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宇都宮市、電力の「地産地消」へ新電力会社設立

宇都宮市、電力の「地産地消」へ新電力会社設立
撮影・朝日教之
宇都宮市/佐藤栄一市長

北関東の中心都市の一つ宇都宮市は、環境に配慮し、誰もが住み慣れた地域に住み続けることができるまちを目指すという。その手始めに、市が取り組んでいるのは、民間と共同で設立する地域新電力会社による電力の「地産地消」だ。佐藤栄一市長に目指す市の将来像を聞いた。(聞き手 編集部・金本裕司)

ネットワーク型のまちづくり目指す

――宇都宮市は、内閣府から2019年度の「SDGs未来都市」に選定されました。どのような将来像を描いていますか。

「環境に配慮したまちづくりや、教育が保障され、誰もが移動しやすく、住み慣れた地域に住み続けることができるなどSDGsの視点を取り入れたまちづくりをしようと思っています」

「宇都宮市は山が少なく平らで、有効利用面積が非常に広いまちです。市全体を無理に一つにするのではなく、地域のこれまでの成り立ちなどを踏まえながら、複数のコンパクトなまち(拠点)をつくって、公共交通で結んでいくことを考えています。市が掲げるNCC(ネットワーク型コンパクトシティ)という目標です。人の動きを活発にするため、人が動きやすい環境もつくっていかなければいけません」

(宇都宮市提供)

新電力会社で「卒FIT」に対応

――SDGsは、環境、社会、経済の3要素のバランスがとれていることが大事です。「環境」の大きな柱が、電力の地産地消を目指す地域新電力会社の設立ですね。

「今年中に、民間とともに地域新電力会社をつくります。市は51%を出資します。この3月にパートナー候補となる事業者が決まりました」

「市の南部にあるごみ焼却施設(クリーンパーク茂原)からはごみ焼却時の熱による蒸気が発生し、下水処理施設(川田水再生センター)からは大量のメタンガスが発生するため、それで電気を作っています。これまではFITを活用し売電していましたが、ごみ焼却施設の発電分については『卒FIT』となり年内で買い取りが終わります。そこで、電力会社を作って引き取ることにしました。買い取った電力は、当初は市役所などの市有施設で使い、2023年3月にLRT(次世代型路面電車システム)が開業したら、LRT でも使います」

「各家庭でも『卒FIT』が始まっているので、それも新電力会社での引き取りを予定しています。将来は新電力会社で、市内全域を対象に、事業者や家庭にも電力供給を行っていきたいと考えています」

ごみ焼却施設「クリーンパーク茂原」(いずれも宇都宮市提供)

「もったいない運動」の一環で再エネ利用

――新電力会社にはどんな期待を込めていますか。

「再生可能エネルギーのもとになっているのは家庭から出るごみです。市民の皆さんに『自分が社会に貢献している』ことを理解してもらいたい。市は以前から『もったいない運動』を進めていますので、再エネ利用についても、『もったいない運動』の一環と位置づけてやっています」

宇都宮市を訪れたワンガリ・マータイさん(写真中央右)=2008年6月2日(宇都宮市提供)

――「もったいない運動」はいつから取り組まれていますか。

「市長になる前、青年会議所に所属していた時から活動をしていました。市長になって、2007年に市で『もったいない運動』の全国大会を開催しました。宇都宮が『もったいない運動』に取り組んでいることがワンガリ・マータイさん(ケニアの環境保護活動家、ノーベル平和賞受賞者)に伝わり、08年の2度目の大会には来日中のマータイさんが参加してくれました」

――政府は2050年カーボンニュートラルと言っていますが、市も足並みをそろえますか。

「まだ2050年にゼロという言い方はしていませんが、今年3月に策定した『第3次環境基本計画(後期計画)』では、21 世紀半ばに、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを排出しない『脱炭素社会』を目指すことを表明しています」

――もっと再エネを増やしていかないと、なかなかゼロには近づきません。どう増やしますか。

「民間に再エネをさらに広めていかなければいけないと思っています。宇都宮市は日照時間が長いのが特徴です。一般家庭の太陽光発電のパネル設置に1㎾当たり1万円の補助を続けています。一般家庭では5㎾から8㎾の出力ですので、設置に5万円から8万円の補助を受けられます」

撮影・朝日教之

親と子の居場所づくり

――SDGsの目標のうち、環境以外で力を入れている項目はなんでしょうか。

「SDGsには教育や子育て、貧困などの問題も含まれています。妊娠・出産から子育て・教育まで切れ目ない支援に取り組んでいます。また、親や子どもの抱える様々な課題を解決していけるよう、子どもだけでなく、親も一緒になった居場所づくり事業もやっています。親子で、子育ての仕方、日常生活の仕方を知ってもらえる場にしたい」

――ジェンダー平等については。

「管理職に占める女性の割合の目標(15%)をもち、2019年度にはその目標値を達成しました。今後は、政府が目標とする女性管理職30%に向け取り組んでいきたい。しかし、無理やりつくるのではなく、実力本位で進めていきたい。女性職員を対象とした研修を行っており、部長級になれる人材を育てたいと思います」

東京圏からの人の流入が課題

――自治体の今後の課題をどうお考えですか。

「人口減少と高齢化がどの自治体にとっても大きな課題です。近隣の自治体と同じ圏域の中で人口を取りあうのではなく、人や企業が集中している東京圏や大阪圏などから、うまくこちらに来てもらうことが大事です」

――NCC構想など大きな費用がかかります。市債残高など市の財政状況はいかがですか。

「安定した税収を確保していくためには、市内外から人や企業に選ばれる高い都市力を備え、移り住んでみたい気持ちにさせ、企業には利益を上げやすいと思ってもらえなければと考えています。優先的・重点的に取り組む事業の一つとして、LRTを含め、NCCの形成のための事業に予算を立てています」

「もちろん、後世の負担を増やしてしまっては意味がない。複数の大型建設事業などでこのところ市債残高はいくぶん増えていますが、できるだけ減らすことに努力してきたつもりです。民間会社の調査で、財政健全度は50万人以上の都市で全国1位という評価をいただいています。これからは老朽化した公共施設や小学校の校舎、体育館などをどう改修していくかが大きな課題です」(注)

(注)東洋経済新報社がまとめた2020年版「都市データパック」による。財政健全度は「収支」「財政力」など5項目の指標で全国の市をランキングしている。宇都宮市は67位だが、同市が「人口50万人以上」を基準に調べると、同市が1位になるという。宇都宮市の人口は約52万人。ちなみに全国1位は愛知県の刈谷市だった。

Keywords
「卒FIT」

再生可能エネルギーによる発電分を、国が決めた高値で電力会社が買い取る制度を「固定価格買い取り制度(FIT)」という。2009年にFITに先駆けて余剰電力買い取り制度が始まり、11年の東日本大震災後に本格化した。ただ、制度の対象期間は10年間で、買い取り期間が順次終わる。それを「卒FIT」と呼ぶ。発電した電力は市場で売るか、自家用で使うかなどを選択することになる。

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