SDGs ACTION!
まちを変える、まちが変わる

コロナ禍を乗り越え、「日本一暮らしやすい埼玉県」に

コロナ禍を乗り越え、「日本一暮らしやすい埼玉県」に
撮影・朝日教之
埼玉県知事/大野元裕

新型コロナウイルスの感染拡大は医療や福祉、暮らし、経済などに大きな影響をもたらしている。一方で、テレワークによる働き方の変化、情報技術を使ったデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速など、新しい動きも出ている。こうしたなか、埼玉県は2020年4~11月に転入者が転出者を上回る「転入超過」の人数が全国で最も多かった。コロナ禍に対応しつつ、将来に向けてどのようなまちづくりを進めていくのか。大野元裕知事に聞いた。(聞き手・大海英史)

撮影・朝日教之
安心・安全な、「レジリエント」なまちに

――新型コロナウイルスは、埼玉県でも多くの感染者が出ています。

「まずは新型コロナウイルス感染症対策を最重要課題として、強い危機感と緊張感を持って対応しなければなりません。一日も早い収束を目指し、国や各自治体と強く連携して、対策に取り組んでいきます」

――コロナ禍を経験し、将来に向けてどのようなまちづくりが必要ですか。

「三つの大きな視点を持って取り組みたいと考えています。一つ目は急速な少子高齢化や人口減少社会に対応できるまちづくり、二つ目は年齢や性別、国籍、障害などの有無にかかわらず、誰もが生き生きと活躍できる社会、三つ目は安心・安全を一層高めていくことです」

「具体的なまちづくりでは、公約として『埼玉版スーパー・シティプロジェクト』を進めています。そこで目指すのは、まず『レジリエント』(強靱さや回復力がある)なまちです。19年10月の台風19号では埼玉県でも大きな被害が出ました。地震、台風などの災害に対して、安心・安全をより高める必要があります」

「埼玉版スーパー・シティプロジェクト」のイメージ(埼玉県提供)

「次に『コンパクト』(小さくまとまった)なまちです。生活圏を集約することで医療や福祉などを切れ目なくつなげ、子育て環境を充実させなければなりません。空き家をなくす、買い物難民を生まないことにもつなげます」

「そして『スマート』(情報化されていること)の視点です。ICT(情報通信技術)を活用し、高齢者の見守りなどを進めます。たとえば、県営住宅では高齢者宅の電球が長い時間つかない場合に、無事かどうかをチェックする仕組みなどに取り組んでいます」

撮影・朝日教之
コロナ禍で、全国最多の「転入超過」

――テレワークが進むなど、働き方や暮らし方も変わりつつあります。

「テレワーク用通信機器の購入やクラウドサービスの利用などテレワーク環境を整備する企業への補助金、出勤者数の7割削減を目標に取り組む企業を紹介する『テレワーク実践企業』登録制度などに取り組んでいます」

「コロナ禍の20年4~11月、埼玉県は転入超過数が1万1160人になり、全国最多でした。東京・埼玉間の転出入でも埼玉県への転入が上回っています。テレワークが広がれば、こうした流れがますます進む可能性があり、子育てしやすい環境、高齢者を見守るコミュニティー、安全・安心なまちをつくることがさらに重要になります。その基本的な考え方にSDGsを位置づけています」

豊かな水と緑を将来へ
豊かな自然を楽しめる入間川(埼玉県飯能市、埼玉県提供)

――まちづくりにSDGsをどのように位置づけているのですか。

「私は『日本一暮らしやすい埼玉県』を政策目標に掲げています。その基本的な考え方は『誰一人取り残さない』というSDGsの理念と共通します。そこで、県政を進めるにあたってSDGsを重要な視点と位置づけ、20年度から『埼玉版SDGs』の取り組みを進めています」

「県庁全体で横串を刺して進めるため、知事を本部長とする埼玉県SDGs庁内推進本部をつくりました。そのうえで埼玉県の特性を踏まえた二つの重点テーマを設定し、部局横断のワーキングチームで施策を検討しました」

――重点テーマとは?

