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古都・鎌倉、地域通貨と「推進隊」でまちづくり

古都・鎌倉、地域通貨と「推進隊」でまちづくり
地域通貨「クルッポ」への参加を呼びかけるポスター(鎌倉市提供)
神奈川県鎌倉市

神奈川県鎌倉市が「持続可能な都市経営」を前面に掲げて、「未来都市かまくら」づくりを本格化させている。鎌倉大仏に鶴岡八幡宮、そして由比ガ浜と、毎年2000万人が訪れる一大観光地だが、まず取り組むのは地域通貨「クルッポ」と小中学生による「鎌倉市SDGs推進隊」という地域密着の活動だ。古都はどんなまちづくりを進めるのか。(編集部・金本裕司)

まちに貢献し、「クルッポ」獲得

今年1月19日、コミュニティ通貨サービス「SDGsつながりポイント」事業がスタートした。通貨の名称は鳩の鳴き声にちなんで「クルッポ」とした。

SDGsに取り組む神奈川県が推進する仕組みで、県内では小田原市に次いでの導入。ちなみに小田原市の通貨の名称は「おだちん」だ。

両市とも、鎌倉市に本社を置く「カヤック」が開発した「まちのコイン」というシステムを使う。

(鎌倉市資料から)

仕組みはこうだ。

まちのごみ拾いに参加したり、皿洗いの手伝いをしたり、マイカップを持ってくるなど環境によいことをしたりして地域に貢献すると、お礼として「クルッポ」がもらえる。そのクルッポは、手伝いをした店だけではなく、ポイント事業に参加する飲食店、ヨガ教室などの特別サービスを受けたり、まちで行われる体験授業などに参加したりするのに使うことができる。

ポイント事業に参加する人に、それぞれの立場で身近なSDGsに取り組んでもらうきっかけをつくり、活動を通じて人と店、地域の「つながり」を生みだし、地域課題の解決につなげるのが目的だ。

3月12日朝現在で、参加している人は1816人、クルッポが使える店は71店だ。

松尾崇市長は「持続可能なまちづくりには、鎌倉のまちを『自分ごと』に思って一緒に行動してくれる人を増やすことが必要。ポイント事業を通じて、暮らしを豊かにし、鎌倉のまちの魅力を高める取り組みを展開していきたい」と話す。

「鎌倉市SDGs推進隊」キックオフ

昨年12月6日、鎌倉市役所の講堂に市内の小中学生25人が集まった。

市が結成した「鎌倉市SDGs推進隊」のキックオフイベントのためだ。

松尾市長が、推進隊の名刺とSDGsバッジを配り、「推進隊に応募いただいて、大変うれしいです。自分から行動しようと思ってくれている皆さんの気持ちをしっかり受け止めて一緒に考え、行動していきたい」とあいさつした。

「鎌倉市SDGs推進隊」のキックオフイベント(鎌倉市提供)

「鎌倉市SDGs推進隊」は2019年5月23日、市長と市内小学生の交流会で、「学校だけではなく、もっとSDGsの達成に向けて活動できる場が欲しい」という声があがったのを受けたもの。市内在住または在学の小中学生を対象に募集し、現在メンバーは58人。隊員になれば「個人またはグループでSDGs達成に向けて取り組む」という「任務」を負う。将来の鎌倉を担う世代に、SDGsとまちづくりに目を向けてもらおうという試みだ。

12月のキックオフイベントでは、「かまくらジュニアSDGs宣言をつくろう!」というワークショップも行われた。「あなたが市長だったら、鎌倉をどんなまちにしたいですか?」「そのために、あなたは今日から何をしますか?」といったテーマを考え、それぞれが自分の思いを「宣言」した。

(鎌倉市資料から)

推進隊を結成した狙いについて、松尾市長は「推進隊の子どもたちには、年齢や所属学校を超えて、みんなでSDGsを学び、行動し、社会に気づきや問いを発信してもらいたい」と話す。

