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自然の仕組みを技術に生かすバイオミミクリーとは 【4Revs】ケーススタディーから 6月 お薦めの1本

自然の仕組みを技術に生かすバイオミミクリーとは 【4Revs】ケーススタディーから 6月 お薦めの1本
ウェブサイト:https://biomimicry.org/what-is-biomimicry/

イノベーション・プラットフォーム「4Revs」との共同企画となるこのコーナーでは、4Revsが会員向けに提供している情報の一部を紹介していきます。毎月第3週は、世界各地のプログラムマネジャーやリサーチャーが報告する「ケーススタディー」から、お薦めの1本をお送りします。


報告:クリストファー・ブロス
団体名:バイオミミクリー・インスティテュート(Biomimicry Institute 米国)

【抄訳】ギリシャ語で「生命」を意味するbios と「模倣」を意味するmimesis を語源とする「biomimicry(バイオミミクリー)」とは、自然を、搾取すべき対象としてではなく、学ぶべき対象としてとらえる、新しい科学だ。

1982年にこの考えを提唱したジャニン・ベニュス(Janine Benyus) はバイオミミクリーについて、「自然を、利用し、育て、コントロールする対象としてではなく、学ぶべき対象として価値づけること。この過程を通して私たちは、自分自身や自分たちの目的、そして生物同士および母なる地球との関係について学ぶことができる」と言及している。

バイオミミクリーの最初の事例は、15世紀にレオナルド・ダヴィンチが設計した飛行機とされている。これは鳥の羽ばたく様子をモデルにしている。20世紀に確立された、イカの神経系を応用した電気回路(シュミットトリガ回路)も、一例だ。このようにバイオミミクリーは建築、工学、数学など幅広い学問領域にまたがる概念となっている。

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レオナルド・ダヴィンチが考案した飛行機のデザイン( 出典:https://kids.britannica.com/kids/search/images?query=da%20vinci&includeLevelOne=1&page=1)

バイオミミクリーは、次の三つの基本原則が土台となっている。

①自然をモデルとして扱う
自然界にあるケース、プロセス、システム、戦略を学び、模倣することで課題を解決する。

②自然を尺度として扱う
エコロジカルな基準を用いることで、そのイノベーションが持続可能かどうかを判断する。

③自然を師として扱う
学ぶべき対象としてみることで、自然との調和に対するコンセプトをとらえなおす。

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バイオミミクリーの提唱者、ジャニン・ベニュス

バイオミミクリーは、ダヴィンチ以前からある昔ながらの知恵を言い換えただけ、との見方もあるかもしれない。確かに、古代文明においても自然界を利用したものは多くあった。ただ、バイオミミクリーの特徴は、自然界の機能性の模倣(work like)を重視することにある。したがって、必ずしも見た目を似せる(look like)必要はない。

バイオミミクリーと似た意味を持つ単語として「bio-utilization」や「biomorphism (ビオモーフィズム)」もある。

bio-utilization:
自然界にある物質や生きものをデザインや技術に落とし込むこと。例えば、木を材木にしたり、泥を接着剤に使ったりする事例があげられる。自然界の材料を直接使うという点で、自然界の機能を学んで応用するバイオミミクリーと異なる。

biomorphism:
自然に存在するものと視覚的に似せること。下の写真のように、植物の葉を模した建築物が一例。こちらも自然界の「機能」を模倣して応用するバイオミミクリーと異なる。

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葉の形に似せた竹製の家屋(出典:bamboo-house-ted-talk-sharma-springs-elora-hardy-ibuku-bali-121 - Earth Porm)

バイオミミクリーは、古くから存在した考えととらえることも可能だ。だが、バイオミミクリーの特徴は、人類が抱える課題を解決するために生まれた概念だということであり、昨今、その重要性は日々増している。(編集協力:慶応大学経済学部3年 青柳識)

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