SDGs ACTION!

「気候変動は待ってくれない」 大学を休学し、中高生に講演する二十歳の環境活動家【#チェンジメーカーズ】

「気候変動は待ってくれない」 大学を休学し、中高生に講演する二十歳の環境活動家【#チェンジメーカーズ】
環境活動家/露木志奈

SDGs ACTION!では、社会課題解決のために奮闘するキーパーソンを紹介するシリーズ「#チェンジメーカーズ」を始めます。第1回は、大学を休学し、全国の中学や高校で環境をテーマに講演する環境活動家の露木志奈さん(20)。前へと進む力強さの背景には、経験に裏打ちされた原点やしっかりとしたビジョンがありました。(聞き手 編集部・竹山栄太郎)

露木志奈(つゆき・しいな)
2001年生まれ。横浜・中華街育ち。高校3年間をインドネシア・バリ島の「グリーンスクール・バリ」で過ごし、卒業後の19年9月に慶応大学環境情報学部に入学。20年11月に休学し、講演活動を始めた。

「環境活動家」をなくしたい

――「二十歳の環境活動家」を名乗っています。

高校時代を「世界一エコな学校」と言われるインドネシア・バリ島の「グリーンスクール」で過ごしました。卒業して帰国したら、周りから「しいなちゃんって環境活動家だよね」と言われるようになったんです。レジ袋をもらわない、水筒を持ち歩くといったグリーンスクールで当たり前にしていたことが、日本では当たり前ではなかった。「活動家」と聞くと過激な感じですが、自分が何者か知ってもらうにはいいかなと思って、いまは自分でも使っています。

みんなが環境活動家のような行動をとれば、環境活動家は存在しない。そんな社会をつくりたくて「環境活動家をなくしたい環境活動家」として活動しています。21歳になったら「Z世代の環境活動家」に変えようかな、と思っているんですけど。

――いま、どんな活動をしているのですか。

一つは全国の学校での講演です。環境問題に対して行動していない人がいるのは、問題を知らないからだと思うんです。無理やりでもいいから知ってもらうきっかけをつくりたくて、学校という場を借りて講演しています。多いときで週6回、最近はコロナ禍なのでオンラインも増えています。2020年11月から始めて、これまでに約120校、1万6000人の方にお話を届けてきました。

中学校で講演する露木志奈さん=2020年12月(撮影・朝日新聞)

もう一つはコスメです。講演でも「消費者の選択は地球を変える」という話をしますが、消費者が何を選ぶかは社会に対する意思表示になります。そのためには選択肢が必要です。私の妹が「ナチュラル」と書かれた化粧品を使ったのに肌荒れしてしまったことをきっかけに、環境にも肌にもやさしい口紅の開発を始め、ブランドも立ち上げました。いまは口紅を自分でつくるキットを販売しています。

露木志奈さんが開発したコスメキット(本人提供)

同世代から刺激受ける

――環境に興味を持った原点を教えてください。

グリーンスクールの授業でごみ山を見に行ったんです。大きくて、とにかくくさくて。「バリ島の大きさに対して、ごみ山が大きすぎない?」と疑問に思いました。調べてみると、ほかの国から運び込まれたごみが多く、自分の母国の日本も処理しきれないごみを他国に輸出していた。ショックでした。それって無責任じゃないかなって思ったんです。同時に、日本でごみを出していた一人である自分も変わっていく必要があると気づきました。

グリーンスクール時代の露木志奈さん(前列右から3人目、本人提供)

それが原点ですが、振り返れば小さい頃から自然は好きだったんです。まず、通った幼稚園がまるでサバイバルみたいなところでした。森で山菜をとったり、飯盒(はんごう)でごはんを炊いたり。自然はディズニーランドみたいな存在で、常に近くにある夢のような場所でした。

小学4、5年生の2年間は長野県泰阜(やすおか)村に山村留学しました。畑や田んぼで農作業し、お箸も木を削ってつくる生活で、自然は楽しいだけではなく、自分たちが使うもの、口にするものはすべて自然から来ているんだと実感しました。

中学では英語の成績で「1」をとったこともありましたが、英語を話せることにあこがれ、高校留学を考えました。うちは母子家庭で4人きょうだいだから、何でもOKという感じではなく、母には「英語にプラスして、そこでしか学べないものがあるなら応援するよ」と言われたんです。母が見つけてくれたのがグリーンスクールでした。パソコンの画面で、竹でできた壁のない校舎を見て、「すごく楽しそう。自分のためにある学校だ」。運命的な出会いでした。

グリーンスクール(露木志奈さん提供)

――グリーンスクールで得たものを教えてください。

コスメに関する研究のほか、2018年にポーランドであったCOP24(第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議)に参加しました。そこで、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんにも会いました。

2018年のCOP24でグレタ・トゥンベリさん(中央)と並ぶ露木志奈さん(左から2人目、本人提供)