キックオフイベントであいさつする松尾市長(鎌倉市提供)

今後は、個人での活動とともに、新型コロナの様子を見ながら、休日や夏休みなどの長期休暇にはワークショップなどメンバーが集まって行う活動も実施していきたい考えだ。

旧村上邸の正面(鎌倉市提供)
モデルプロジェクトは古民家の活用

鎌倉市は2018年、「持続可能な都市経営『SDGs未来都市かまくら』の創造」という目標を掲げて内閣府の「SDGs未来都市」に応募し、「SDGs未来都市」(29都市)と「自治体SDGsモデル事業」(29都市のうち優れた10都市)の両方に選定された。

同市が掲げる将来の都市像は「古都としての風格を保ちながら、生きる喜びと新しい魅力を創造するまち」だ。多くの歴史遺産を誇る自治体として、その歴史を守りながら、経済、社会、環境のバランスがとれたまちを目指そうという試みだ。

SDGsの考え方を取り込んで、2020年4月には市の最上位計画である「第3次鎌倉市総合計画・第4期基本計画」を策定している。

鎌倉市が、具体的な施策の中でモデルプロジェクトと位置づけているのが、古民家「旧村上邸」の活用だ。

旧村上邸は、鎌倉・西御門にあり、1939年以前に建てられたとされる和風木造住宅だ。41年に村上家の所有となった後、幾度か増改築を行いながら使われ続けてきた。母屋に連なる能舞台と別棟の茶室を備え、能や謡曲の会、茶会などが行われてきたという。

2014年に所有者の村上梅子氏が死去し、2年後に鎌倉市に寄贈された。敷地面積は1678㎡、延べ床面積は419㎡。

この旧村上邸を、市民の様々なイベントや勉強会、企業研修の場としてリノベーションするプロジェクトが進められ、19年5月「旧村上邸-鎌倉みらいラボ-」としてオープンした。「広くSDGsを発信する拠点」として、さらに充実させていく方針だ。

能舞台
会議室(いずれも鎌倉市提供)
古都で「新しいライフ・ワークスタイル」を

鎌倉市は「SDGs未来都市かまくら」の目標の一つとして、「東京への通勤といった画一的なスタイルから脱却し、職住近接のまちをつくる」という目標も掲げている。東京などへ通勤するには結構な時間がかかり、それが、若年層が市外に流出する理由になっているという認識が底流にある。そのためにも、「働くまち」としての魅力を高めることが必要だという考え方だ。

地域での働きやすさを高める策として、地元で働く人たちが利用できる「まちの社員食堂」が鎌倉駅近くでオープンしている。カヤックが運営し、21の地元企業・団体が参画。鎌倉の55店が週替わりでメニューを提供している。このほか、「みんなでつくる保育園」を掲げる「まちの保育園」もある。

松尾市長は「雇用の創出、テレワークの推進に、コロナ禍前から積極的に取り組んできた。鎌倉の豊かな自然の中に住み、働くことで、地域にコミットし、SDGsの推進に一緒に取り組んでほしい」と、新しいライフ・ワークスタイルづくりに意欲を見せる。

鶴岡八幡宮(撮影・朝日新聞)
大観光地のジレンマ

鎌倉市は東京の近郊にあり、鎌倉大仏に鶴岡八幡宮、由比ガ浜を抱える観光地。その観光資源は貴重な財産で、地元経済にも直結している。

しかし、人が多く集まれば当然、交通渋滞や公共交通機関の混雑が起きる。また、生活マナーやごみ問題なども発生する。観光客と住民、地域が共存するためには多くの課題がある。

松尾市長は「まちづくりへの参加やふるさと寄付、情報発信など、鎌倉のまちづくりは多くの鎌倉ファンのみなさんに支えられている」としたうえで、課題解決に向けて、ロードプライシング(道路の使用に対する課金・課税)の検討、マナー条例の制定などに取り組む考えだ。

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