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SDGs×デジタルで広がる学びの可能性 先生たちの新たな挑戦

SDGs×デジタルで広がる学びの可能性 先生たちの新たな挑戦

SDGsをテーマに、オンラインやデジタルツールを活用した授業に取り組む学校が増えています。積極的にさまざまな手法を試している先生に、挑戦のきっかけや授業計画、生徒たちへの思いなどを聞いてみました。(ライター・庄野勢津子)

コロナ禍が契機のオンライン授業――早稲田佐賀中学校

早稲田佐賀中学校(佐賀県唐津市)の石井誉典先生(2021年4月から早稲田佐賀高校勤務)
がオンライン授業を採り入れたのは、まさにコロナ禍がきっかけでした。

2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、全国の学校が一斉に休校となりました。早稲田佐賀でも、全生徒の6割ほどを占める寮生が、親元に帰ることに。今後の授業をどうするのか――学校として、デジタルツールを使ったオンライン授業導入の必要に迫られたのです。

石井誉典先生

「正直言って、本校のICT教育はそれまでほぼ手つかずでした。教師も生徒も、ゼロからのスタートだったわけですが、それでも慣れるものですね」

その後、対面授業が再開されましたが、この時に導入されたビデオ会議システムが、3年生のSDGs学習で大活躍することになります。

石井先生の学年では担任の先生たちが中心になり、総合的な学習の時間の授業計画を組み立ててきました。1年次では「地元」を、2年目には企業とともに「日本」の未来を学ばせました。そしていよいよ3年生となった生徒たちに「世界」へと目を向けてもらうべく、SDGsに取り組もうとした時、コロナ禍となったのです。

「3年生は2週間の国際ボランティアについて学ぶプログラムがあるので、それに結びつくようにSDGs授業を計画していたのですが、すべてご破算、再構築となりました」

アフガニスタンと4元中継も

授業回数も減り、予定していたゲストスピーカーも来校できません。

「限られた条件で何ができるのか交通整理した結果、まず『大学』『行政』『企業』『NPOなどの法人』という視点を定め、SDGsに取り組んでいる各分野の専門家の方々にご協力をお願いすることにしました」

具体的にどの専門家にお願いしようか。ネットで検索しては、打診していきました。

「飛び込み営業のようなものですから、断られたこともありました。しかし、続けているとつながりができるようになるんですね。一度関係ができた団体からそのつながりが広がっていき、短期間に授業計画を再構築することができました」

依頼の際、オンライン授業を前提にしたことも奏功しました。

「対面授業にこだわらなくなったのは、コロナ禍での収穫ですね。学校側もゲストスピーカー側も、オンラインの方が便利で楽ということです」

オンラインで実施するSDGsの授業(提供)
アフガニスタンともつながることができた(提供)
オンラインだからこそできる応用編として、「SDGs×道徳」「SDGs×キャリア教育」といったかけあわせ授業も実施しました。

「SDGs×道徳は、九州出身でアフガニスタンの人道支援に尽力された、中村哲医師についての授業です。生前の中村医師と関わりがあった方々に、生徒たちが英語でインタビューしました。アフガニスタン・東京・埼玉・早稲田佐賀の4元中継で実施しました」

石井先生は、SDGsを授業に採り入れるポイントがあると言います。

「教師は100%理解した上で授業しようとしがちです。しかし、SDGsを100%理解するのは無理です。だから専門家の協力のもと、生徒と共に学ぶくらいのスタンスがいいと思います。デジタルツールも、授業を重ねるうちに適したものがわかってくるので、あまり身構えずに使っていけばいいのではないでしょうか」

コロナ禍でなければ、アクションを起こすところまでやり遂げたかったという石井先生。引き続き、現在高校1年生になった生徒たちの担任として、SDGsを授業に採り入れたいと考えています。

2校間でPBL デジタルツール使い、シール作成も――札幌新陽高校

札幌新陽高校(札幌市)は、2017年から入学した生徒全員にタブレット端末を配布するなど、積極的にICT教育に取り組んできました。

2021年1月〜3月には、連携校の東明館中学校・高校(佐賀県基山町/以下、東明館高校)と合同で、SDGsをテーマにオンラインPBL(Project Based Learning / 探究学習、課題解決型学習)を実施しました。対象は1年生。中心になったのが、細川凌平先生と川崎淳一先生です。

細川凌平先生(左)と川崎淳一先生

「両校をオンラインでつなぎ、生徒同士が議論したり情報を共有したりするプラットフォームは、NECさんに提供していただきました」(細川先生)

