SDGs ACTION!
再生可能エネルギーで切り開く~CO₂排出ゼロを目指して

積水化学、「あさかリードタウン」につながるソーラー住宅の歴史

積水化学、「あさかリードタウン」につながるソーラー住宅の歴史
撮影・朝日教之
積水化学工業/上脇太・取締役専務執行役員

東武東上線沿線にある埼玉県朝霞市で、積水化学工業が「環境にやさしく」「安心・安全」なまちづくりを進めている。1990年代から取り組んできたソーラー住宅で二酸化炭素(CO₂)の排出削減に貢献するとともに、豪雨などの災害に強いまちを目指す。背景にはどのような考えがあるのか。上脇太・取締役専務執行役員に聞いた。(聞き手 編集部・大海英史)

撮影・朝日教之

東京近郊にある埼玉県朝霞市で2018年から、複合大規模まちづくりに初めて乗り出しました。「あさかリードタウン」です。

当社はこれまで、戸建て住宅の「セキスイハイム」を販売してきました。さらに、住インフラ材料やプラスチックを活用した高機能素材などを強みとしています。

こうした積水化学グループの製品を提供することで、環境にやさしく、安心・安全に暮らせるまちをつくり、付加価値の高い住環境を提供できると考えました。

あさかリードタウンの敷地はもともと当社の東京工場でした。その跡地の総面積7万3400㎡に、戸建て住宅(130戸)、分譲マンション(212戸)、複合商業施設、三つの公園、二つの保育施設のほか、住宅型有料老人ホームがそろいます。

戸建てにはすでに入居されており、21年にはマンションなどもできて、新しいまちが完成します。

気候変動や災害に対応するサステイナブルなまち
「あさかリードタウン」の完成予想図(積水化学工業提供)

積水化学グループがつくるまちの特徴の一つは“再生可能エネルギーの活用”です。すべての戸建て住宅に太陽光発電システムと蓄電池を備えました。

もう一つが災害時の被害を軽減する“レジリエントなインフラ基盤”です。豪雨での冠水や床上浸水を防ぐため、まちの土壌には、空隙(くうげき)に雨水をためることができるプラスチック製の雨水貯留システムと、強化プラスチックでできた大口径の雨水貯留管を埋設しています。近年、地球温暖化の影響とされる大規模な豪雨災害が続いており、こうした気候変動への適応に役立つ技術を取り入れています。

雨水貯留管を埋設する工事(積水化学工業提供)

ほかにも、電気やガス、水道などのライフラインの分断を抑え、災害時の被害を最小限にとどめるため、電線共同溝の埋設による無電柱化、地震に強い樹脂製の上下水道管やガス管の設置をしています。住居内には、4人家族で3日間分の非常用飲料水をためることができる飲料水貯留システムも取り入れました。

こうしたまちづくりは、住宅、環境・ライフライン、高機能プラスチックスの三つの主力事業を持つ化学メーカーならではの特徴です。

リードタウンのプロジェクトは、朝霞市を皮切りに首都圏で七つ、札幌市で一つの計8プロジェクトを計画しています。さらに今後は大阪や名古屋にも広げていきます。

ソーラー住宅販売、累計21万戸

当社は1971年に鉄骨ユニット住宅を売り出し、住宅事業を成長させてきました。とくに再生エネの活用にはいち早く取り組み、97年に太陽光発電システムを搭載したソーラー住宅を発売しました。

太陽光発電のコストが高く採算がとれない時代でしたが、当時のトップが「いずれCO₂排出削減で太陽光が主力になる」と判断したのです。その後も2003年に光熱費ゼロ住宅を発売するなど、ソーラー住宅販売の先頭を走り、19年度までに太陽光発電システムを搭載した住宅戸数の累計は21万戸になります。

積水化学工業のソーラー住宅販売の推移と省エネ住宅の歴史(積水化学工業提供)
ソーラー住宅の余剰電力を買い取り、自社の使用電力に

ソーラー住宅では太陽光発電による余剰電力を国の固定価格買い取り制度(FIT)で電力会社が買っています。ただ、基本的に10年という期間が定められており、買い取り制度スタート当初から利用している住宅では19年11月以降、買い取りが順次終了しています。

太陽光発電システムを搭載した住宅「スマートパワーステーションFR」(積水化学工業提供)

そこで19年、FITが終了したお客様の余剰電力を当社が買い取るサービス「スマートハイムでんき」を始めました。購入した電力は、当社の事業所が使う電力に活用するという仕組みです。

買い取りにはすでに1万5000件のお客様の登録があります。さらに新築の約8割がソーラー住宅になっており、新築のお客様にも「FITが終わる10年後には当社が買い取らせていただきます」と説明しています。

この買い取りで、お客様は余剰電力を売る経済的なメリットを継続することができます。さらに、当社グループやソーラーを持っていないお客様に再生エネ電力の使用を促し、増やすことができるなど、CO₂の排出削減が進むメリットがあります。早い段階からソーラー住宅に取り組んできた蓄積が、売り手、買い手、世間の「三方よし」につながっています。

