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ガラスの天井に挑む~女性首相への道

女性も実力をつけ、本物のリーダーに(後編)

女性も実力をつけ、本物のリーダーに(後編)
撮影・朝日教之
国際政治学者/三浦瑠麗さん

三浦瑠麗さんは国際政治学者の立場から日本の政治や外交・安全保障などの政策について鋭く分析したり、提言したりしている。与野党を問わず、厳しくリーダーを批判することもある。一方で、女性としての生き方や体験を綴ったエッセーも出版した。そんな三浦さんに、「なぜ日本では女性の首相が誕生しないのか」を聞いた。(聞き手・大海英史)


——女性国会議員はまず実力をつけることが大切ということですか。

「はい。女性がリーダーになれない、いわゆる『ガラスの天井』は私もよくわかるんです。でも戦っている時に、女性だから不利だと弱音を吐いてもリーダーの座は手に入らない。勝つための論理としては、甘すぎるんです。たとえば、今回の自民党総裁選で石破茂さんは不遇な状況に追い込まれましたが、嘆いても有権者はついてきませんよね。世の中はアンフェアなものです。男性が弱音を吐いたら負ける。女性も同じです。2016年の米大統領選でヒラリー・クリントンが自身が女性であることの不利を訴えたのは敗北を認めてからです」

「女性は明らかに不利です。その時に自分がトップをとりたいから戦うのか、社会で不利な立場にいる女性のために働こうと立ち上がるのか。ヒラリーは後者です。黒人の女子学生が妊娠し、シングルマザーとなって学べなくなるという問題を取り上げ、コミュニティーカレッジに保育所をつくった。戦うために大切なのは、女性として不利だからトップをとれないという『私自身のストーリー』ではなく、社会を改革したいという執念、志だと思います」

弱音を吐かず、社会改革の執念を

——女性国会議員の中にはシングルマザーの貧困や女性への差別をなくすために尽力する人もいます。

「はい、大事なことです。一方で、リーダーをめざす女性国会議員には、女性の問題にとどまらず、経済政策と外交・安全保障政策を語る力を身につけていただきたいと思います。確かに女性の権利や子育ては重要な政策ですし、女性議員に期待されている分野ですが、経済と外交・安保の話になって急に語りが止まらないでほしい。男性もそうですが、女性リーダーの候補が討論番組で経済、外交・安保で話が止まってしまえば、リーダーとしての政治生命に関わる。国を動かすには、国全体に関わることを学び、主張する必要があると思います」

「ノルウェーの女性の国防次官が大将のような階級の高い武官たちを当然のように従えているのを目の当たりにして、ジェンダー平等が進むとこうなるのかと感心したことがあります。女性の政治家であってもお飾りでなく軍を統率する実力を持っていなければなりません。ノルウェーでは右派政党のトップも女性です。女性がトップだから平和主義やリベラルということではなく、女性政治家にも多様性があります。ただ一点、思想がどうあれ、ジェンダー平等は実現されているわけです」

「私は男性の政治家を厳しく見ています。実力がなければ批判します。それと同じように女性の政治家も厳しく見たいと思いますし、本物の政治家として活動してほしいと考えます」

撮影・朝日教之
女性が意志を曲げず、自ら切り開ける社会

——日本ではSDGsの中でジェンダー平等が進んでいないと指摘されています。

「SDGsの目標5(ジェンダー平等)では、恵まれた女性がリーダーになれない問題もありますが、もっと重要なのは一般の女性が置かれた環境を改善することです。性的な暴行を受けず、不幸な妊娠をせず、意志を曲げず、自らの道を切り開いていけるようにすることです」

「東大に在籍していた頃、様々な国における大学での女性への暴行や嫌がらせの調査をまとめました。オーストラリアの調査では多くの女子学生が性的嫌がらせを受けたと申告し、韓国では女子高校生が男性教師の餌食になっていたことが明らかになりました。日本の大学では少なくなってきましたが、まだありますし、大学院では性的な嫌がらせを受けて研究を断念する問題が告発されています」

「きらきらした世界での活躍ではなく、一般の女性が置かれた立場を理解し、関心を持って取り組むことが必要です。女子が意志を曲げずに学び、高等教育を心配なく受けられる社会こそがジェンダー平等にとって大切だと思います」

撮影・朝日教之
三浦瑠麗(みうら・るり)
山猫総合研究所代表。内政が外交に及ぼす影響の研究など、国際政治理論と比較政治が専門。1980年、神奈川県生まれ。東京大学農学部卒、東大公共政策大学院専門修士課程修了、東大大学院法学政治学研究科総合法政専攻博士課程修了、博士(法学)。日本学術振興会特別研究員、東大政策ビジョン研究センター講師などを経て2019年から現職。「シビリアンの戦争―デモクラシーが攻撃的になるとき」(岩波書店、12年)、「21世紀の戦争と平和―徴兵制はなぜ再び必要とされているのか」(新潮社、19年)、自伝的エッセー「孤独の意味も、女であることの味わいも」(新潮社、19年)など多くの著作がある。
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