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ゴミ分別で8割超をリサイクル 鹿児島県大崎町が目指す循環型社会

ゴミ分別で8割超をリサイクル 鹿児島県大崎町が目指す循環型社会
鹿児島県大崎町の東靖弘町長(同町提供)
鹿児島県大崎町長/東靖弘

ゴミを細かく27品目に分別し、ゴミのリサイクル率が8割を超える町がある。人口約1万3千人の鹿児島県大崎町は20年以上にわたり、町民、行政、企業が協力してゴミを再資源として活用できるよう取り組んできた。さらに、「2030年までに使い捨て容器の完全撤廃・脱プラスチックを実現」の目標を新たに掲げる。大崎町の東靖弘町長に資源循環の取り組みと将来像を聞いた。(聞き手 編集部・大海英史)

鹿児島県大崎町の位置(同町提供)

埋め立て処分場の延命がきっかけ

――大崎町がゴミの分別を進めるようになったきっかけは何ですか。

「ゴミの埋め立て処分場の延命が必要になったからです。1990年に隣の有明町(現・志布志市)に埋め立て処分場が建設され、2004年までの計画でゴミを搬入していました。しかし、ゴミの量が計画を大きく上回って1998年にピークとなり、計画の年まで持たなくなったのです」

「焼却処分場をつくる案も出ました。しかし、建設費や維持費がかかり、財政規模が小さい自治体には余裕がありません。そこで、ゴミの分別を徹底して埋め立てゴミの量を減らし、リサイクルをすることで延命を図るしかないということになったのです」

――どのように分別を始めたのですか。

「95年の容器包装リサイクル法成立を受けて、98年から、缶、ビン、ペットボトルを分別していましたが、2000年から16品目の分別をスタートしました」

「分別には町民の協力が必要です。町役場の職員と各集落の自治会長さんが約3カ月かけて延べ450回の住民説明会を開き、ゴミ分別への理解を求めました。埋め立て処分場が持たないこと、焼却処分場の建設は難しいこと、ゴミの問題は自分たちの問題であることを訴え、町民の理解を得たのです」

鹿児島県大崎町のゴミ量の推移(同町提供)

ゴミを27品目に分別

―埋め立てゴミは減ったのでしょうか。

「分別を増やし、27品目にしました。缶・ビン類は空き缶、生きビン、茶色ビン、無色透明ビン、その他のビンの5品目、紙類は段ボール、新聞紙・チラシ、雑誌・雑古紙、コピー用紙、シュレッダー紙、紙パックなど8品目というように分けています」

「分けられた缶やビン、紙などは、町が委託した民間事業者『そおリサイクルセンター』で再資源用に中間処理され、リサイクル製品の原料になります。生ゴミは同センター大崎有機工場で5カ月から6カ月かけて完熟のたい肥になります」

「1998年度に大崎町で年間4382tだったゴミの埋め立て処分量は2018年度には年間670tに減り、2006~17年度には12年連続で資源ゴミリサイクル率日本一になりました。埋め立て処分場の寿命も当初計画より40年ほど長く延命できるようになりました」

自治会が中心になり、分別を推進

鹿児島県大崎町のゴミの分け方と出し方(同町提供)

――町民は細かい分別にどのように取り組んでいるのですか。

「収集日は、缶、ビン、紙、ペットボトル、プラスチックなどの資源ゴミが月1回、生ゴミが週3回、埋め立て処分する一般ゴミが週1回です。資源ゴミは各家庭で缶やビン、ペットボトルなどに分別して、早朝に収集場に持ってきます」

「町内には157の衛生自治会があり、会長さんら役員が収集場で住民に指導しながら分別してもらいます。各家庭では分別することも牛乳の紙パックを洗って出すことも、今では当たり前の生活習慣です」

「行政が仕組みをつくり、住民が自ら分別し、企業が収集・リサイクルをする、それぞれの役割を担っています。町民みんなでつくりあげてきたのです」

鹿児島県大崎町ではゴミを細かく分別して収集場に出す(同町提供)

菜種から食用油をつくり、使った油をリサイクル

――リサイクルはまちづくりにどんな影響を与えましたか。

「資源循環型社会をつくろうという意識が高まり、01年度には『菜の花エコプロジェクト』を始めました」

「町内すべての家庭・事業所に公共下水道や合併浄化槽が行きわたっているわけではありません。生活排水が河川に流れ、水質汚濁につながるおそれがあることから食用油を排水として流さず、回収することにしました」

