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ガラスの天井に挑む~女性首相への道

重要政策の意思決定に女性の参加を

重要政策の意思決定に女性の参加を
撮影・朝日教之
自民党参院議員/松川るいさん

松川るいさんは外務省で外交官として活躍し、参院議員に転じた。それから4年。菅義偉政権では防衛政務官兼内閣府政務官に就任した。順調にキャリアを積み上げてきたように見えるが、女性政治家としての苦労もあるという。女性が国会議員として力を発揮するにはどうしたらいいか、を聞いた。(聞き手・大海英史)


——外務省では女性参画推進室長を務めました。

「外務省は男女の違いや固定的な役割分担が少ない職場です。私が入省した時のI種(現在は『総合職』)は採用人数28人のうち女性が4人でしたが、今ではほぼ男女半々になりました。外務省には専門的な地域や領域で働く専門職員という職種もあり、専門職員は私が入省した当時から約半分は女性でした。あまり女性ということを意識せずに仕事ができる環境になっています」

——政治の世界では、今回の自民党総裁選でも女性候補は出られませんでした。

「総裁選で勝利するには、制度上、国会議員からの支持と地方の党員の支持の双方が必要です。総裁選に立候補するためには、20人の国会議員の推薦が必要なので、自分を担いでくれる仲間がいります。仲間づくりには時間もかかるでしょうし、男性が大半の世界の中では工夫もいると思います」

「自民党には派閥というか政策研究グループがありますから、現実的には、候補になるにはグループを束ねるポジションにいるか、そうしたグループから支持を得られるポジションにいることが必要です。男女関係なく、総裁選については、立候補できるかどうかだけでなく、立候補したことによる影響なども勘案して決断されるものだと思います。今回は、急だったこともあり、いつも以上に様々な考慮があって判断されたのではないでしょうか」

女性議員が3割以上になれば、政治が変わる

——なぜ党内で影響力を持つ女性国会議員がいないのでしょうか。

「影響力を持つ女性国会議員はいらっしゃいます。ただ、数は少ない。そもそも女性の国会議員が全体として少ないからです。日本の政治では、当選回数を重ねないと影響力を持つポジションにつくことは難しいわけですが、国会議員になる女性自体が少ないので、当然、選挙を勝ち抜き続ける女性議員の数はもっと少なくなります」

「また、日本の政治はいまだに男性の世界ですから、その中で女性が影響力を増していくのは大変だと思います。組織では全体の3割を超える割合を持てば、組織全体の文化が変わると言われます。女性国会議員が3割以上になれば、政治も変わると思います」

——現状は自民党の女性国会議員は約1割です。

「参院議員では女性の割合はかなり増えていますが、衆院議員に占める女性の割合は約10%に過ぎません。とくに衆院の小選挙区は党として選ぶ公認候補は1人だけなので、男女かかわらず、『新陳代謝』は起こりにくい構造です」

「さらに、週末は、国会のある東京から地元に移動して支援者などを細かく回る必要があります。女性でも、独身または子育てが一段落していれば大丈夫でしょうが、子育て中の女性にとってはかなり大変です。夫や親が子どもを丸抱えでみてくれる環境があればなんとかなるとは思いますが。私も子育て中なので、会食を控えたり、週末に地元に帰るときは子どもをどうするか悩んだりしながら活動しています」

撮影・朝日教之

「男性議員の多くは妻が地元に残って子育てをしながら地元活動も支えていますので、週末は家庭にあまり時間を割くことなく地元活動ができます。これは昭和から変わらないモデルです。政治をやる以上、地元との関係づくりは大変重要であり、そこに時間を使うことは当然必要なことです。ただ、多大な時間を使うことが要求されるこの昭和モデルと同じ活動内容が期待されるとなると、子育て中の女性が積極的に政治活動を続けるのは難しいと思います。時間的制約のある人は代替手段を考え出して、置かれた状況に合わせて活動せざるを得ません。こうしたことについて政治家自身が有権者の皆さんに理解していただくよう努力することも必要なのかもしれません」

実力主義が進むことは女性にもプラス

——女性国会議員を増やすには、どうすればいいのでしょう。

「国会議員に挑戦する母集団ともなり得るのが地方議員ですが、地方議員に占める女性の割合は非常に低いです。まず、地方議員に女性を増やす必要があります。各党が一定割合を女性候補にする努力をしないと。やはり、女性割合の引き上げに成功した各国の例を見ても、候補者の中の一定割合を女性に割り当てる『クオータ制』は有効だと思います。これは国会議員の候補者についても検討されて然るべきだと思いますし、実際、自民党の下村博文政調会長は、次期衆院選の自民党の公約に盛り込むことも検討したいとおっしゃっています。これは多くの自民党内の声を受け止めてくださったものと思います。自民党も変わろうとしています」

