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海に流れ出る前に河川でプラごみを回収する 【4Revs】ケーススタディーから 7月お薦めの1本

海に流れ出る前に河川でプラごみを回収する 【4Revs】ケーススタディーから 7月お薦めの1本
ウェブサイト:https://ichthion.com/

イノベーション・プラットフォーム「4Revs」との共同企画となるこのコーナーでは、4Revsが会員向けに提供している情報の一部を紹介していきます。毎月第3週は、世界各地のプログラムマネジャーやリサーチャーが報告する「ケーススタディー」から、お薦めの1本をお送りします。


報告:サラ・ゴメス・ゴメス
団体名:イクティオン(Ichthion 英国)

漂着したプラごみで埋まるガラパゴス

【抄訳】世界のプラスチック生産量は年々増加しているが、回収率やリサイクル率は追いついていない。国際環境NGOグリーンピースによると、これまでに生産されたプラスチックのリサイクル率はわずか9%。79%はそのまま廃棄される。12%は焼却されるが、その過程で、環境に悪影響を及ぼすガスが発生する。

プラスチックごみは、あのガラパゴス諸島にも及んでいる。エクアドルから太平洋をはさんで1000km離れた絶海の孤島は、独自の進化を遂げた陸海の動植物が生息し、ダーウィンが進化論を語るきっかけとなった。だが近年は、ほかの地域で廃棄され流れ着いたプラスチックで埋め尽くされている。

大量のプラスチックが漂着するガラパゴス諸島 (出典:https://www.youtube.com/watch?v=aS8IBxi2xJE&feature=emb_logo
海洋プラスチックのうち、9割が10の主要河川から流出しているという報告 (出典:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.7b02368

海には年間約800万tのプラスチックごみが排出されているが、その約90%は10の主要河川を通じて流れ込んでいるとされる。ここに着目し、海に流れ出てしまう前に河川でプラスチックごみを回収できれば、海洋プラスチック汚染を劇的に減らせると考えたのが、スタートアップ「イクティオン」と、その創設者でエクアドル出身の研究者、インティー・グロネベアだ。

特殊な膜とタービンでごみを回収

世界ではいま、多くの国で使い捨てプラスチックの使用を禁止する動きが出てきている。グロネベアは「2035年までにプラスチックごみ問題はなくなるかもしれない。だが、2025年にはプラスチック使用量が現在の3倍になっているとする予測もある。いまのうちに対策を講じる必要がある」と考えた。

インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)の研究室に在籍していたグロネベアは、研究仲間のロバート・ローズと河川からプラスチックを回収するためのタービンを開発していった。2018年には、MITテクノロジーレビューが主催する「イノベーターズU35」のラテンアメリカ版に選ばれるなど、この発明はさまざまな賞や助成金を獲得することになった。

イクティオンの創設者インティー・グロネベアと、開発したタービン (出典:https://www.innovatorsunder35.com/the-list/inty-gronneberg/)

現在、イクティオンは、プラスチックごみの大きさ別に3種類の回収タービンを開発・提供しようとしている。

① Azure――河川から、比較的大きなプラスチックを1日あたり最大80t捕獲できる。すでに実証段階に入っている。捕獲できるプラスチック量が豊富なため、既存のリサイクル技術とあわせて、生産システムに再投入する仕組みもつくりやすい。実際に、エクアドル政府と協定を結び、マナビ州を流れるポルトビエホ川で2020年から最初のシステムの建設を始める予定だった(新型コロナウイルス感染症の影響で、その後の進捗については不明)。

② Cobalt――マイクロプラスチック用。まだテスト段階だが、異なる複数の膜を装着し、水が膜を通過するとタービンが回転して微粒子を捕獲する。船の側面に装着することで、航行しながら河川の水を浄化する。沿岸部や波止場での設置も可能だ。

③ Ultramarine――研究開発段階。上記の二つの機能を大型船舶に実装し、より多くのプラスチックごみを回収できるよう改良する。

イクティオンが主導する三つの回収方法が担当する領域(ウェブサイトから)

回収プラのデータ収集も

これらのタービンは、プラスチックごみを回収するだけでなく、装着した膜で捕獲・抽出したプラスチックごみの詳細なデータの収集にもつながる。こうした情報は、政府や企業、その他の機関が対策を講じるうえで、強力なツールにもなる。

イクティオンのタービンは、広大な海に流出してしまう手前でプラスチックごみを回収しようとする点で画期的だ。既存のインフラ設備と共存できるため、コストを下げられるなど、より実現性の高いプロジェクトだといえる。データの収集は、さらなるイノベーションを生む可能性を広げる。また、回収したプラスチックを生産システムへ再投入することは、サーキュラー・エコノミーを構築する一歩となる。(編集協力:慶応大学経済学部3年 青柳識)

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