「大崎町は地元の大崎小唄で『春は大崎 菜の花ざかり』と歌われるほど、昔から菜の花が栽培されてきました。そこで、生ゴミからたい肥『おかえり環ちゃん』をつくって菜の花畑にまき、菜種から食用油『ヤッタネ!菜ッタネ!』をつくって町内で販売します。廃食油は回収し、ゴミ収集車のディーゼルエンジン代替燃料『BDF』や菜の花エコせっけん『そおプ』にする仕組みをつくりました」

鹿児島県大崎町の「菜の花エコプロジェクト」のイメージ図(同町提供)

30年に「脱プラスチック」

――リサイクルの仕組みをどう発展させますか

「20年以上の取り組みが認められ、18年に政府の第2回ジャパンSDGsアワードで内閣官房長官賞(SDGs推進副本部長賞)を受賞し、19年には政府からSDGs未来都市に選ばれました。さらに発展させようと、21年3月に企業や団体と大崎町SDGs推進協議会を設立しました。ここで、『30年までに使い捨て容器の完全撤廃・脱プラスチックを実現』の目標を掲げました」

「大崎町では町外でつくられたプラスチックの弁当箱やコップ、包装袋などを消費しています。このような使い捨て容器は廃棄プラスチックを生み、持続可能ではありません。24年までに、町内で販売されるすべての消費材で使い捨て容器に代わって使い回しができる容器を提供し、27年までにその普及率80%を目指します」

「また、企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)を活用して企業からの寄付を募り、町内に『ジャパンSDGsラボ(仮称)』をつくります。企業と連携して研究者などの人材を受け入れ、町をあげて実証研究に取り組みます。研究成果は社会に還元するとともに国内外の自治体などに広げていきます」

鹿児島県大崎町のSDGs推進協議会設立の記者会見(同町提供)

リサイクルの町を世界へ

――町の将来像をどのように構想していますか。

「これからはリサイクル、脱プラスチックが世界標準になります。大崎町は12~14年度、インドネシア・デポック市に協力して、視察団を受け入れたり、現地でリサイクルを指導したりする技術支援をしました。インドネシアはゴミが大きな問題になっています。15~16年度にはバリ州に技術支援し、いまジャカルタ州からも要請を受けています。大崎町の取り組みは世界に発信できる優れた取り組みだと気づかされました」

「30年に『サーキュラー(循環型)ヴィレッジ』をつくるという目標を立てています。目標は大きく『リサイクルの町から、世界の未来をつくる町へ』です。ゴミ分別で培ったリサイクルの仕組みに脱プラの取り組みを加えて、すべてのものがリユース、リサイクルされて循環する町をつくります」

鹿児島県大崎町が目指す「サーキュラーヴィレッジ」(同町提供)

人材を育て、若者が帰ってくる町に

――今後の課題は何でしょうか。

「大崎町は海辺では白砂青松、山間部では自然環境に恵まれ、農業産出額が全国21位と、多種多様な農業・畜産業・漁業の町です。マンゴーなどのパッションフルーツ、養殖ウナギ、和牛や黒豚、若鶏などが有名です。しかし、町の人口は減少しており、1万3千人を切りました。高齢化が進み、若者の定住化が課題です。町内に新しい仕事をつくらなければいけません」

「サーキュラーヴィレッジでは、30年までに、国内はもちろん世界の自治体や企業、団体を受け入れる研修施設、宿泊体験施設をつくり、リサイクルを学ぶ拠点を目指します。指導料をいただけるような仕組みもつくりたいと考えています。生ゴミからのたい肥を使った有機野菜が町内のレストランや物産館などで提供されるという未来を描いています」

鹿児島県大崎町でSDGsやリサイクルの仕組みを学ぶ生徒ら(同町提供)

「そこで、ゴミのリサイクルで得た利益から『リサイクル未来創生奨学ローン』の制度をつくりました。大学や専門学校などに通う学生の家庭に月5万円を実質無利子で貸し出し、さらに学生が大崎町に戻って働く場合は返済額と同額を本人にお返しすることで実質の自己負担額がなくなるという制度です。サーキュラーヴィレッジで仕事をつくりつつ、人材を育てていくことが重要だと考えています」

鹿児島県大崎町の東靖弘町長(同町提供)

東靖弘(ひがし・やすひろ)
1944年生まれ。有明高校(鹿児島県)卒業。大崎町福祉課長、総務課長、助役を経て、2001年に初当選。17年に無投票で5期連続当選。
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