——立憲民主党など野党も含めて、女性首相が誕生するのは遠い先のように思えます。

「自民党総裁選でも女性候補が手すら挙げることもできない。本人に意欲があっても派閥が拒絶してしまう。すべて男性優位です。スウェーデンでは閣僚の多くに女性がいて、女性首相誕生に手がかかっている。フィンランドなどでは女性が首相を務め、女性が閣僚の多くを占める。一方、日本は閣僚がわずかで、手すらかかっていない。20年に国会議員や企業の経営層などの『指導的地位』の女性の割合を30%程度にするという目標も達成できず、今年7月に断念してしまう始末です」

「近道はパリテです。まず議員を増やし、閣僚を増やす。基盤となる議員が半分になれば、必ず政治の景色が変わる。一人の目立つ女性が脚光を浴びて首相になったとしても、うまくいかなければ孤立してしまい、批判を受けてしぼんでしまう。女性同士が足の引っ張り合いをするのではなく、全体を底上げしていくことが近道です。さらに、政治だけでなく、各界で女性が重要な役割を担う社会をつくる必要があると思います」

撮影・朝日教之

蓮舫(れんほう)
1967年、東京都生まれ。幼稚園から大学まで青山学院で学んだ。報道キャスターなどを経て、2004年に民主党から参院議員に初当選。菅直人内閣の行政刷新担当相、民進党代表などを歴任し、今年9月にできた新しい立憲民主党の代表代行に就任。23歳双子の母。
Keywords
パリテ

「同数・同等」を意味するフランス語。人口は男女半々であり、政治も平等に担おうという考え方や原則を表す。フランスではこれに基づいて、2000年に「候補者男女同数法」(パリテ法)ができた。候補者を男女同数・平等な50%ずつにすることを政党に義務づけ、男女差が2%を超えた場合は政党助成金が減額される。国民議会(下院)の女性議員比率は00年の10.9%から17年には38.8%に上がった。県議選では必ず男女がペアで立候補し、そのペアに対して投票する。「クオータ(割り当て)制」は男女同数を実現するための手段の一つで、候補者数や議席数の一定割合を女性に割り当てるなどの仕組み。内閣府男女共同参画局の資料では、118カ国・地域(20年2月時点)で導入されている。

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