SDGs ACTION!
再生可能エネルギーで切り開く~CO₂排出ゼロを目指して

大正大が巣鴨の商店街で再生エネ100%の店 各地で学ぶ「地域創生」

大正大が巣鴨の商店街で再生エネ100%の店 各地で学ぶ「地域創生」
巣鴨地蔵通り商店街(大正大提供)
大正大学

大正大学(東京都豊島区)が地元の東京・巣鴨の商店街で、新潟県の太陽光発電所に由来する再生可能エネルギーを使った店舗を運営している。大学のある地域を「オールキャンパス」ととらえ、店舗運営を通して学生たちに地域の課題や環境問題を考えてもらう試みだ。巣鴨だけでなく、全国の自治体とも連携し、地域実習に取り組んできた。地域での実践を多く取り入れることで、「地域創生」のあり方をより深く学ぶ教育に力を入れている。(編集部・大海英史)

東京・西巣鴨にある大正大学(大正大提供)
3店舗で、東北、京都、北宮崎の特産品を販売

JR山手線・都営地下鉄三田線の巣鴨駅から三田線の西巣鴨駅まで1.4㎞余り、旧中山道沿いに三つの商店街が軒を連ねる。「巣鴨駅前」「巣鴨地蔵通り」「庚申塚商栄会」の3商店街だ。巣鴨地蔵通りにはとげぬき地蔵で有名な高岩寺があり、多くのお年寄りが訪れる巣鴨は「おばあちゃんの原宿」としても知られる。

ここに、西巣鴨駅が最寄りの大正大と3商店街でつくる一般社団法人「コンソーシアムすがも花街道」が運営する「座・ガモール」3店舗がある。1号店は「東北」、2号店は「京都館 すがものはなれ(京都市公認)」、3号店は「神の国から(北宮崎)」と、各地の特産品を販売するのが特徴だ。

大正大が地元商店街と運営する「座・ガモール」の店舗(大正大提供)

大正大は、2026年に迎える創立100周年記念事業として、16~26年の計画で地元商店街との連携を深める「大正大すがもオールキャンパス構想」を打ち出した。その一環で巣鴨の三つの商店街と連携してコンソーシアムすがも花街道をつくり、17年5月に座・ガモール1、2号店、18年2月に3号店をオープンした。

座・ガモール1号店「東北」の外観(大正大提供)

1号店の「東北」は、11年3月11日の東日本大震災の翌月、大正大の学生や教職員がボランティアとして宮城県南三陸町で活動した縁からだ。店には南三陸町を中心に東北の物産品が並ぶ。2号店は、大正大が設立4宗派(天台宗、真言宗豊山派、真言宗智山派、浄土宗)と時宗で運営する仏教系大学のため、仏教にゆかりの深い京都、3号店は宮崎県延岡市などとの交流から北宮崎の物産品などを扱うことにした。

コンソーシアムすがも花街道の会長を務める柏木正博・大正大専務理事は「巣鴨のまちをキャンパスとしてとらえ、学生に地域との連携や、店舗運営を通じてアントレプレナーシップ(起業家精神)を感じてほしい」と話す。

座・ガモール2号店「京都館 すがものはなれ」の店内(大正大提供)
座・ガモール3号店「神の国から」の店内(大正大提供)
みんな電力の「顔の見える電力」で再生エネ100%

この3店舗は19年11月、使用電力をすべて再生可能エネルギーへ切り替えた。新電力会社「みんな電力」(本社・東京都世田谷区)を通じて、新潟県五泉市の太陽光発電所の電力を購入している。再生エネ主体のみんな電力が進める「顔の見える電力」のサービスだ。

みんな電力は全国にある200ほどの再生エネ発電所と契約しており、電力購入者にどこの発電所の電力を買うかを選んでもらう。さらに、みんな電力は発電所、送配電事業者(大手電力)と特定卸契約を結んで発電所の電力をすべて買い取り、購入者に供給する。

発電所は固定価格買い取り制度(FIT)で電力をすべて売ることができるのに加え、購入者の電力使用量に応じてみんな電力から応援金(約定プレミアム)が支払われる。購入者がどこからどんな電力を買っているかを知ることができるとともに、再生エネ発電所やその地域への支援にもつながるという仕組みだ。

新潟県五泉市の太陽光発電所の電力を座・ガモールが購入する仕組み(みんな電力提供)

「大学が電力を通じて地域とつながっているということを学生に実感してもらいたい」。環境学を教える古田尚也・大正大地域構想研究所教授はそう話す。

古田さんは地球温暖化について教える際、学生に実際の再生エネの仕組みを知ってもらおうと考え、以前働いていたシンクタンクの元同僚からみんな電力の仕組みを紹介してもらった。

新潟県五泉市の太陽光発電所を選んだのは、大正大が交流などで連携している自治体の一つだからだ。温暖化対策に加え、「顔の見える電力」を通じて地域の再生エネ発電がどのように利用され、地域の収入につながっているかを学んでもらうねらいもある。

地域創生学部つくり、全国95自治体と連携

大正大は14年に地域構想研究所をつくり、教育・研究の柱に地域の活性化・創生を据えた。16年には地域創生学部を創設し、「若者が東京で学び、地域に回帰する」という特色をはっきり打ち出した。

