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再生可能エネルギーで切り開く~CO₂排出ゼロを目指して

大和ハウスが千葉・船橋に「再生エネ100%」の街

大和ハウスが千葉・船橋に「再生エネ100%」の街
船橋グランオアシス(線路の上方の道路沿いに並ぶマンションや商業施設など。大和ハウス工業提供)

大和ハウス工業が首都圏の郊外で再生可能エネルギー100%の街づくりを進めている。マンションや一戸建て住宅で900世帯近くが住む街は、使用する電力の二酸化炭素(CO₂)排出が再生エネの利用によって実質ゼロとなる「ネット・ゼロ・エネルギー・タウン(ZET)」。同社は新しい街づくりのモデルとして期待している。(編集部・大海英史)

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船橋グランオアシスのある塚田駅の都心などへのアクセス(大和ハウス工業提供)

千葉県船橋市の東武アーバンパークライン(野田線)塚田駅は東京都心まで電車で30~40分ほどの郊外にある。周辺は一戸建て住宅が並ぶ閑静な住宅街で、近年は新しいマンションも建つようになった。

駅から徒歩3分の工場跡地に現れたのが「船橋グランオアシス」だ。事業面積約5万7456㎡(東京ドーム1.2個分)の敷地に、11階建ての分譲マンション(計571戸)、賃貸マンション(計223戸)、3階建ての賃貸アパート(計39戸)、戸建て住宅(26区画)が並ぶ。

道を隔てた隣には、スーパーや飲食店、薬局、スポーツジムなどが入る商業施設が新しく開業した。さらに商業施設の隣には来年4月、新しい小学校と保育園がそれぞれ開校、開園する。

今年2月に賃貸アパートや戸建ての入居が始まり、10月には分譲マンションの入居も始まった。来年2月には賃貸マンションの入居も始まる予定だ。都心へのアクセスも良く、2LDK~4LDKの分譲マンションには20~30代の子育て世代が多く入居する。

大和ハウスグループの太陽光や風力などを供給

船橋グランオアシスの最大の特徴はCO₂排出ゼロへの取り組みだ。建設工事に使う電力から、完成した後で入居者が日々の暮らしに使う電力まで、すべての使用電力を再生エネでまかなう。

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船橋グランオアシスのCO₂排出削減効果(大和ハウス工業提供)

マンションや戸建てには太陽光パネルと蓄電池が設置されている。さらに、大和ハウスグループは国内で太陽光、水力、風力発電所計約330カ所(計約38万kW、2020年3月末現在)を管理・運営しており、この再生エネ由来の「非化石証書(トラッキング付き)」付きで電力を供給する仕組みを活用することで、実質的に「再生エネ100%」を実現した。

分譲マンションの室内には、電力使用が多い順に「赤」「黄」「緑」で伝える表示器もついている。「赤」になれば使い過ぎだと入居者に知らせ、省エネに役立ててもらう。

再生エネと災害対策でエコタウン

大和ハウス工業はこれまでにも、「ゼロ・エネルギー・タウン プロジェクト」に取り組んできた。

2013年、大阪府堺市に「スマ・エコ タウン晴美台」を開発し、太陽光発電などでつくるエネルギー量が街のエネルギー消費量を上回るネット・ゼロ・エネルギー・タウン(ZET)が初めて誕生した。

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「スマ・エコ タウン晴美台」(大和ハウス工業提供)

三重県桑名市の「スマ・エコ タウン陽だまりの丘」では、丘の斜面に太陽光パネルを置いて、住民共有の「街かど太陽光発電所」(100kW)を設置した。街のゼロ・エネルギーに加えて、ほかに電力を売ることで街の収入にしてメンテナンスサービスや住宅修繕積立金にあてている。

こうした取り組みを大規模な街に広げたのが、船橋グランオアシスだ。同社環境部の主任技術者、園田峯三さんは「船橋の街づくりをベースに、今後は三つのReとして、実現性がある『Reality』、再生エネを活用する『Renewable Energy』、災害時の維持・回復力がある『Resilience』を持つ新しい街づくりブランド『コReカラシティ』を実現したい」と話す。

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「スマ・エコ タウン陽だまりの丘」(大和ハウス工業提供)

大和ハウス工業は18年、事業で使う電力を再生エネ100%でまかなうことを目指す国際的な企業ネットワーク「RE100」と、省エネなどで事業のエネルギー効率を倍増することを目指す「EP100」の両方に建設業では世界で初めて加盟した。自らが排出するCO₂を15年に比べて20年に30%削減、30年に45%削減、50年に実質ゼロとする目標をたてる。

それだけではない。事業で使う電力をすべて自社グループの水力、太陽光、風力発電所でつくる再生エネでまかなうという自社再生エネ使用率100%も目指す。20年の自社再生エネ使用率はまだ7%だが、30年に30%、40年に100%にする。

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大和ハウスグループが事業で「つかう」電力を、グループで「つくる」再生エネ電力でまかなう長期ビジョン(大和ハウス工業提供)

使用電力すべてを自分たちの再生エネで

環境省の推計では、国内の地球温暖化対策市場は50年には今の1.5倍以上の62兆円超に成長する見通しだ。大和ハウスグループでは、再生エネや温暖化対策の住宅・建物などの「環境貢献型事業」の売上高が19年度には全体の売上高の3割近い約1.2兆円にのぼる。園田さんは「環境という価値を事業として成長させられるよう工夫していきたい」という。

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大和ハウスグループの環境貢献型売上高と国内の地球温暖化対策市場規模(大和ハウス工業提供)

大和ハウス工業
1955年創業の大手住宅メーカー。住宅の建築・販売のほか、流通店舗の建築、物流施設や介護・医療施設、オフィスなどの建築、マンションの建築・販売、再生エネ事業を展開する。2020年3月期の売上高(連結)は4兆3800億円。従業員は1万6904人(20年4月1日現在)。本社は大阪市北区。
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