撮影・朝日教之

当社は20年4月、事業活動で排出されるCO₂などの温室効果ガスを「50年にゼロ」にするという目標を立てました。この長期目標からバックキャスト(目標となる未来のために、逆算して何をやるべきかを考えること)して、30年には購入電力を100%再生エネに切り替えることを目指しています。

20年8月には、使用エネルギーを100%再生エネに転換することを目指す国際的な企業ネットワーク「RE100」にも加盟しました。このような気候変動に対する取り組みが評価され、国際NGO「CDP」(本部・ロンドン)による「気候変動」に対する評価では、20年に3年連続で最高のAリストに入りました。

“未来につづく安心” 社会課題解決の「遺伝子」

化学メーカーは工場でのエネルギー使用が多く、CO₂排出を減らすのは容易ではありません。それでも、温暖化対策にしっかり向き合わなければならないと考えています。

私たちには社会課題を解決し、“未来につづく安心”を届けながら歩んできた歴史があります。事業を進めるうえで“未来につづく安心”を届ける「遺伝子」が組み込まれているのです。

1960年代にごみ収集の歴史を変えたごみ容器「ポリペール」(積水化学工業提供)

1964年の東京五輪を前に東京のごみをきれいにしようと活用されたのが、ポリエチレン製のフタ付きごみ容器「ポリペール」でした。当時、「軽くて、丈夫で、長持ち」というプラスチックの特性がごみを収集しやすくし、街からごみをなくしました。

街の雨水や汚水を排出するプラスチック製の下水道管もつくっています。とくに先進国では、老朽化した下水道管の更新が課題になっています。そこで、古い下水道管の内側に帯状のプラスチックをらせん状に巻きながら新たな管をつくる「SPR工法」を開発し、道路を掘らず、下水を流しながら改修できるようにしました。

下水道管の改修に活用される「SPR工法」(積水化学工業提供)

自動車のフロントガラスは80年代までに、合わせガラスの間にプラスチックの中間膜を入れることで、事故が起きた場合でも、割れても飛び散らず、ドライバーや歩行者のケガや被害を抑えるなど、安心が担保できるようになりました。

2000年代にはこれに遮熱や遮音の機能が加わり、快適性が増しました。車内温度の上昇を抑えることでカーエアコンの負荷を下げ、燃費を向上させるなど、省エネにつながる技術です。

10年代には速度などの情報を映し出せるようになりました。ドライバーの視線移動をなくすことでさらに安全性を向上させることができます。当社はその中間膜の世界シェアトップです。

ドイツの国鉄で使われている合成木材の枕木(積水化学工業提供)

欧州では今、森林伐採につながる木材使用に厳しい目が注がれ、木材に塗る防腐剤は発がん性の危険から規制が強まっています。そこでウレタンとガラス繊維でつくった当社の合成木材が鉄道の枕木として使われ、注目されています。耐用年数が極めて長く、軽くて強度があるため、橋や高架部への負担を軽減し、線路の分岐などに合わせて加工できるという利点もあります。

プラごみをエタノールにして、リサイクル

一方、近年、廃棄プラスチックが海洋汚染を引き起こすとして大きな問題になっています。私たちはこの問題の解決に取り組まなければいけません。

そこで、プラスチックなどの可燃性ごみを処理する際に生じるガスを、微生物の力を活用してエタノールにする技術を開発しました。岩手県久慈市に1/10スケールのプラントをつくり、21年度末から実証事業を始め、25年度には本格的に事業化することを目指しています。ここでつくったエタノールを原料にして住友化学が再びプラスチックをつくることで合意し、持続可能なリサイクルの仕組みづくりを目指しています。

プラスチックなどの可燃性ごみ処理でエタノールをつくり、再びプラスチックをつくる循環の将来像(積水化学工業提供)

プラスチックは様々な社会課題の解決に役立つものです。ただ、きちんとした廃棄、分別回収をして資源としても循環させていく必要があります。そのためにも、廃棄プラスチック問題の解決は不可欠であり、今後も力を入れていきます。

撮影・朝日教之

積水化学工業
日窒コンツェルンのプラスチック部門を母体として、1947年にプラスチックメーカーとして設立。50年に「セロハンテープ」を発売。塩化ビニル管やプラスチック製雨どいなどを手がけ、その後の高機能プラスチックス、環境・ライフラインへと事業を広げた。60年に住宅事業に参入して積水ハウス産業を設立(後に独立し、現在の積水ハウスに)、71年に「セキスイハイム」を発売して自ら住宅事業を拡大した。20年3月期の売上高(連結)は1兆1292億円、従業員数(連結)は2万7003人。大阪本社は大阪市北区、東京本社は東京都港区。加藤敬太社長。
この記事をシェア