地域創生学部の大きな特徴が「地域実習」だ。20年度は新型コロナウイルスの感染拡大で中止になったが、19年度までは1年と3年が約40日間の地域実習に取り組んだ。

1学年約100人が数人の班に分かれて、宮城県南三陸町、山形県長井市・最上町、新潟県柏崎市・佐渡市・南魚沼市、長野県箕輪町・小布施町、静岡県藤枝市、岐阜県中津川市、兵庫県淡路市、徳島県阿南市、島根県益田市、宮崎県延岡市、鹿児島県奄美市の15自治体を訪れ、宿泊施設や寺などを借りて住み込んだ。

大正大が連携する全国各地の自治体(大正大提供)

これらの自治体は大正大が地域創生の教育・研究を進めるための連携自治体だ。15自治体を含めて、情報交換や交流などをする連携自治体は全国で95自治体になり、座・ガモールが電力を購入する新潟県五泉市や、1号店、3号店で物産を販売する宮城県南三陸町、宮崎県延岡市などもある=図。

徳島県阿南市での地域実習で地元の人の話を聞く学生たち(大正大提供)

19年度までの地域実習では、1年生は住民や行政の職員らと交流しながら、その地域がどのような課題を抱え、どう施策を進めているかを学んだ。たとえば、佐渡市では特別天然記念物のトキの繁殖を通して生物多様性を考え、山形県最上町では間伐材を使った木質バイオマスエネルギーを学んだ。

2年生は東京で学びつつ、地域実習先の物産品を巣鴨の座・ガモールで販売し、観光をPRした。3年生は1年時と同じ地域を再び訪れ、現地で課題解決のための提言を考え、4年生は研究成果を卒論にまとめた。この地域実習がきっかけで、地域の自治体や団体などに就職した卒業生もいる。

新潟県佐渡市での地域実習で稲刈りに参加する学生たち(大正大提供)
進化するオールキャンパス構想

現在、巣鴨の3商店街は新型コロナウイルスの感染拡大で買い物客が以前の半分以下になるほど減り、シャッターをおろしたままの店舗もあるという。座・ガモールも学生が企画や販売には参加できない。

しかし、厳しい情勢のなかでも大正大はオールキャンパス構想をさらに進め、21年春に向けて、商店街の空き店舗を活用して2、3施設をオープンする準備を進めている。人生100年時代の生涯学習、リカレント教育(社会に出た後の学び直し)、学生の授業に活用する施設などを検討しているという。

座・ガモールでは連携自治体の物産品などを企画・販売する(大正大提供)

「学生が商店街で学べば、そこでランチを食べて買い物をして地域がにぎやかになる。学生が巣鴨を活性化し、商店街が学生を育てる。地域全体がキャンパスになればいい」。座・ガモールの運営や地域実習に携わる北條規・大正大地域構想研究所教授は話す。

さらに、大手通信会社などと連携し、ビッグデータなどを活用して買い物客の流れや動向を分析する「すがもスマート商店街構想」も検討している。ITを使って、どのような層がどのような商品に関心を持っているかなどを分析し、企画や販売に役立てていくという。

オンライン販売で地域を支援

コロナ禍に見舞われた20年、地域創生学部の2年生は10月23日~11月24日の約1カ月間、クラウドファンディングサイト「READYFOR」を活用し、19年に地域実習で訪れた15地域の物産品を販売する「オンラインマルシェ」を開いた。コロナ禍で物産品販売などが厳しい地域を支援しようという試みだ。

大正大の学生たちが取り組んだ「オンラインマルシェ」のポスター(大正大提供)

宮城県南三陸町のカキ、山形県最上町の芋煮、新潟県佐渡市の海の幸、宮崎県延岡市のアユなど、15地域の特産品をそれぞれ5000円のセットにして、各50セット販売した。各地域を訪れた班ごとに紹介したい特産品を企画し、事業者への連絡や広報活動まで学生主体で進めた。

オンラインマルシェで紹介した宮城県南三陸町のカキ(大正大提供)
オンラインマルシェで紹介した山形県最上町の芋煮セット(大正大提供)

その結果、約1カ月間ですべてのセットを完売し、総額約375万円を売り上げた。北條さんは「サイトがオープンして注文が入り始めると、地域の人たちと学生でプロモーションを活発にしていくなど活動が盛り上がっていった。学生と地域の連携がうまく実践できたのではないか」と話す。

オンラインマルシェの準備をする大正大の学生たち(大正大提供)
大正大学
1926(大正15)年に旧制私立大学として設立された。日本唯一の複数宗派による仏教連合大学として開学し、設立4宗派(天台宗、真言宗豊山派、真言宗智山派、浄土宗)と時宗の5宗派で運営する。大学の学部は、社会共生、地域創生、表現、心理社会、文、仏教の6学部10学科。学生数は学部が4774人、修士課程が110人、博士後期課程が27人(いずれも20年5月現在)。専任教員は156人。東京都豊島区西巣鴨。高橋秀裕学長。
この記事をシェア
関連記事