ファーストリテイリング、30年度に素材の約50%を低環境負荷型に 「衣料で産業革命起こす」

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、2030年度までに全使用素材の約50%をリサイクル素材などに切り替える。2021年12月にまとめたサステナビリティ(持続可能性)の目標とアクションプランに盛り込んだ。環境や人、社会に配慮した服を提供することで、持続可能性と事業の成長の両立を図るという。柳井康治・取締役グループ上席執行役員は「衣料の分野における新しい産業革命を起こしたい」と述べた。(編集部・竹山栄太郎)
温室効果ガス、30年度に90%削減
ファーストリテイリングは12月2日、「LifeWear=サステナビリティ」と題したメディア向け説明会を東京都内で開いた。「LifeWear」(ライフウェア)は同社が掲げてきた概念で、「あらゆる人の生活を豊かにする『究極の普段着』」と定義されている。今回、この考え方に環境や人、社会の観点を加えた。柳井氏は「LifeWearは新しい産業として、いままでにないファッションや事業モデルのあり方を提示し、持続可能な社会に貢献していくものにしたい」と語った。



環境面では、まず2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)実現に向けて、30年度までに店舗やオフィスなど自社に関わる領域で、排出量を19年度比90%削減する。排出量の90%を占める原材料生産や縫製といったサプライチェーンでも、19年度比20%削減をめざす。また、自社の使用電力は30年度までに再生可能エネルギー100%に切り替える。店舗の省エネルギー化を進めるほか、エネルギー効率を高めた新タイプの店舗も23年中に出店する。
排出削減のためには商品の原材料から変える必要があるとして、30年度までに全使用素材の約50%(重量ベース)をリサイクル素材などに切り替える。リサイクル素材の導入は19年から段階的に始めており、ユニクロではすでにポリエステル素材の約15%をペットボトルから再生したものに変更済み。今後、レーヨンやナイロンといった化学繊維から環境負荷の低い素材にしていくという。

環境目標のもう一つの柱が廃棄物削減だ。19年に「不要な使い捨てプラスチックの撤廃」を掲げ、買い物袋を段階的に紙製に切り替えたり、リサイクル促進のために梱包材の素材を統一したりしてきた。リデュース(削減)、リプレース(切り替え)、リユース(再利用)、リサイクルの4Rに力を入れ、早期の「廃棄物ゼロ」をめざすという。
加えて、今後は服を販売した後の取り組みに力を入れていく。使い終わった服の回収場所を増やし、新しい服や服以外の資材へと循環させる仕組みをつくるため、「ヒートテック」「エアリズム」の共同開発で関係が深い素材メーカーの東レと、専用の研究施設を2022年に開く。自動車や建築・資材のメーカーとの協業も検討しているという。
柳井氏は「これまではつくって売るところまでを評価されることが多かったが、これからは服を販売したあと、ブランドがどういう責任を果たそうとしているのかまで評価される時代になる。真摯(しんし)に取り組んでいく」と述べた。

人権は「最重要課題の一つ」
一方、欧米諸国や投資家からの注目度が高まる人権問題についても、配慮する姿勢を強調した。新田幸弘・グループ執行役員は「すべてのプロセスで人権に配慮され、お客さまに安心してお買い物いただけるサプライチェーンを実現するために、これまでも人権侵害を絶対に容認しない方針を明確にし、行動してきた」と力を込めた。取引先工場に国際労働機関(ILO)の基準に沿った「コード・オブ・コンダクト」(行動規範)の遵守を求め、第三者機関による人権侵害や労働環境の監査をおこなっており、児童労働や強制労働があるとわかった場合には取引や調達停止の方針をとっている、と説明した。
ファーストリテイリングは、米当局から中国・新疆ウイグル自治区の強制労働との関連を疑われて2021年1月にユニクロの綿シャツの輸入を差し止められたことが明らかになっており、これまでも「サプライチェーンで強制労働などの深刻な人権侵害がないことを確認している」などと説明に追われてきた。12月の説明会でも、新田氏はあらためて「原材料までさかのぼり、ありとあらゆる地域における人権侵害、環境問題がないと第三者認証などを通じて確認しており、問題は起こっていない」と述べた。
今後も、サプライチェーンの透明性向上をめざす。17年以降、主要な縫製工場や素材工場のリストを順次開示してきたが、22年3月をめどに、継続取引のあるすべての縫製工場についての情報公開を達成する。監査の対象も広げ、サプライチェーン全体のトレーサビリティー(追跡可能性)を確立するという。

女性管理職を半数に
説明会では、「事業モデルを下支えするもの」(柳井氏)と位置づける多様性の尊重と社会貢献活動についても、これまでの取り組みと今後の目標が紹介された。
多様性に関しては、19年に社長室に「ダイバーシティ推進チーム」を立ち上げ、ジェンダー平等や障害者雇用、LGBTQ+への理解促進などに取り組んでいるという。時短勤務やフレックスタイムの制度を整えたことにより、女性管理職比率は14年の19%に対して20年には39.2%に高まっており、30年度までに50%に引き上げることをめざす。
社会貢献活動では、難民や災害被災者への衣料支援を20年度の約540万着から25年度には1000万着に増やす。また、世界の全店舗が地域貢献活動に参加する方針も明らかにした。

説明会の映像やプレゼンテーション資料はファーストリテイリングのウェブサイトで公開されている。
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