SDGs ACTION!

気候危機ストップはCOP26だけじゃない 小さな一歩からも変革を チェンジメーカーズLIVE採録

気候危機ストップはCOP26だけじゃない 小さな一歩からも変革を チェンジメーカーズLIVE採録
「SDGs ACTION! チェンジメーカーズLIVE 気候危機、私たちができること」に登壇した(左上から時計回りで)髙橋大輝さん、佐座槙苗さん、露木志奈さん、山岸尚之さん

朝日新聞SDGs ACTION!は、英国のグラスゴーで開催中の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)にあわせて、10月23日にウェビナー「SDGs ACTION! チェンジメーカーズLIVE 気候危機、私たちができること」を開催した。気候変動問題に取り組む20代のキーパーソン3人が、それぞれの経験もふまえ、小さな一歩を踏み出すことの大切さを訴えた。ウェビナーの様子を紹介する。下記のリンクからアーカイブ動画も見られる。(編集部・竹山栄太郎)

国内外での活動経験を紹介

登壇者は、環境活動家の露木志奈(つゆき・しいな)さん(20)、東京大学農学部獣医学専修3年生の髙橋大輝(たかはし・ともき)さん(22)、一般社団法人SWiTCH代表理事の佐座槙苗(さざ・まな)さん(26)。世界自然保護基金(WWF)ジャパン気候エネルギー・海洋水産室長の山岸尚之さんも、コメンテーターとして加わった。

自己紹介で、露木さんは、高校時代を「世界一エコな学校」と言われるインドネシア・バリ島の「グリーンスクール・バリ」で過ごした経験や、大学を休学して全国の学校でおこなっている環境講演について話した。

art_00205_本文_01
自己紹介でグリーンスクール・バリの校舎の写真を見せる露木志奈さん(右上)

髙橋さんは、2020年にみずほフィナンシャルグループの株主総会に参加して質問に立ち、石炭火力発電に関する方針がパリ協定と整合しているのかを質問したことや、大学内での活動について語った。

art_00205_本文_02
自己紹介する髙橋大輝さん(右上)

佐座さんは、20年にCOP26が延期されたことを問題視した各国の若者たちが立ち上げた「Mock COP26」の運営に携わった経験や、世界の気温上昇を1.5度に抑えるという「パリ協定」の目標達成を呼びかける若者のイベント「渋谷COP2021」(開催中)の取り組みを紹介した。

art_00205_本文_03
自己紹介で「Mock COP26」の活動について語る佐座槙苗さん(右上)

3人の自己紹介に続き、山岸さんがCOP26のポイントについて解説した。山岸さんは「気候危機はほかの社会課題をさらに悪化させるものであり、社会的、生物的に弱い立場にある人ほど影響を受けやすい。圧倒的な不平等が内在しており、国際協力が欠かせない」と述べた。そして、「COP26 の大事な役割は、気温上昇を1.5度に抑えるために各国で対策を強化しないといけないという国際的メッセージを出せるかと、パリ協定で合意できていない項目を詰めることだ」と説明した。

art_00205_本文_04
COP26のポイントを解説する山岸尚之さん(右上)

「自分の問題」と意識を

ウェビナー後半はトークセッション。最初のテーマとして、地球環境や温暖化に対する認識をあらためて話し合った。

露木さんは「手遅れなんじゃないかと思うぐらいギリギリのタイミング。誰か一人が原因をつくっているわけではなく、それぞれがちょっとずつ加担している。そこに気づき、行動してもらうことが大切だと思います」と指摘した。

髙橋さんは「緊急性が高く、迅速に対策をおこなった方がいい。エネルギーや政治、経済、環境など広い範囲に影響し、複雑であると同時に、自分なりのアプローチを見つけていける可能性もある」とし、「いろいろな立場の人とねばり強く対話することが求められているかなと考えています」と語った。

art_00205_本文_05
髙橋大輝さん

佐座さんは「日本では気候変動を自分ごととしていない人が多く、一緒にやっていこうというコミットメントが弱いと感じる。気候変動が加速したら、東京23区も浸水するというデータもある。自分に近い問題だという認識が大半の人にないかなと思います」と話した。

3人の意見を受けて、山岸さんは「環境NGOは危機を訴えるが、あきらめる方向に促すのではなく、『厳しいけれど何とかできるはずだ』ということをもっと言わなければいけないなと感じました」と話した。

art_00205_本文_06
ウェビナーで語り合う登壇者ら

失敗恐れず挑戦

2番目のテーマは、最初にアクションするときの勇気について。

露木さんは「行動を一人でできる人はなかなかおらず、大事なのは仲間づくり。いまはオンラインで完結するイベントやコミュニティーが増えており、参加してみたらいいと思います」と話した。

髙橋さんは、自分の服にメッセージを貼り付けるといったことから始めたといい、「身近な、小さなことから始めるのがいい。自分のなかでの行動の敷居が低くなるし、社会との接点になり、輪も広がっていく。失敗するかもしれないけれど、挑戦を重ねていくスタンスが大事かなと思っています」と語った。

佐座さんは、カナダで難民支援ボランティアをした経験を振り返りながら、「小さな活動をすることで、自分は何が好きで何が得意か、仲間がどこにいるのかがわかってくる。身近な問題から自分で取り組んでみよう、でいいと思います」と述べた。

art_00205_本文_07
佐座槙苗さん

ポジティブな雰囲気を

それぞれの活動をするうえで、刺激を受けた人物についても語ってもらった。露木さんは、グリーンスクールで出会った同世代の姉妹が、ビニール袋をなくす「バイバイ・プラスチックバッグ」という活動をおこない、バリ島の法律を変えたというエピソードを紹介した。

山岸さんは、「気候変動はいろいろな人の正義がぶつかり合う問題で、もの申すのはつらいときがある」としたうえで、「WWFに入ったときの上司に、『くじけそうなときもあるけど、やはり私たちが言わないといけない』と言われたことが印象に残っており、環境NGOとして果たすべき役割を思い出させてくれます」と語った。

art_00205_本文_08
山岸尚之さん

ウェビナーの開催日は衆院選の約1週間前。日本の政治への期待について、佐座さんは「気候変動は、みんなの生きる権利のためにすべての党で話し合わないといけない問題だ」と訴え、「日本人は否定的な意見を言われると、まるで自分が否定されているように思う人が多いと思う。ポジティブに、一緒にやろうという雰囲気を出してほしい」と話した。山岸さんは「衆院選で気候変動がこんなに取り上げられないのは、大人の怠慢だと思っています」と指摘した。

art_00205_本文_09
露木志奈さん

最後に視聴者へのメッセージとして、髙橋さんは「アクションの前に、自分の健康や体調を整えることが大事です」。佐座さんは「COP26のニュースを見ながら、日本は何をすればいいかを考えてほしい」と話した。山岸さんは「ユースにしか出せないメッセージがあります。ユーモアとウィットを持って活動してほしい」と次世代にエールを送り、露木さんは「仲間はここにいる。一人ではないと思えれば、行動しやすくなる。みんなと一緒に挑戦していきたいと思っています」と述べた。

この記事をシェア
関連記事