「メンター制」で多様な人を仲間に迎えたい 自民・牧島かれんさんインタビュー

この秋、女性初の自民党青年局長に就任した牧島かれんさんは「女性に限らず、様々なバックグラウンドのある人にチームに入ってほしい」と言う。そのために、先輩議員らが相談にのる「メンター制」を提言している。政治を目指す人たちの「背中を押す」ことで、政治の多様性につなげたいという趣旨だ。日本の政治が変わるためには、巨大与党の自民党の責任は大きい。若手政治家の「登竜門」といわれるポストについた新青年局長は、どう自民党を変えるのか。(聞き手・金本裕司)
自民党も変化の途上にいる
――米国留学の経験をお持ちですが、黒人女性の上院議員が副大統領候補になるなど女性が活躍する米国と、日本の政治の違いをどうお考えですか。
「世界経済フォーラムが発表する『ジェンダーギャップ指数』(2019年、日本は121位)が低いことと関連しますが、順位を下げているのは政治の現場で女性の比率が低いからです。経済界や社会的な活動で、女性たちはそれぞれがんばっておられるので、政治の責任は大きいと感じています」
「米国から帰国したのは20年前ですが、そのころは米国でも女性は特に上院議員にはなかなかなれなかった。この20年間、米国は前進したと思いますが、日本はまだ途上という気持ちです。ただ、変化はしてきていますので、流れを止めないように、私たちの世代が踏ん張る時だなと感じています
――変化の途上といわれましたが、どのあたりが変化していますか。
「私の地元の神奈川県でいうと、他党には衆議院の女性議員はいますが、自民党では衆議院議員で女性というのは、私が初めてでした。神奈川には18の選挙区がありますが、フラッグを1カ所立てたかなという感じです。その後は、地方議会で女性議員、立候補者は増えてきています」
――国政レベルでは、自民党は女性議員の比率が低いですね。
「党の青年局や女性局では、地方の仲間と多様な候補者をもっと意識すべきだという議論をしています。女性に限らず、様々なバックグラウンドをもった候補者が、チームに入ってきてくれることを期待しています。女性の勉強会とか女性塾とかやっていますが、すごく優秀な人がいます。ただ、いざ立候補ということになると誰かが背中を押さないといけないと思っています」
「おそらく一番心配しているのは、毎日の生活スタイルがどれくらい変わるかだと思います。私がいま提案しているのは『メンター制度』です。女性議員も結婚、妊娠、出産する世代が増えているので、その経験を踏まえて、場合によっては、立候補を検討する女性とその家族ごとメンターが支えますよという制度を作るよう提言をしています」
――クオータ制についてはどうお考えですか。
「私は一貫してクオータ制には反対です。クオータ制だから選ばれたとなるのは、活動されている女性議員にとっても社会全体の女性にとっても、幸せなことではないと思います」

積み上げていくことで周囲も変わる
――米国で学んだ経験のある牧島さんからみれば、自民党の世界、政治の世界はなんと非合理なんだろう、と感じておられるのでは。
「私自身はあまり気にせずにやっています。しかし、私が立候補した時は、私より応援してくださる周りの方に戸惑いがあったのではと思います。衆議院議長だった河野洋平先生から、40歳も若く、しかも女性に代わるというのはどうかと。だけどもう今は、みなさん何とも思っていないですね。慣れもあります。一つひとつやるべきことをやり、積み上げていくことで周りの認識も変わってくるというのが私の経験です」
――女性が政治を志す場合、結婚していない女性が政治家になると「結婚へのハードルが高くなった」とおっしゃる方が結構います。
「政治家だけでなく、ビジネスでも意思決定の枢要な立場にいると、仕事に忙しく、プライベートな時間が少なくなるというのはあると思います。しかし、パートナーのあり方も変化してきています。法的な結婚という形ではない結びつきなど、多様な考え方があってよいと思います。当人同士の話ですよね」
――夫婦別姓についてはどうお考えですか。
「反対ではないです。オプションが広がればいいなと思います。自分の『氏』を守りたいと思っている人が大勢いるので、その人たちの声が政策になればいいなと思っています」

――女性の首相が誕生する日はいつごろでしょうか。
「まずは女性議員のベースを広げることだと思います。例えば、企業の中でも部長になるための候補者のプールがあって、その中から出てくるのでしょう。そのプールの中に女性が増えていくことがまず大事です。国政に挑戦する女性を増やすには、地方議会の女性、行政の首長の女性の割合を増やす必要があると思っています」
女子中高生は政治と世界に関心を
――女性が政治や社会の中で中枢を占めるようになることで、政治や社会はどう変わるでしょうか。
「次の世代、女性へのインパクトは大きいと思っています。日本の小学生に、政治のニュースを見るか聞くと、女子のほうが多いんです。それが中高生になっていくと、もちろん関心領域が広がるというのはあるのですが、政治への関心が下がってしまいます。女子中高生が、毎日の生活と政策の関わり、社会と政治の関わりへの関心を失わないようになるといいなと思います。女性が活躍すれば、そういう関心をもってもらえることにつながると思っています」
――自民党の杉田水脈議員の発言は、同じ党の若手女性議員としてどう思われましたか。
「私は現場にいませんでしたので、明確にいえる立場ではありません。あえていえば、政治家の発言は、自分自身で責任を持つことだと思います。私たちは民主主義プロセスによって、国民から投票をもって負託を受けているのだから、負託を受け続けられるのか、受けられないのか、本人が最終的に結果を受け止めることになると思います」
――ジェンダー平等はSDGsの主要目的ですが、他の分野で関心を持たれているところはありますか。
「超党派のユニセフ議員連盟の事務局長として、ユニセフが日本の子どもたちにSDGsに関心をもってもらおうと企画したシンポジウムに参加しました」
「日本の女の子は、男の子と同じように学ぶ機会を与えられていますが、世界の女の子の中には、女の子として生まれただけで、学校に行くことができなかったり、『児童婚』の対象にされたりしている子どもがいます。日本の女の子たちには、そういう現実を知って、世界に関心をもってほしいと思っています」
1976年生まれ。衆院当選3回。米ジョージ・ワシントン大学大学院修了。帰国後、大学講師などを経て、2012年、河野洋平元衆院議長の後継者として、神奈川17区で初当選。20年9月の自民党人事で女性初の青年局長に就任。
-
2021.05.21都議選で女性の躍進は? 前回36人を上積みできるか 女性議員比率は世界166位、「G7最低」が続く
-
2020.10.27女性の声は女性議員にこそ届く 自民・稲田朋美さんインタビュー
-
2021.07.29公共施設トイレで生理用品配布、東京の豊島、中野区など 「ジェンダー不平等」の解消めざして
-
2021.07.27課題見つけ、解決策を考える力を子どもたちに 戸田市・戸ケ﨑教育長、ICT教育を語る
-
2021.10.08【夫婦別姓問題、どうしますか?】プロローグ 選択的夫婦別姓、政治の表舞台に 推進派だった岸田首相はどうする?
-
2021.10.14【夫婦別姓問題、どうしますか?】 私たちは「家族戸籍」にこだわります 自民党・片山さつき参院議員