「一つは『埼玉の豊かな水と緑を守り育む』です。埼玉県は荒川や利根川などが流れ、県土に占める河川面積の割合が全国2位の3.9%になります。都心の近くにありながら森林面積も県土の約32%を占め、緑にも恵まれています。豊かな水と緑はまさに将来に残すべきものです」

撮影・朝日教之

「21年度予算案では、民間のアイデアやノウハウを使って水辺空間の利活用を進める『Next川の再生の推進』、企業の商品開発やビジネス拡大などが川の保全につながるようにマッチングする『SAITAMAリバーサポーターズプロジェクト』、谷戸(やと)環境の再生や絶滅危惧種の繁殖を通じて生態系の保全を学ぶ『動物園におけるSDGsの推進』などに取り組みます」

将来のため、子どもを守り育てる

――もう一つの重点テーマとは?

「『未来を創る人材への投資』です。埼玉県は県民の平均年齢が全国で6番目に若く、人口も増えています。一方で今後は65歳以上の高齢者人口が全国トップクラスのスピードで増加する見込みです。このため、ほかの都道府県より30年以降の社会を支える子どもや若者の育成が課題です」

「21年度予算案では、子ども食堂で体験活動や学習支援をする講師などを派遣する『子ども食堂による子供のEQ(心の知能指数)向上』に取り組みます。県内には子ども食堂が250近くあり、食事の提供だけでなく、体験活動や学習支援など幅広い活動ができるよう支援します」

子ども食堂による子供のEQ(心の知能指数)向上のイメージ(埼玉県提供)

「将来の職業選択の幅を広げてもらうため、県内企業の魅力を知ってもらう動画を制作して授業などで活用したり、国際交流体験や海外姉妹州の大学と連携してオンライン教室を開いたりする事業も進めます。子どもの居場所を確保し、貧困の連鎖を断ち切り、希望する仕事についたり生活が送れたりする。そうした将来につながる基盤を整えたいと考えています」

撮影・朝日教之
官民連携でSDGsを
埼玉県SDGs官民連携プラットフォームのイメージ(埼玉県提供)

――県内でのSDGsの取り組みは進んでいますか。

「『埼玉県SDGs官民連携プラットフォーム』をつくり、企業や経済団体や大学、金融機関、自治体などに入ってもらい、取り組みを全県的に進めていこうとしています。21年1月末で375者が会員となっています。また、SDGsを推進するプレーヤーを応援するため、一定要件を満たした企業・団体などを登録する『埼玉県SDGsパートナー』登録制度も始めています。第1期の登録が目標の100者を上回って136者になり、第2期の募集を始めています」

「埼玉県SDGsパートナー」登録証(見本、埼玉県提供)

「県民にもSDGsを浸透させるため、21年度からスマートフォンのアプリで基礎知識を提供したり、埼玉版SDGsの情報を発信したりすることも始めます。SDGsの取り組みに応じてポイントをつけ、そのポイントで賞品を出すようなことも検討しており、みんなが参加しやすい環境を整えていきます」

――SDGsでは地球温暖化対策も重要な目標です。

「気候変動対策は待ったなし、という危機感を持っています。災害に強く、コンパクトでスマートなまちづくりが温暖化対策につながると考えています。このなかで再生可能エネルギーの活用、コージェネレーションシステム(発電とともに、排熱を冷暖房や給湯などに有効利用する)、ZEH(年間の消費エネルギー量が正味でおおむねゼロ以下の住宅)などを一歩一歩進めていきます。スローガンだけではなく、経済と環境の両立を図りながら進めていきたいと思います」

撮影・朝日教之
大野元裕(おおの・もとひろ)
1963年、埼玉県川口市生まれ。慶応義塾大学法学部卒、国際大学国際関係学研究科修士課程修了(中東地域研究専攻)。外務省で中東各国の日本大使館専門調査員や書記官、財団法人中東調査会上席研究員などを経て、2010年に参院議員に初当選。19年8月から埼玉県知事(1期目)。
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