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COPとは? パリ協定との関係って? 歴史やポイントをわかりやすく解説

COPとは? パリ協定との関係って? 歴史やポイントをわかりやすく解説
COP26のウェブサイト(https://ukcop26.org/)

国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26、コップ26)が2021年10~11月、英国のグラスゴーで開かれ、世界的に大きなニュースになりました。「でも、そもそもCOPがどんな会議なのか、よくわからない」という人向けに、COPの歴史や今回のポイントをまとめました。(編集部・竹山栄太郎)

(2021.12.2更新)COP26が終了したため、結果を盛り込んで更新しました。

年1回開かれる締約国会議

COP(コップ)は締約国会議(Conference of the Parties)のこと。2021年秋に開かれたCOPは、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC: United Nations Framework Convention on Climate Change)の26回目の会議なので、COP26と呼ぶ。条約の最高意思決定機関と位置づけられ、すべての条約締約国(21年11月現在197カ国・地域)が参加して温暖化対策の国際ルールを話し合う大規模な国際会議だ。

条約の目的は、大気中の温室効果ガス濃度を安定させること。1992年に採択され、同じ年にブラジル・リオデジャネイロで開かれた国連開発環境会議(地球サミット)で署名が始まった。1回目のCOPは95年にドイツ・ベルリンで開催。新型コロナウイルス流行の影響で延期された2020年を除き、年に1回開かれている。COP26の日程は21年10月31日~11月13日(予定では11月12日までだったが、1日延長された)。ちなみに生物多様性条約にも締約国会議があり、COP15の第1部が10月に中国・昆明で開かれた。第2部は22年春に予定されている。

(注)温室効果ガス(Greenhouse gas, GHG) 大気や海水の温度を上昇させる効果をもつ気体。二酸化炭素(CO₂)、メタン(CH₄)、一酸化二窒素(N₂O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF₆)、三フッ化窒素(NF₃)の計7種が定義されている。

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編集部作成

京都議定書・パリ協定とCOP

COPの歴史のなかで日本人にもなじみ深いのが、京都で開催された1997年のCOP3だ。2020年までの温暖化対策の国際ルールとなる「京都議定書」が採択された。

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COP3の本会議で「京都議定書」を採択し、全体委員会のエストラーダ議長(左)と握手を交わす大木浩・本会議議長=1997年12月11日、京都市(撮影・朝日新聞)

京都議定書では、08~12年の「第1約束期間」に先進国全体で1990年比5%削減を達成する目標を定めたほか、他国の排出量削減を支援することで自国の削減分にあてる「クリーン開発メカニズム」、先進国間で排出枠を売買する「排出量取引」などの「京都メカニズム」を導入することも決まった。

日本は第1約束期間に義務づけられた6%削減を達成したが、13~20年の「第2約束期間」は、先進国のみの削減義務づけでは不十分だとして参加しなかった。京都議定書は、米国が01年に離脱し、排出量が多い中国やインドが途上国の扱いのため削減義務を負わないといった点でも限界があり、世界全体で温暖化対策を進めるための新たな枠組みが必要となった。

その新たな枠組みが「パリ協定」だ。15年にフランス・パリで開かれたCOP21で採択された。20年以降の温暖化対策として国際ルールを定め、「世界の気温上昇を産業革命前と比べて2度より十分低く保ち、1.5度に抑える努力をする」ことを目標に掲げた。

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COP21でパリ協定の採択を宣言した議長のファビウス仏外相(中央、当時)=2015年12月12日、パリ(撮影・朝日新聞)

京都議定書とパリ協定の違いの一つは、京都議定書が先進国だけを削減義務の対象としたのに対し、パリ協定はすべての国と地域を対象としたことだ。また、京都議定書の目標には法的拘束力があるのに対し、パリ協定では各国が「NDC」(Nationally Determined Contribution=国が決定する貢献)と呼ばれる削減目標を自ら決定し、提出する点も異なる。NDCは5年ごとに提出・更新することが義務づけられている。

近年のCOPでは、政府関係者だけでなく、各国の環境NGOや企業など非政府主体の参加も目立っている。18年にポーランド・カトビツェで開かれたCOP24では、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(当時15歳)が、スピーチで「あなた方は、自分の子どもを何よりも愛していると言いながら、その目の前で子どもたちの未来を奪っているのです」と温暖化対策の強化を訴えたことで注目された。

