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プラスチックごみ、リサイクル率が今後のカギ 循環型経済に企業努力が不可欠 ビジネスパーソンのためのSDGs講座【14】

プラスチックごみ、リサイクル率が今後のカギ 循環型経済に企業努力が不可欠 ビジネスパーソンのためのSDGs講座【14】
横田アソシエイツ代表取締役/横田浩一

横田浩一(よこた・こういち)
慶応義塾大大学院特任教授。一般社団法人アンカー代表理事。企業のブランディング、マーケティング、SDGsなどのコンサルタントを務め、地方創生や高校のSDGs教育にも携わる。岩手県釜石市地方創生アドバイザー、セブン銀行SDGsアドバイザー。共著に「SDGsの本質」「ソーシャルインパクト」など多数。

ゴミを簡単に捨てられない時代がもうすぐ来る。2017年から中国がプラスチックなどのゴミの輸入を段階的に禁止し、東南アジア諸国もそれに追随しているからだ。現状では、国内で焼却か埋め立てという選択になるが、国内でゴミを焼却するとCO₂が排出される。「50年にカーボンゼロ」を標榜(ひょうぼう)した日本は焼却ゴミは増やしたくない。一方で、国内の最終処分場もあと21.4 年で満杯になるという推計もある。こういった状況下において企業はどう対応していかなければならないのか。現状と課題について、産業廃棄物処理会社「ナカダイ」(東京都品川区)代表で、企業の環境ビジネスのコンサルティングを行っている「モノファクトリー」代表でもある中台澄之さんに聞いた。

中国に次いで東南アジアも受け入れ停止

最近、スーパーやコンビニのレジ袋有料化でゴミや環境に対する意識が高まった人も多いだろう。

その一方で、ゴミは無料で捨てることができると思っている人が多いのではないか。
しかし、いまのようにゴミを無料で、かつ自由に捨てられなくなる時代がもうすぐそこまで来ている。

資源ゴミといわれるプラスチックなどは、主に仕分けコストの問題で、まとめてプレスして中国に輸出、そこで仕分けて一部リサイクルすることが主流だった。しかし2017から、年中国がプラスチックや古紙など資源ゴミの輸入を段階的に禁止。受け皿となったタイ、マレーシア、ベトナムなどの東南アジア諸国もゴミの輸入を減らすか禁止をするなど追随している。輸入が禁止されて以降、ゴミは国内に滞留していて、一部はリサイクルされているものの、大部分は焼却処分されている。プラスチックは紙に比べて焼却すると排出されるCO₂が多い。

このような状況において、ゴミの処分もリサイクルを目的とするか、焼却処分を目的とするかで、商品や製品の設計が変わるという。例えば、家庭などできれいに洗って出される同質のプラスチックは、大量に集めることでリサイクルができる。

しかし、会社など自宅の外で食べた弁当箱などは、不純物が多いためリサイクルができず、衛生上の問題もあるので焼却処分されるものが多い。焼却処分されるのであれば最初から紙のほうがプラスチックに比べてCO₂の排出量が少ないということになる。
このように最初からリサイクルを目指すのか、焼却処分を前提としてCO₂排出量を減らすのかなど「捨て方のデザイン」が必要だと、中台さんは指摘する。

中台澄之さん(撮影・筆者)

日本と欧州、リサイクルの基準に差

そもそもゴミに対する取り組みはこれまでどうなっているのだろうか。主な取り組みはリサイクルを増やそうという動きだ。

2001年に循環型社会形成推進基本法が施行、ゴミを減らすために3Rが標榜された。3Rとは、Reduce(リデュース)=発生の抑制、Reuse(リユース)=再利用、Recycle(リサイクル)の三つだ。

リサイクルはマテリアルリサイクル(再生利用)とサーマルリサイクル(熱源として利用)の二つがある。リサイクルできないものが焼却か埋め立てになる。

サーマルリサイクルは別名「エネルギーリカバリー」と呼ばれ、資源の少ない日本ではリサイクルに含めるが、欧州などでは現在、リサイクルとしてカウントしていない。焼却の技術にすぐれた日本では、廃プラ処理において熱エネルギーに変換してリサイクルと説明してきたが、欧州などではこれはリサイクルにカウントされないのだ。

プラスチック埋め立ては残り21.4年

国内でゴミを焼却するとCO₂が排出される。「2050年にカーボンゼロ」を標榜した日本において、焼却ゴミは増やせないし、減らさないといけない。焼却施設の維持、更新にも大きな投資が必要だ。また国内の最終処分場もあと21.4年(2019年度末現在、環境省)で満杯になる。

それ以降、新たな埋め立て地を見つけることは難しい。埋め立てについてはゴミを減らす努力をするとともに、リサイクルに取り組める対象を増やすことも重要だ。

例えば冷蔵庫、エアコンなどは特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)の対象でリサイクルしているが、対象外の小型家電など現状リサイクルが義務づけられていないものにどう対処していくかも大きな課題だ。

