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国連「持続可能な開発目標報告書」2021年版 コロナ禍でのSDGs達成状況を分析【4Revs】インテリジェンスから 8月お薦めの1本

国連「持続可能な開発目標報告書」2021年版 コロナ禍でのSDGs達成状況を分析【4Revs】インテリジェンスから 8月お薦めの1本
「持続可能な開発目標報告書2021」表紙

【ポイント】

1.国連統計局は7月、17目標を達成するため公式に採択された指標の進み具合を調べた「持続可能な開発目標報告書」の2021年版を発表した。

2. 国連事務総長は序文で「新型コロナウイルスが登場する前から、SDGsはすでに軌道をはずれていた」と指摘。貧困や母子の健康、電力へのアクセス、ジェンダー平等などで進展が見られたものの、不平等の是正やCO₂(二酸化炭素)排出量の削減、飢餓への取り組みなど、その他の重要部分は停滞または後退した、としている。

3. 報告書は、パンデミックの影響により多くの国で開発データの収集が減少しており、進捗状況の把握や最も必要とされているものが何かを特定することが困難になっている点にも言及。最新かつ正確な情報にアクセスできる情報インフラの早期改善を提言している。

【概要】

(View from the pandemic部分を和訳編集)

新型コロナウイルス感染症の爆発的な拡大は2年目に入った。このパンデミックは、人間の生命や生活、そして「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の実現に向けた取り組みに壊滅的な影響を及ぼす規模の危機であることが明らかになった。歴史を振り返ってみると、感染症の蔓延(まんえん)は政治、経済、社会の変化要因となってきた。これは、現代においても変わらない。2021年は、2030年までにSDGsを達成するため、世界が変われるかを決定づける年となる。

「持続可能な開発目標2021」は、入手可能な最新データと推計値を用いて今回の危機がSDGsに与える影響を明らかにし、緊急かつ協調的な行動を必要とする分野を指摘している。報告書は、国連経済社会局が50以上の国際機関と協力して作成した。

報告書の冒頭部分。各ゴールの実態をイラストとグラフを用いてわかりやすく表現している(報告書から)

不平等は拡大、気候変動、生態系危機は……

これまでに数年、あるいは数十年にわたって続いてきた取り組みが停滞したり、後退したりしている。2020年、世界の最貧困層の割合は、20年ぶりに上昇に転じた。何億人もの人々が、極度の貧困と慢性的な飢餓状態に追いこまれている。パンデミックにより、いくつもの保健サービスが中断され、病気以外にも健康上の脅威が生じている。世界中で子どもたちの学習意欲や幸福感が打撃を受け、女性は失業したり、家庭での介護労働が増えたりするという不均衡な状況に陥っている。

感染症の拡大は、国内および各国間の不平等を露呈し、より厳しいものにした。最も貧しく脆弱な人々は、ウイルスに感染するリスクが高く、経済的な損失の矢面に立たされている。小島嶼(とうしょ)開発途上国では、観光業が大打撃を受けている。ワクチン供給の面でも格差が拡大している。2021年6月17日時点で、欧州や北米では100人当たり約68本のワクチンが投与されているのに対し、サハラ以南のアフリカでは2本に満たない。

新型コロナウイルス感染症の影響。高齢者の致死率の高さや差別の増加、情報取得の重要性などについて図式化している(報告書から)

パンデミック下でも、気候や生態系、環境汚染の危機は続いている。主要な温室効果ガスの濃度は、各地でのロックダウンやその他の対策で2020年には一時的に減少したものの、再び増え始めた。パリ協定の達成に、世界は依然として大きく後れをとっている。生物多様性は減少し、陸上の生態系は驚異的な速度で劣化している。世界では1分ごとに100万本のペットボトルが購入され、毎年5兆枚に及ぶプラスチックバックが捨てられている。

COVID-19 のパンデミックは、世界を映し出す鏡のようなものだ。不十分な社会的保護や医療、脆弱な公衆衛生システム、構造的な不平等、環境汚染、気候変動といった、社会に深く根ざした課題を反映している。

