SDGs ACTION!

「SDGs ACTION! LIVE」第2弾 ダイバーシティーで強く、豊かに/「持続可能」な企業を目指して

「SDGs ACTION! LIVE」第2弾 ダイバーシティーで強く、豊かに/「持続可能」な企業を目指して
登壇者:(左から)洪さん、高柳さん、酒寄さん、野田さん

新型コロナウイルスの感染が拡大したこの1年、社会も私たちの意識も劇的に変化しました。企業もその影響を受けずにはいられませんが、初期の迅速な対応で社内外の動揺を抑え、働き方や業務プロセスを見直すというプラスの変化につなげた企業もあります。ウェブメディア「朝日新聞SDGs ACTION!」が4月19日に開催したウェビナー「SDGs ACTION! LIVE ダイバーシティーが会社を強く、豊かにする」では、それを可能にした先進企業の社内カルチャーと、そこから学ぶべきヒントについて、活発な議論が交わされました。

(※アーカイブはこちらから)

登壇者

●洪 伊丁(ホン・イジョン)

フィリップ モリス ジャパン Manager, Talent Acquisition

●高柳 麻里(たかやなぎ・まり)

フィリップ モリス ジャパン Manager, People Engagement and I&D

●酒寄 久美子(さかより・くみこ)

セールスフォース・ドットコム  イクオリティオフィスシニアマネージャー

●野田 稔(のだ・みのる)

明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科教授

コーディネーター

●高橋 万見子(たかはし・まみこ)

「朝日新聞SDGs ACTION!」 編集長

「社員が大切」、トップがメッセージ

最初の話題は、コロナ禍の広がりと緊急事態宣言に企業はどう対応したか。フィリップ モリスとセールスフォース両社に共通していたのは、グローバル本社のトップがすぐに、従業員の雇用と、収入など生活の安定を保証するという強いメッセージを発信したことだ。野田教授は「むしろ反対のことをした企業も多かったのに素晴らしい」と感嘆の声を上げた。

また、同時に従業員の生の声を聞き取るきめ細かな調査(サーベイ)を実施したことも、両社の共通点。いわばトップダウンとボトムアップの両方向から対策が進められたということだ。

新入社員への対応は試行錯誤

セールスフォースでは、以前から在宅ワークを推奨していたこともあり、酒寄さんによると、多くの社員がスムーズにオンラインに移行できたという。ただ、現在も試行錯誤しているのが新入社員へのフォローアップで、オンラインでも極力コミュニケーションを図る努力をしている。同時に、管理職の間でも、「自分のチームではこうやって成果を上げている」「ではうちのチームも取り入れてみよう」といった情報交換も密に行っているという。

フィリップ モリスの高柳さんは、新人に限らず「孤独を感じている」という声が少なくなかったことから、研修やレクリエーションを通じて他部署の人とも気軽に接することのできる機会を多く用意し、社員から好評を得たという。

酒寄さん
高柳さん
(フィリップ モリス資料)
(セールスフォース資料)

一方で、両社ともに経営トップが、率先して社員との対話に積極的に取り組んだため、以前よりも社内の距離が近くなった面もあるという。

野田教授は「そこはリモートワークが一般的になった状況の良い面かもしれません」と評価した。

野田教授
洪さん

多様な声を生かせる企業を目指して

フィリップ モリスの洪さんは「当社ではコロナ以前から誰にとっても働きやすいインクルーシブ(包摂的)な職場づくりと多様な人材登用に取り組んできました。フレキシブルな勤務体制とワーク・ライフ・バランスに配慮した制度がすでにあったことが、危機対応においても生きたと思います」と話した。

(フィリップ モリス資料)

そうした取り組みはセールスフォースも同様で、酒寄さんは「組織のなかに多様な声があることがイノベーションを生み、価値を生み出す源泉であると考えています」と説明する。

(セールスフォース資料)

両社ではともに、「エンプロイー・ジャーニー」という手法を導入している。従業員が入社から退社までの長い時間の中で、出会いや配属、キャリアの積み方などの「イベント」を可視化し、従業員がその過程でどんな感情・思考を抱くのかを整理する。そのうえで、従業員の満足度を上げるために、何が必要かをマッピングしていく手法だ。

高柳さんは「それぞれのイベントが、働く人にどんな意味合いを持つかが可視化されているので、特にどの部分にサポートが必要かといったことが明確です。それが、現在の状況においても指針になっています」という。

現実のビジネスに反映はできるか

しかし、ダイバーシティー(多様性)とインクルージョン(包摂)が重要であることを認めたとしても、それを日々のビジネスにどう反映させるかで悩んでいる企業が多いのではないか――。

高橋編集長がそんな問いかけをしたのに対し、セールスフォースの酒寄さんは「私自身、子育て中の母親という顔もありますが、どんな人にも多様な面があります。そこに目を向けると、思考が柔軟になり、社内に活気が生まれ、いろいろな発想やアイデアが生まれます。それがビジネスに有効だと思っています」と答えた。

高橋編集長

高柳さんは、フィリップ モリスが近年、「紙巻きタバコの煙のない社会をめざす」という目標を掲げ、事業の大きな転換を図っていることを踏まえ、「従業員のマインドセットも変わらざるを得ませんが、そこで鍵になるのは、やっぱりエンゲージメント。トップのコミットメントも含め、いかに人と人とが話す場を持つかです」。洪さんは「多様性を受け入れることは、変化の速い複雑な社会への対応力を高めるためにむしろ不可欠だと思います」と語った。

「目的の共有」が組織を強くする

野田教授は「ダイバーシティーとインクルージョンにはステップがあります。最初の『抵抗』から始まって、『統合』の段階としての『イクオリティー』に向かう。これを実現できた組織では、働く人はそれぞれ最大限の能力を発揮できるようになり、企業として一歩抜け出していくと思います。ただ、能力の違う人たちだから当然コミュニケーションは難しくなる。そこで大切なのは、自分たちはなぜ働くのか、何のために存在するのかという目的をしっかり共有することです」と総括し、この日の議論を終えた。

(構成:ライター・野田朋広)

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