「また、ぜひ多くの女性の皆さんに政治の世界にチャレンジしていただきたいと思います。コロナ禍により、政治はより身近で重要なものと感じる人たちが増えています。国政は大変でも地方議員であれば自分の住んでいる町で活動は完結できます。(一つの選挙区で複数人を選ぶ)中選挙区制ですから立候補もしやすいです。生活や仕事の中で感じている女性の声を届けることは、より身近な地方行政においてこそ、一層重要だと考えます。地方政治で女性の力が増えれば必ず国政も変わります」

「国立社会保障・人口問題研究所の調査で妻の平日の平均家事時間は夫の7倍という現実も考えなければいけません。女性が抱える負担や時間のハンディは男性より大きく、これを男女間でより公平に分担して能力を発揮できるような社会にしないと、政治の世界に挑戦できる女性も増えないでしょうし、政治において女性が活躍することも難しいと思います」

——女性が派閥やグループのリーダーとして首相候補になるのはまだ先ですね。

「菅義偉首相は無派閥です。まず閣僚に抜擢されて政策を実現する能力が認められ、『この人は頼りになる』と評価されていった。官房長官として実力を発揮したことが首相をお任せしたいという支持につながりました」

「新型コロナウイルス、大きな災害、厳しい安全保障など危機に直面する時代になり、政治家に対し、国を運営する力、すぐに対応できる能力が従来以上に問われるようになっていると感じます。こうした実力主義が進むことは女性にとっても良いことだと思います」

撮影・朝日教之

――とはいえ、菅政権では女性閣僚は2人だけです。

「菅内閣は、安倍政権を急きょ引き継ぐことになった事情もあり、即戦力や経験を重視した陣容だと思います。ただ、『ポストが人をつくる』という面もあります。今回、私も防衛政務官兼内閣府政務官に起用していただきましたが、女性や若手にチャレンジの機会を与えていただければありがたいですね」

「党の役職も、新型コロナウイルス対策だったり、税制調査会だったり、重要な政策を決める組織の中の意思決定権のあるコアグループに女性が入るようになれば、よりよい政策が実現できると思います。また、女性も経験を積んで成長できます。意思決定の中心となる場で意識的にチャンスを与えることも今後は必要だと思います」

――女性国会議員が増えれば、政治は変わりますか。

「北欧のフィンランドは閣僚19人のうち12人(発足時)が女性です。フィンランドの駐日大使との食事会で『すごい』と驚いたら、もう男女平等が当たり前だから閣僚の女性割合なんて考えたことがないとおっしゃっていました。実力で選んだ結果がそうなっただけだと。サンナ・マリン首相が女性で、34歳で就任していますが、首相が女性であるとか若いということが取り立てて話題になるわけではない、皆、それは実力で選ばれた結果だと思っているだけだから、と」

「日本でも地方議員や国会議員の4割以上は女性ということが当たり前になれば、『男女比率』を意識する必要はもはやなくなるわけです。しかし、諸外国と比較するまでもなく、いや比較すると目を覆いたくなりますが、今の日本の政治は国政も地方も女性があまりにも少なすぎますので、意識的に努力をして変える必要があります。女性が増えることで、評価の対象が『時間』から『結果』や『能力』に変わっていくと思いますし、政治活動のスタイルも多様化し、より多様な人材が政治の世界に参入しやすくなると確信しています。その結果、女性だけでなく若手も実力を発揮しやすくなるでしょう」

「政策面では、子育てや女性が抱える問題といった分野はもちろん、あらゆる政策において人口の半分を占める国民の意思がよりきめ細かく反映されるようになるでしょう。政治家を目指す女性を増やし、さらに長く政治に携わることができるようにするためにも、今後は、①女性の家事や子育てにかかる時間のハンディについて考慮する、②意思決定権のあるポストを経験するチャンスを与える、③候補者の一定割合を女性にするよう努力する、という3点を意識していくことが有効ではないかと思います」

撮影・朝日教之

松川るい(まつかわ・るい)
1971年生まれ。東京大学法学部卒。93年に外務省に入り、アジア大洋州局地域政策課課長補佐、軍縮代表部(スイス)一等書記官、国際情報統括官組織首席事務官、日中韓協力事務局(韓国)次長、女性参画推進室長。2016年に外務省退職。同年7月、参院選(大阪選挙区)で初当選。20年9月、防衛政務官兼内閣府政務官に就任。
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