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SDGsの本質とは ビジネスパーソンのためのSDGs講座【3】

SDGsの本質とは ビジネスパーソンのためのSDGs講座【3】
横田アソシエイツ代表取締役/横田浩一

横田浩一(よこた・こういち)
慶応義塾大大学院特任教授。企業のブランディング、マーケティング、SDGsなどのコンサルタントを務め、地方創生や高校のSDGs教育にも携わる。岩手県釜石市地方創生アドバイザー、セブン銀行SDGsアドバイザー。共著に「SDGsの本質」「ソーシャルインパクト」など多数。

今回は、SDGs(持続可能な開発目標)のポイントについて紹介しよう。

御友重希さん(財務省から野村総合研究所に出向中)、原琴乃さん(外務省)との共著『SDGsの本質』で、本質について三つにまとめた。

一つ目は「異なる社会のつながりから生まれる変革」、つまりマルチステークホルダーの考え方だ。

2001年につくられた国連のMDGs(ミレニアム開発目標)では、内容は主に途上国が直面する社会課題であり、実施の手法も先進国による途上国への開発援助であった。先進国は援助してあげる国、途上国は援助される国という関係の中で、先進国にとって「自分ごと」として捉えにくかった。

SDGsサミットに合わせ、17分野の目標を記した看板が並んだ=19年9月、米ニューヨークの国連本部

このような流れの中で、15年に採択されたSDGsにより、共通の課題解決や未来創発に向けたビジョンを共有することができた。先進国、途上国が対等の立場でつながりながら、SDGsの達成に向けた取り組みを推進することが重要である。

そして、国・地域、業種、専門分野ごとの「サイロ」、いわゆる「たこつぼ」で行動するのでは目標は達成されず、もはや持続可能でいられない。自社だけでの取り組みでは課題解決は難しく、多くのアクター(関係者)と共同してあたることが必要になった。

SDGsのそもそもの本質は、ビジネスのベースにある自由な市場経済では解決できないパブリック(公的)な目標であることだ。したがって、本来ならば国や自治体、国連などの国際機関が責任をもって達成すべきものである。

しかし、企業活動のグローバル化が加速する中、一部企業は巨大化し、金融取引は実体経済を超えている。環境面では、気候変動や生態系の変異など、地球の許容量を超える現象も起きている。社会においては、富の偏在が新たな貧困・格差を生み出している。さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が人や企業の活動の広がりに乗って世界的大流行となり、すでにあった社会課題を顕在化させた。

新型コロナウイルスの感染拡大で仕事を失うなどして、支援団体による食料配給の列に並ぶ人々=20年4月、南アフリカ・ヨハネスブルク

このような中でパブリックだけでは解決できない課題を、すべてのアクターで共通の目標をもって推進していこうというのがSDGsである。よって、企業も他の組織との共創が大切だ。1社だけでできることには限界がある。グローバルな組織や国、他の企業や自治体、NPO/NGOや市民団体との共創が重要で、その共通目標としてSDGsがあるのだ。

バックキャスティングからの計画

SDGsの本質の二つ目が、ありたい未来からの「バックキャスティング」(目標からの逆算)だ。達成目標年である30年のありたい姿を考えて、そこから現在の戦略を練ろうというものだ。

例えば企業にとって、SDGsは「機会」と「リスク」の両面をもたらす。自然環境や社会構造の変化とともに事業環境も変わっていくことで、ビジネスチャンスにつながることもあれば、ビジネスを継続できなくなるリスクもある。

企業においても、30年からバックキャスティングによる視点でコーポレート・ビジョンの見直しや、長期経営計画を作成するなど、経営や事業を見つめ直そうという動きが高まりつつある。長期の視点でサステイナビリティー(持続可能性)を向上させ、企業価値を増大させる経営戦略だ。

北海道の風力発電所

企業はどうしても既存の延長線上で戦略を描くことが多い。そのため、過去の成功体験が新しいチャレンジを阻害するという「イノベーションのジレンマ」が起きる。バックキャスティングによって、ありたい社会や企業を考えることこそ、新たな価値やイノベーションを生み出すチャンスだ。

ここで大切なのは、正確な未来予測ではなく、ありたい未来、社会からのバックキャスティングだということだ。不確実性が高まる中で、未来を予測することは難しい。しかし、ありたい未来に向かって努力することはできるし、重要だ。よき社会のために今何をなすべきか、その日々の行動が未来をつくる。

50年までに日本はカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を実質ゼロにすること)を目指す。ハードルの高い目標だ。例えばエネルギーとして水素を活用するとなると国レベルの戦略と大きな投資が必要になり、官民一体となった行動が必要になる。すでにバックキャスティングは始まっている。

水素ステーションと燃料電池車
「自分ごと」としての行動

SDGsの三つ目の本質は、「自分ごと」として捉え、自ら行動することだ。SDGsを学ぶことは重要だが、行動することはもっと重要になる。SDGsはグローバルなビジョンであるが、それを実現するのは、地域や企業、さらには個人の行動をつないでいくことだ。

コロナ禍になり、多くの人が考える時間をもった。何のために働くのか、働き方はどうすべきか、どこに住むべきか、家族の大切さなどいろいろ考えた方も多かったのではないか。企業も個人も何が大切か、本質とは何かをより考え、実行する時代になった。これはまさに企業や個人の持続可能性を考えたということだ。

日本青年会議所石川ブロック協議会のワークショップで、若手経営者に交じって参加・発表した石川県立金沢西高校の生徒と慶応義塾大学の学生=撮影・横田浩一

また、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が進み、リモートワークが日常になると、仕事のやり方として、個人での判断がより多く求められる。自分で課題を発見し、仕事を進めるセルフドリブン(自ら進んで考え行動する)型の人材が求められる。逆に指示待ちの人は不要になっていく。SDGs/ESG(環境・社会・企業統治)視点も必要になってくるし、それぞれが自分ごとと捉えた行動を求められる組織に変化するだろう。そして、そのような人材をつくるための教育が重要である。

15年9月の国連サミットで採択されたSDGsを中核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」には、「これは、人々の、人々による、人々のためのアジェンダであり、そのことこそが、このアジェンダを成功に導くと信じる」と記されている。将来世代のために何を残せるかは一人ひとりの考え方と行動にかかっている。

(「ビジネスパーソンのためのSDGs講座」は毎月1回で連載します)

Keywords
MDGs(ミレニアム開発目標)

1990年代の主な国際会議やサミットで採択された国際開発目標と2000年9月の国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言を統合し、主に途上国の課題解決を目的として01年にまとめられた。

MDGsでは15年を期限に次の8目標が掲げられた。「極度の貧困と飢餓の撲滅」「初等教育の完全普及の達成」「ジェンダー平等推進と女性の地位向上」「乳幼児死亡率の削減」「妊産婦の健康の改善」「HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延(まんえん)の防止」「環境の持続可能性確保」「開発のためのグローバルなパートナーシップの推進」

MDGsの課題や取り組みの主体などを広げ、世界共通の目標として15年にSDGs(30年までに17目標)が国連で採択された。
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