データ整備や情報インフラに投資を

希望をもたらしてくれるのは、レジリエンス(回復力)や適応力、そしてイノベーションだ。途方もない課題に直面しつつも、多くの政府、企業、学界、コミュニティーは迅速な対応、驚くべき創造性、そして新しい協力の形を示してきた。2020年2月1日から12月31日までの間、世界各国で1600以上の新しい社会保護措置が発表された。また、世界中の科学者が一致団結して、命を救うワクチンと治療法を記録的なスピードで開発している。感染症の拡大は、政府や経済のデジタル化(DX)を加速させ、私たちの交流や学習、仕事の仕方を大きく変えた。

各ゴールの情報にアクセスできる国・地域の割合を示したグラフ。ゴールによって大きな偏りがある(報告書から)

変革が必要だ。SDGsはそのロードマップになる。今回の危機は、健康、福祉、社会的・経済的繁栄から気候、生態系にいたるまで、持続可能性のさまざまな側面が相互に依存し、連動していることを示している。パンデミックで露呈した脆弱性に対処するために、各国政府や国際社会は構造的な変革を行い、SDGsを指針とした共通の解決策を生み出す必要がある。

具体的には、社会保護システムや公共サービス(保健システム、教育、水、衛生、その他の基本的サービス)の大幅な強化、科学や技術、イノベーションへの投資拡大、途上国における財政的な余地の創出、グリーンエコノミーへのアプローチやクリーンエネルギー・産業への投資、持続可能な食料システムへの移行などが挙げられる。

データや情報インフラへの投資が、非常に重要だ。今回の感染症拡大では、データや情報インフラの不足が、意思決定者に新しく大きな課題をもたらすことがわかった。コロナ禍が発生して1年が過ぎた時点で、COVID-19の感染率と死亡率を年齢別・性別で集計し、公開できたのは約60カ国に過ぎない。こうしたデータの不備は、人々の生活に深刻な影響を及ぼす。エビデンスがなければ、この困難な時期に人々を守るための政策やプログラム、資源に集中して介入していくことが難しくなる。

データや情報システムへの投資は、決して浪費ではない。世界中の統計局は、革新的なアプローチを採用し、パートナーシップを構築することで、エビデンスに基づく意思決定のためのデータの利用可能性を向上させている。危機を乗り越え、SDGsの達成を加速させるためには、国のデータと統計システムへの投資を増やすため国内外のリソースを追加投入することが不可欠だ。

各ゴールの最新データがどの時点のものかを比較したグラフ。ゴール13やゴール4など、データの取得に遅れが生じているものもある(報告書から)

この瞬間を「変革」の分岐点に

よりよい復興(Building back better)のためには、効果的な多国間主義とすべての社会の参加が必要だ。この世界的な危機には、地球規模で共通した対応が求められる。私たちが直面する多様な課題を前にして、多国間システムによる首尾一貫した協調的で包括的、統一されたビジョンが、これまで以上に重要になっている。パンデミックは、あらゆる場所のあらゆる人に影響する。解決策の実行には、政府、産業界、学術機関、市民社会、そして、個人(とくに若者と女性)を含むあらゆる社会セクターの参画とアクションが必要だ。

私たちは今、人類史における重要な岐路に立っている。今日、私たちが下した決断と行動は、将来世代に大きな影響を与える。パンデミックから得た教訓は、現在と将来の課題に立ち向かうための糸口になる。SDGsを達成しパリ協定を履行するために、この10年を行動、変革、回復の10年とすべく、この瞬間をとらえようではないか。(編集協力:慶応大学経済学部3年 青柳識)


イノベーション・プラットフォーム「4Revs」との共同企画となるこのコーナーでは、4Revsが会員向けに提供している情報の一部を紹介していきます。毎月第4週は、サステイナブルな社会の構築に重要となる世界のさまざまな統計や発表を収集している「インテリジェンス」から、お薦めの1本をお送りします。要点を和訳しています。詳細はリンク先をご参照ください。

主宰ピーダーセン氏のメッセージはこちらから

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