SDGs ACTION!
ガラスの天井に挑む~女性首相への道

女性が増えれば政策の多様化や透明化が進む

女性が増えれば政策の多様化や透明化が進む
撮影・朝日教之
立憲民主党衆院議員/辻元清美さん

辻元清美衆院議員を政界に導いた土井たか子さんが、旧社会党で女性初の政党党首になったのは1986年。辻元さんは「その頃から政界で女性をとりまく状況は変わっていない」と語る。まずは政治の世界で女性の数を増やして、裾野を広げることから話が始まると力を込める。女性政治家は政策に多様化をもたらし、政策決定の透明化が進むと語る辻元さん。菅政権となって初の本格的な国会となる臨時国会では、予算委員会の野党筆頭理事として、論戦の陣頭指揮をとる。(聞き手・秋山訓子)


——日本は政治の場に女性が少ないとずっと指摘され続けています。このような現状をどうご覧になりますか。

「ドイツのメルケル首相、台湾の蔡総統、ニュージーランドのアーダーン首相。みんな女性のリーダーですが、コロナ禍での対応も非常に優れていました。女性は生活に密着した感性を持ち、人に寄り添うのが上手です。女性ということで自分自身が何らかの形で差別された経験を持つ人が多いこともあり、人権や差別の問題にも敏感だと思います。コロナ禍でそういった資質が生きたのではないでしょうか。逆に、マッチョ型の男性リーダー、たとえば米国のトランプ大統領や、イギリスのジョンソン首相、ブラジルのボルソナーロ大統領などは対応にまずさが目立ったように思います」

国会論戦のリーダーに女性がなる時代に

——女性が政治の場に増えると何が変わるのでしょうか。

「先ほど言った資質に加え、女性は多様性や透明性を強く求めると思います。私の地元の大阪府島本町議会は、いち早く女性が半数を占める議会となりました。もともと女性の市民活動がとても盛んな地域で、情報公開制度も1984年と極めて早い時期に導入されています。女性が増えれば、夜の酒席で重要な物事が決まったりするようなこともなくなるのではないでしょうか。ママ友が議会の傍聴に来たりして、今まで政治に関心がなかった人が政治に興味を向けるようになります」

——国政の場ではようやく女性が1割です。

「この臨時国会では、予算委員会の野党の筆頭理事が衆院では私で、参院は同じ立憲民主党の森ゆうこさんです。筆頭理事とは国会論戦の責任者であり、質問者の陣頭指揮をとってリードする役割です。女性もだんだん実績を積み重ねてきて、単なる『お飾り』ではなくて、こんなふうに実質的に差配するポストにつくようにもなりました。でも、いかんせん女性議員の数が少なすぎます」

撮影・朝日教之
クオータ制で有能な女性の発掘を

——どうやったら女性議員が増えるのでしょうか。

「小選挙区制度では、地元をくまなく回ってどぶ板選挙をしなければ勝てない。そもそも自民党は世襲議員が多く、そこに野党が挑んで勝つのはものすごい活動量が必要です。酒席を共にするといった地元の活動も根強く残っていますから、女性にはいろんな意味で不利だと思います。私はシングルですが、男性議員には『政治家の妻』がいて、子育てから身の回りの世話、選挙区を回ることまでやってくれます。たとえ女性議員が結婚していたとしても、夫にそこまで求めるでしょうか。まだ小さい子どもがいる女性議員は両立に苦労するという話をよく聞きますが、男性議員でそういう話は耳にしません。私のように未婚で国会議員になると、たとえ結婚したいと思っても、男性がひいてしまって、しづらいということもあると思います」

——クオータ制度を導入したほうがいいと思いますか。

「女性議員を増やすには、候補者の一定程度を女性にするクオータ制度を導入せざるを得ないと思っています。もし導入したら、各党は政治家にふさわしい人を必死に探すでしょうから、多くの有能な女性が発掘されると思います。政党助成金などの制度と連動させて、女性の割合を一定程度確保しないと助成金を交付しないなどすれば強制力も持たせられます。2回目の選挙以降は自力で頑張るとしても、1回目は優遇する。これで政治への参入障壁を下げると思います。国会議員の3割が女性になれば、政治の風景も政策も大きく変わると思います。介護や子育てといった生活に密着した政策がもっと充実するのではないでしょうか。国会の風景が変わることで、社会全体で多様性を重視しようという風潮につながるのではないかと思います」

辻元さんの衆院議員バッジ
女性たちの思いを託されて

――日本に女性の首相が誕生する日は来るでしょうか。

「とにかくまず女性議員を増やして、裾野を広げることです。それから、社会の空気も変える必要があると思います。女性首相を望む声がまだそれほど多いとは思えません。土井たか子さんが1986年に旧社会党の委員長となったのは、党が惨敗してどうしようもなかった時でした。そのような非常時でないと、女性にリーダーを任せようという機運が出てこないのです」

「それから30年以上たちましたが、女性と政治をとりまく状況は変わったでしょうか。残念ながらそうではないと思います。首相になった方たちも、菅(義偉)さんの前までは多くが世襲議員でした。自分が政治活動をしてきた実感として、政治の場にはまだ『女性のくせに』とか『うるさい女』のような、女性を差別するような言葉が残っていると感じます。私も何度も言われたことがありますが、『男性のくせに』とか『うるさい男』とは言いませんよね。私の支持者には女性が多いのですが、多かれ少なかれ女性だということで何らかの悔しい思いをしている。それで私に『がんばって』という思いを託してくれているように感じます」

気候変動への対応が急務

——ジェンダー平等以外で関心を持っているSDGs(持続可能な開発目標)の分野はありますか。

「まず気候変動です。人類が未来にわたって生き延びられるかどうかの鍵を握っていると思います。政治家になる前のNGOの時代から世界中の気候変動が影響を及ぼしている現場を見てきました。日本でも近年、自然災害が頻繁に起こっていますよね。SDGsの目標年2030年までの10年の間に、火力発電を減らし、自然エネルギーを増やす政策の後押しをしていきたい。それから貧困問題、特に子どもの貧困です。菅首相は『自助・共助・公助』を掲げていますが、すべての人が自助でやっていけるためにこそ、公的なサポートが必要だと思っています。子どもの貧困に取り組むNPOの支援制度、予算措置などをしていきたいです」

辻元清美(つじもと・きよみ)
1960年奈良県に生まれ、大阪で育つ。早稲田大学在学中に国際交流NGO「ピースボート」を設立、民間外交を進める。96年、社民党から衆院初当選。現在当選7回。鳩山由紀夫内閣の国土交通副大臣や菅直人内閣の災害ボランティア担当の首相補佐官、立憲民主党の国会対策委員長などを務める。
Keywords
大阪府島本町議会

2013年の選挙で定数の14人のうち半数の7人が女性になった。今は14人中6人。他に女性議員が半数を占めたことがある地方議会には、神奈川県の大磯町や葉山町などがあるが、全国的に見ても極めて少ない。

この記事をシェア