前半の1カ月は、各教科とSDGsを結びつけたインプット中心の授業を展開しました。例えば家庭科では、調理実習とフードロスを結びつけ、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」について学ぶ、といったようにです。

「SDGs自体はとっつきやすいので、インプットに関してはみんな意欲的に取り組めていたようです。結構大変そうだったのが、後半2カ月のアウトプットでした」(細川先生)

チームごとにSDGsの目標から課題を見つけ、問題解決のためにプランを考えて具体的に行動する「リアルアクション」を達成するのがアウトプットの時間です。

「リアルアクションは重視しましたね。ゴミ拾いや募金活動といった行動さえ、SDGsの目標の達成に対してどう関係しているのか、自身のアクションとすることで当事者意識を高く持って、考えることができると思います。生徒たちには社会の一員としてリアルアクションを起こすことで、社会を変えることができることを体験してほしかった。SDGsはそういう意識が大切だと思うので」(川崎先生)

あるチームは、障害者施設の利用者が描いたイラストでバナナペーパー製のシールを作成し、販売を目指すアクションを起こしました。このプランには、環境保護や障害者の経済的自立など、SDGsの目標が複合的に含まれており、身近な社会に変化をもたらすことにつながったといいます。

デジタルツールを使っての授業(提供)

デジタルツールもオンラインも、使わない手はない

生徒たちのチームには、教師や会社員といった大人の「チューター」がサポート役としてつきました。チューターは、生徒たちの課題目標が大きくなりすぎた時に実現可能な規模になるようアドバイスするなど、リアルアクションにつなげる存在として効果的だったと言います。

「生徒たちは、デジタルツールを使ってプレゼン資料を作成したり、施設や企業に協力依頼のメールを送ったりといった作業をしましたが、ここに関しては問題ありませんでした。一方で、オンライン上で建設的なコミュニケーションをとることには苦労していましたね。1チームの構成が、新陽高校3人・東明館高校1人とアンバランスだったこともあるのでしょう。お互いに遠慮してしまい、話し合いが進まない場面がありました。これは今後の課題です」(細川先生)

新陽高校では、2021年4月から3年生が「宇宙」をテーマに新しいPBLをスタートしています。

「オンラインでのコミュニケーションはこれからずっと必要となるスキルです。生徒は今からたくさん経験すべきですし、だったら教師も授業で使わない手はないと考えています」(川崎先生)

リアルアクションを重視したPBL(提供)

子どもたちの「発信したい、表現したい」気持ちに応えよう

京都府亀岡市みらい教育リサーチセンターの指導主事・広瀬一弥先生は昨年、赴任していた亀岡市立東別院小学校の6年生をまとめ、SDGsクリエイティブアイデアコンテスト2020に応募し、優秀賞を受賞しました。

「SDGsをテーマにICT授業に挑戦」と聞くと、及び腰になる先生も少なくないなかで「だったら、コンテストをきっかけにしてみては?」と話します。

広瀬一弥先生

広瀬先生がSDGsに注目するようになったのは、6年生を担任していた2017年のことです。SDGsの17目標別にあるカラフルなアイコンを見て「これは授業で使える」と思い、少しずつ総合的な学習の時間で活用するようになりました。2019年に再び6年生の担任となった際は、さまざまな教科の学習で1年間SDGsを学ぶ授業計画を立てました。

「当初は、各児童に配布したタブレットを使いながら、課題解決をまとめることを目標にしていました。しかし途中でコンテストの存在を知り、最終目標を『学んだことを、デジタルで表現する』にしました」

コンテンツの作成には、Adobe Sparkを使用しました。先生も子どもたちも触るのは初めてでしたが、子どもたちは直感的に使いこなしていきました。

「私自身はポスターをつくれたらそれで十分と思っていたのですが、子どもたちから『ポスターだけやったら言いたいことが伝わらない。音声も入れたいし、動画も作りたい』との声が上がり、どんどんクリエーティブな作品になっていきました」

GIGAスクール構想が今年度からスタートしました。デジタルツールに苦手意識がある先生はまだまだいますが、広瀬先生は、思い切って踏み出すことを提案します。

「デジタルデバイスは実際に使いやすいし、児童や生徒は取り組む機会を与えれば、有効に使い出します。SDGsは多様な視点でアイディアが創造される取り組みやすいテーマですし、コンテストへの参加は、発信したい、表現したいというモチベーションを形にする、いい機会にもなると思います」

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