大崎町と上勝町はリサイクル先進自治体

このような環境において、リサイクルの先進的な取り組みをする自治体が注目されている。ジャパンSDGsアワードを受賞した鹿児島県大崎町(人口1万2500人)ではゴミを27分類、徳島県上勝町(人口1500人)では45分類することで、両町とも80%を超えるリサイクル率を達成している。いずれも焼却施設のない町で、ゴミの量を減らし埋め立て地を長年持たせるための施策であり、住民の協力を得ることが大きなポイントだ。

もう少し規模の大きな自治体として、神奈川県鎌倉市(人口17万2800人)のリサイクル率は50%を超え、人口10万人以上の市としては全国1位である。ゴミの有料化により総量も減っている。このように住民の協力や政策によってゴミを減らし、リサイクル率を向上させることはできるのだ。

企業が自社のカーボン削減に基準設定

産業廃棄物処理業のナカダイでは企業から持ち込まれるゴミのうち、リユース3%、マテリアルリサイクル60%、サーマルリサイクル30%、焼却後リサイクル6%とリユース・リサイクル率99%を実現している。これを実現するポイントは、企業がゴミを出すときに10~15種に分類してもらうことだという。ゴミ箱というなんでも混ぜて捨てることができる存在が良くない。分ければ資源、混ぜればゴミだ。

企業の取り組みは、まずリサイクルに取り組むということから、サーキュラーエコノミー(循環型経済、注1)という次のステージへ移っている。これを達成するための理想は、ものを作った会社、売った会社が、自ら使用済みの製品を回収することだ。メーカーはどのような素材を使って作ったか分かっているし、どのように組み立てたかも知っている。そこが回収してリサイクルすることが循環型経済を実現することになる。

(注1)サーキュラーエコノミー(Circular Economy)=循環型経済。いままで廃棄されていた製品や原材料を資源として捉え、廃棄物を極力少なくして資源を循環させる経済の仕組み。リサイクルや少ない資源などで製品開発をし、シェアなどを通じて資源循環と経済の両立を目指す。

カーボンニュートラルに向け、サイエンス・ベースド・ターゲット(SBT、注2)というグローバルな削減目標の指標がある。日本の企業も認定数では世界2位だが、特に欧米系企業の動きは速く、目標をコミットしていたり、将来加入することを意識したりしている企業も多い。

(注2)SBT(Science Based Targets)=パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した、5~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のこと。
世界資源研究所などが構成機関となって設立・運営している非営利団体We Mean Business (WMB)の取り組み。

SBTが削減対象とする排出量は、企業の関与度の違いによって三つのスコープと呼ばれるカテゴリーに分かれていて、スコープ1は工場で生産する場合の燃料の燃焼などによる自社の排出、スコープ2は他社から調達した電気などの使用に伴う間接排出、スコープ3は原材料や輸送、通勤、製品の使用、廃棄などに伴う間接排出が含まれる。

SBTが削減対象とする排出量。スコープ1~3のすべてがサプライチェーン排出量となる(環境省ホームページから)

SBTのスコープ3に製品の廃棄も含まれたことによって、仮に製品の寿命が5年とすると、例えば2030年までの目標を達成するためには、あと数年で回収などの体制を整えないと間に合わない。5~15年先の目標を掲げるSBTにコミットしている企業は時間がないと焦っているという。そしてSBTの基準では、サーマルリサイクルは認められておらず、マテリアルリサイクルしかない。例えばプラスチックであれば、ケミカルリサイクルとなり、プラントが必要になるが、その建設も進んでいる。

一番の課題は衛生面で問題がなく、同質の良い廃プラスチックをどのようにして回収するかだ。そのシステム構築が求められている。このようにハードルはいくつもあるが、かなりのスピードでこの取り組みは進んでいる。

中台さんによると、欧米の企業と比較して、多くの日本企業の動きは鈍い。「社内で勉強してから」「SBTは知識としては知っている」という担当者が多いという。しかし、自社の製品を回収する仕組みを早く構築したところが、ESG評価やブランドを通じて企業価値を向上させる。「これからはどれだけ売ったかではなく、どれだけ回収したかを企業が競う時代になる」と中台さんは指摘する。

多摩美術大学TUB共創プロジェクト「すてるデザイン」勉強会で。大学生や企業人が交ざって議論(撮影・筆者)

循環型経済の構築めざし、産学で活動

多摩美術大学TUB(東京ミッドタウン内にあるデザインやアートと社会をつなぐ場)は、企業や中台さんと共創プロジェクト「すてるデザイン」を立ち上げた。デザインの力を通じて循環型経済を構築することが目的だ。筆者も大学生と勉強会に参加したが、若い世代の高い環境意識に刺激を受け、企業も早期にそのような社会をつくることが大切だという意見が多かった。

ゴミは無料で捨て放題という時代は終わった。新たな時代における企業の社会的責任についての取り組みが早急に求められている。

<共創プロジェクト「すてるデザイン」のコンセプト>

ナカダイ駒形工場(前橋市、ナカダイ提供)
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