私みたいに休学して何かをしている人って、周りからは変な目で見られるかもしれません。それでもやろうと思えたのは、同世代で活動している子たちに刺激を受けたからです。グレタさんだけでなく、グリーンスクールの中でも出会いはありました。プラスチック製の袋をなくす「バイバイ・プラスチックバッグ」という活動を始めて、バリ島の法律を変えてしまった姉妹がいたんです。こうした出会いを通じて、若くても活動できる、大人になるまで待たなくていいんだと気づきました。

自分にしかできない話を

――大学を休学して講演活動を始めた経緯を教えてください。

私は環境問題のなかでも気候変動に一番注目していて、SDGsのどの目標にも関わってくるのが13番目の気候変動対策だと思っています。気候が悪化すると食糧や水が不足し、資源が手に入らなくなり、戦争が起きて平和が失われるかもしれないからです。

自分の今後を考えたとき、学ぶことより行動することが必要だと思いました。それで講演活動をするために休学しました。大学は待ってくれるけど、気候変動は待ってくれないからです。

気候変動は原因をつくる人と影響を受ける人との間で時差があり、貧困層の人たちは二酸化炭素をほとんど出していないのに、温暖化の影響を受けやすいんです。あすのご飯にも困っている人がいる一方で、自分には家があって食べ物があり、活動できる環境が整っている。「できる人がやるべきだ」と思いました。

最初は、教員のコミュニティーを運営する会社の方に、講演させてもらえそうな学校の教員の方を紹介してもらいました。スライドが1枚もできていなかったのに、つないでもらった先生に「人生を変えるプレゼンをするので私を講師として呼んでください!」と勢いでお願いして、札幌の学校での講演が実現しました。そのうちにメディアや口コミで私の活動を知った先生から、声をかけてもらえるようになりました。

露木志奈さん

――ネットでの動画配信といった手もあると思いますが、なぜ学校での講演を?

同世代に自分の体験を伝えたいからです。私が大切にしているのは、なぜ自分がやらなきゃいけないかということ。だから、自分にしかできない話をしたいと思っています。聞く側にとっても、大人より年齢が近い私のほうが、話を受け入れやすいんです。

また、学校を選んだのは、いままで環境について知る機会がなかった人を巻き込み、ステップアップしてほしいから。学校外で環境の話をしても関心のある人しか集まりませんが、学校での講演なら関心のない人にも話を聞いてもらえます。いま学校現場ではSDGsが入り始め、「探求」の授業もあり、キャリア教育にも力を入れている。私の話はすべてをカバーしているから、呼んでもらえるようになったのかなと思います。

一人ひとりの力信じて

――講演ではどんなことを話すのですか。

講演は自分が学んできたことの発表会だと思っています。話すのはグリーンスクールでの学びやボルネオ島で見たパーム油の生産地の話、COPでの体験、自分が世界で見た地球温暖化の現状などです。

一番力を入れるのは、なぜ一人ひとりの行動が大切か、です。世の中は政治家や大企業が動かしていると思われがちですが、市民、消費者がいなければ成り立ちません。その立場を生かせれば世の中は変わっていく、と話しています。

自分がちょっと何かをしただけじゃ変わらないと言う人もいますが、それが本当なら気候変動の問題は存在しないはず。誰か一人が原因をつくったのではなく、「ちょっと」が積み重なって大きな結果になったのです。一人ひとりには力があり、だからこそ行動していくべきです。もちろん社会のシステムも同時に変わっていく必要はありますけど。

露木志奈さん

――講演の反響はどうですか。

終わった後に、生徒からインスタグラムのダイレクトメッセージをもらうことがありますが、「新しい刺激をもらえた」「給食の後に飽きずに話を聞けたのは初めてです」などと言われることがあります。

個人で活動を始めた子も出てきています。たとえば小学5年生の子が、給食の牛乳のプラスチックストローを変えたいと思い、学校に生えている笹の茎でクラス全員分のマイストローをつくったそうです。牛乳パックの紙を使って再生紙をつくった小学生や、オンラインイベントを始めた高校生もいます。講演を聞いた100人のうち1人や2人でも刺激を受けて、行動したいという人が増えればと思っています。

――一人ひとりができるアクションとは何でしょうか。

簡単なのは、契約する電力会社を再生可能エネルギーの会社に変えること。家庭から出る二酸化炭素の半分近くは電気によると言われ、再エネに変えれば生活はそのままで環境に配慮できます。それからリデュース、リユース、リサイクルという順番で消費行動を見直すこと。つまり、いま持っているものを大切にして、ごみを減らし、再利用できるものはしていくことです。

アクションの前提として、まずは自分が安定することも重要です。環境のために行動するには、目の前にいない人や動物、自然を思いやる気持ちが必要ですが、自分が不安定だとそれは難しいと思います。環境にやさしいものを一つ買って満足するのではなく、再エネを使う、ペットボトルを買わない、お肉を減らすといった継続的なアクションが大切です。

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