COP26は20年の開催が予定されていたが、新型コロナウイルスの流行で1年延期された。その間の21年8月には、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が新しい報告書を発表。地球が人間の影響で温暖化していることに「疑う余地がない」と初めて断言し、取り組みの加速を求めた。

すべての国が参加する温暖化対策の国際ルールは動き出したものの、気候危機を食い止められるかは不透明だ。IPCCが18年に発表した「1.5度特別報告書」によると、世界の気温上昇を1.5度に抑えるには、温室効果ガス排出量を30年までに10年比で45%削減し、50年前後に実質ゼロにする必要があるという。

一方、国連環境計画(UNEP)がCOP26開幕前に発表した「排出ギャップ報告書」によると、9月末までに各国が提出した30年までの削減目標が実現しても、今世紀末に産業革命前から気温が2.7度上がると予測された。そのため、COP26では、各国が対策の上積みに合意できるかが焦点の一つとなった。

COP26の結果は

COP26は11月13日、「グラスゴー気候合意」を採択して閉幕した。いちばんのポイントは、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える努力を追求する、と宣言したことだ。「1.5度」はパリ協定では努力目標という位置づけだったが、今回の合意で世界の目標は「2度」から「1.5度」に事実上、強化された。

また、石炭火力発電の段階的削減や、化石燃料補助金の廃止も初めて明記された。石炭火力発電をめぐっては、当初の文書案では「段階的廃止」との表現だったが、インドなどの反対で「段階的削減」へと後退した。ただ、先進国と途上国で思惑がずれ、とかくまとまらない傾向があるCOPで1.5度への傾斜が決まったのは、それだけ世界の気候変動への危機感が強まっている表れだと言えそうだ。

COP26で決まった主な内容


・気温上昇を1.5度に抑える努力を追求する
・各国は必要に応じて2022年末までに30年の目標を見直す
・石炭火力発電を段階的に削減する
・途上国への資金支援を倍増させ、年間1000億ドルの目標を達成する
・パリ協定第6条をめぐり排出削減量を取引する仕組みで合意し、パリルールブック(実施指針)が完成
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COP26の合意文書が採択され、拍手を受ける英国のシャルマ議長(左から2人目)=2021年11月13日、英グラスゴー(撮影・朝日新聞)

このほか、期間中にさまざまな枠組みで「1.5度目標」の達成に向けた宣言がおこなわれた。排出量世界3位のインドは、2070年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にし、30年には再生可能エネルギーの比率を50%にすると表明。世界1、2位の中国と米国は、温室効果が高いメタンの排出削減での協力や、25年に35年の排出削減目標を国連に提出することなどを盛り込んだ共同宣言を発表した。

また、米国と欧州連合の主導で「グローバル・メタン・プレッジ」が発足し、日本を含む100カ国超が、メタンの排出量を2030年までに20年比で30%削減することで合意した。30年までに森林破壊をなくすという宣言にも100カ国超が参加した。

英国など38カ国は、2040年までに、世界市場での新車販売を電気自動車など走行中に温室効果ガスを出さない「ゼロエミッション車」にすることも宣言したが、日本政府と日系自動車メーカーは署名を見送った。

日本の対応は? 石炭火力に厳しい視線

日本では2020年10月、当時の菅義偉首相が50年のカーボンニュートラルを表明。さらに21年4月には、30年度に13年度比で46%削減する目標を打ち出した。一方、温室効果ガスの大きな排出源である石炭火力発電所をめぐって、10月に閣議決定した新しいエネルギー基本計画では、30年度の電源に占める割合を「19%」としている。COP26の議長国の英国は先進国に30年まで、途上国に40年までの石炭火力全廃を求めており、隔たりは大きい。

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COP26の会場の外では、NGOがピカチュウの着ぐるみを着て、脱石炭に後ろ向きな日本に対する抗議をおこなった=11月4日、英グラスゴー(撮影・朝日新聞)

11月1~2日にかけておこなわれた首脳級会合で、岸田文雄首相は日本が最大100億ドル(約1.1兆円)の追加の資金支援をおこなう考えを示す一方、アジア地域への支援策として火力発電所を活用する方針も表明した。これを受けて、環境NGOの国際ネットワーク「気候行動ネットワーク」(CAN)は2日、温暖化対策に後ろ向きな国に贈る不名誉な賞「化石賞」に、前回のCOP25に続き日本を選んだ。

【もっと知りたい人のために】

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