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生徒も社員も相互のまなび 「Mirai School」開校―住友商事「100SEED」の挑戦 Vol.2

生徒も社員も相互のまなび 「Mirai School」開校―住友商事「100SEED」の挑戦 Vol.2
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創立100周年を迎えた2019年、住友商事は次の100年を担う人づくり・教育支援に社員自らが参加する社会貢献活動プログラム「100SEED(ワンハンドレッドシード)」*をスタートした。日本でのプロジェクトのひとつ「Mirai School(ミライ スクール)」では、社員が高校生に向けて自身の仕事観や人生を語る。生徒たちにとっては社会で働くとはどういうことかを知る、社員にとってはこれまでのキャリアを振り返り、今後の目標を再確認する貴重な機会だ。
*SEEDはSumitomo Corporation Group、Emergent(創発的)、Evolutional(進化的)、Deed(アクション)の略語。

1人の社会人として、仕事と社会をどう語るか

進学やその先の進路について悩める高校生たちを前に、あなたの仕事と人生の選択、転機について話してください。そう言われて自信を持って話せる人はそう多くないだろう。住友商事リスクマネジメント第五部の工藤孝明さんにとっても、それは同様だった。

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「自分が高校生だった頃は、商社って何の仕事をしているのか、どんな人たちが働いているか想像もできませんでした。生徒の皆さんもきっとそうだと思ったので、どうすれば関心を持ってもらえるか、どうしたら少しでも役に立つ話ができるか、とても悩みましたね。ある意味、普段の仕事より難しかったかもしれません(笑)」

2020年9月にプロジェクトが本格的にスタートして以来、これまでに111人の社員講師が計34の高校で約5,500人の生徒たちに自らを語ってきた。大まかな話のアウトラインは100SEED事務局が用意しているものの、そこで何をどう語るかは各人に任されている。

高校、大学時代スポーツに打ち込んだ工藤さんは、住友商事に入社し金属事業部門の海外薄板第一部という耳慣れない部署に配属された。「初めは薄板と聞いても全然イメージできませんでした。でもその中で必死にもがいているうちに、自分のやりたいことが見つかってきたんです。小さな成功が重なると、次の目標も生まれます。今となっては予想もしなかった分野のビジネスに携わったことは、自分にとってプラスだったと思います」

現在は、リスクマネジメント第五部に異動し、住友商事グループ内の食品スーパー「サミット」や「フェイラージャパン」などの事業会社をリスク管理の側面からサポートする業務にあたっている。Mirai Schoolの講師が決まってからは、業務のすき間時間を見つけて原稿を見直し、時間を計りながら話す練習を重ねた。

芯を持つこと、一方で柔軟であること、そのバランスを取ること。試行錯誤の中で、工藤さんが見つけたテーマがそれだった。「最初から決めていたわけではありません。ただ自分のこれまでを振り返ってみると、そんなふうに生きてきたなと気付いたんです。やりたいことを持つのは大切ですが、そこに固執しすぎると手段が目的のようになってしまうことがあります。でももうひとつ上から俯瞰すると、違うルートをたどっても最終的に自分の一番やりたかったことに行き着くかもしれない。そんなことを話せたらと思いました」

自分の中に「芯」を持つことの難しさと大切さ

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授業当日、約80人の生徒と対面。アイスブレークで「将来、就きたい職業や仕事は決まっていますか?」と問いかける。(リスクマネジメント第五部 工藤孝明さん、軽金属事業部 宮地泰史さん/東京都・成城中学校・成城高等学校)

授業を進める中で工藤さんは、彼らの真剣さと関心の高さに驚かされたという。「僕らの高校時代にこういう機会はなかったので、彼らがどんなモチベーションで集まってくれたのか、本当のところはわかりません。もちろん保護者に言われたから来ただけ、という生徒もいたと思います。それでも、よく知らない会社員の話をとりあえず聞いてみようか、と思えるだけでもすごいですよね。終了後の質疑応答ではたくさんの質問があり、細かい部分まで注意深く聞いてくれていたことがわかりました」


中に1人、「工藤さんにとっての芯は何ですか」と質問した生徒がいる。芯を持ちつつ柔軟であるという、この日のテーマのことだ。「その時々で持つべき芯も変わるので明確にひとつを挙げることはできない、というようなことを答えてなんとか切り抜けました(笑)。決して嘘は言っていないんです。自分自身まだ探している途中というのが実感なので」。

終了後の生徒たちのアンケートを見ても、このやりとりが印象に残ったという意見は多い。「芯や目標を持ってチャレンジすることの大切さを知った」「自分なりの芯の部分を考えてみたい」「私が目指すカウンセラーになるうえで、欠かせないものを教えてもらった」。自分の言葉が届いたという実感は、工藤さんにとってもうれしいものだった。

高校生と本気で向きあう「Mirai School」

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社員講師はそれぞれ、山あり谷ありのキャリア人生を「人生グラフ」にまとめて説明する。落ち込んだ時こそ次なる飛躍のチャンスと知り、勇気づけられる生徒も多い。(鋼材事業部 丹治大佑さん/愛知高等学校)

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各パート最後のシェアタイムでは、生徒たちに感想や疑問などを発表してもらう。生徒たちの反応が得られる貴重な時間だ。(電力インフラ第一部 夏目友美さん、住友商事ケミカル 松田英明さん/埼玉県・浦和実業学園高等学校)

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授業終了後には、有志生徒を対象に座談会を実施。ざっくばらんな会話の中で、等身大の高校生としての悩みを打ち明けられることも。(自動車製造事業第二部 馬橋奏太さん、住友商事グローバルメタルズ 今安崇之さん/広島国際学院高等学校)

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工藤さんが出張授業をおこなった高校の生徒事後アンケートより

生徒たちに満足度を聞く設問では、「とても満足」と「満足」で合計100%というのはやや出来過ぎだとしても、これからの進路に変化はあったかという設問に対して「とても変化があった」「ある程度」で過半数に達するなど、少なくない影響を与えたようだ。

「中には勉強って本当に必要ですか?というような若者らしい質問もありました。ただ高校生の彼らにとって、保護者でも先生でもない『普通の大人』に意見を聞く機会は意外に貴重なのかもしれません。その点で少しはお役に立てたとしたら、参加して良かったと思います」

100年先の社会を変えていくきっかけに

100SEEDのプログラムリーダーを務める住友商事サステナビリティ推進部社会貢献チーム長の江草未由紀さんは、「Mirai Schoolの目的は、高校生たちに将来のキャリアを考えるきっかけを提供することです。当社社員の言葉にふれて『仕事』や『社会』の入り口を垣間見ることで、自分の関心や強みをどう生かしたらよいかを考え始めてもらえたらと思います」と話す。同時にこの取り組みは、社内にも良い影響を与えているという。講師を務めた社員の多くから聞かれるのが、初心にかえったという言葉だ。「自分自身を見つめ直すことで今後の成長につながれば、私たちにとっても大きな意義があります」

工藤さんも、この経験を通じて気付いたことがあるという。実は出張授業の準備中、ちょっとしたトラブルが起こった。原稿を途中まで進めたところで、書きかけのファイルが消えてしまったのだ。やむをえずまた初めから書くことにしたが、第二稿ができた後で最初の原稿が思わぬ場所から見つかった。「見比べてみると、どちらも同じことを書いていました。自分が伝えたいこと、大事にしたい価値は一貫しているんだなと、我ながら意外な発見でした」

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もともと工藤さんが100SEEDに関心を持ったのは、先に参加していた同期社員と所属部の上司に偶然、同じタイミングで勧められたことがきっかけだ。「社会貢献だ、ボランティアだと気負う必要はない、でも自分にとってすごくいいよと。そうか、いいならやってみようというぐらいの気持ちでした」。日々多くの仕事を抱え、責務に追われ、気付けば目の前の課題をこなすことで1日が終わる。社会人なら誰もが経験することだ。しかし工藤さんは、100SEEDに関わったことで自分の視野が広がったと感じる。これまでなら見過ごしていた教育関連のニュースにも目が止まるようになった。

「変化の速い時代に新しいものを生み出すには、普段の仕事を離れたこういう機会も必要だと思います。ただし義務として押し付けられても意味がありません。あくまで自分から『やりたい』という人が関わるべきものだと思いますが、『やりたい』人が社内にもっと増えるよう、僕もいろんな場所で『いい活動だよ』と伝えていきたいと思います」

100SEEDは、100年後の社会を見据えた活動だ。もしもこれがこの先100年続いた時、工藤さんたちの取り組みはどんな実を結んでいるだろう。「住友商事が日本の教育を変える、というような大袈裟なことではありません。僕らの話を聞いた高校生みんながそれで変わるわけでもないですが、その中の数人でも心に何かが残ったとしたら。そして彼らが大人になった時、同じように若い人に自分の経験を話してくれたら。波紋がつながり大きな波紋になるように、その輪が広がっていった時、未来の何かがきっと変わる。変わらないはずがないと思うんです」

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Mirai Schoolは、各地域の支社・支店とも連携し、全国各地の高校で開催している。(事業金融部 尾寅慎介さん、住友商事東北 押柄達也さん/秋田県立秋田高等学校)
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