SDGs ACTION!

味の素、「おいしい減塩」充実 うま味・だし活用で薄味回避

味の素、「おいしい減塩」充実 うま味・だし活用で薄味回避
「おいしい減塩」をうたう味の素の減塩製品
編集部

食品メーカーの味の素が、「うま味」とだしをきかせる「おいしい減塩」に力を入れている。関連製品の品ぞろえを増やし、レシピ提案や啓発もおこなう。塩分の過剰摂取が長年にわたり問題となるなか、「減塩メニューは味が薄くて物足りない」などの生活者のイメージを変え、健康づくりに寄与しつつ、売り上げ拡大にもつなげるねらいだ。(編集部・竹山栄太郎)

調味料にスープ…製品続々

減塩をうたう製品として、味の素が最初に売り出したのは、2007年に登場した「やさしお」。「おいしさそのまま、塩分1/2」をアピールし、食塩を半分にする代わりにカリウム塩を加えた。カリウムの苦みを抑えるために、納豆のネバネバをつくるγ-PGA(ガンマ・ポリグルタミン酸)を使い、まろやかな味にしたのがポイントだという。

その後、「味の素」「お塩控えめの・ほんだし」「クノールカップスープ」なども発売してラインアップを広げ、現在では10製品を展開する。健康志向が高まりつつある若い世代や中年層もターゲットにし、試しやすく、使い切りやすい小容量のものも充実させているという。

お塩控えめの・ほんだし
お塩控えめの・ほんだし
丸鶏がらスープ<塩分ひかえめ>
丸鶏がらスープ<塩分ひかえめ>(いずれも味の素提供)

味の素は「アミノ酸のはたらきで食と健康の課題解決」を掲げ、2030年までに「10億人の健康寿命の延伸」と「環境負荷の50%削減」を実現することを目標に据えている。おいしさを損なわずに減塩し、栄養改善を進めることは、SDGsの目標2「飢餓をゼロに」や目標3「すべての人に健康と福祉を」の達成にも貢献するとしている。

減塩のカギを握るとみるのが「うま味」だ。うま味は、昆布やしいたけなどに含まれるアミノ酸のグルタミン酸。食塩の代わりにうま味を活用することで、食塩の摂取量を最大12~21%減らせるという研究結果もあるという。

例えば、「やさしお」や「味の素KK コンソメ」で使われているポリグルタミン酸は、グルタミン酸が30~5000個結合したもの。また「お塩控えめの・ほんだし」では、やさしおの技術に加えてカツオ節をふんだんに使うことで、「塩分60%カット」が実現できたという。

日本人は「塩分とりすぎ」

減塩製品に力を入れる背景には、多くの人が「塩分とりすぎ」になっている現状がある。WHO(世界保健機関)によると、塩分の過剰摂取は、世界で毎年300万人が命を落とす心臓病や脳卒中のリスクを高めるとされる。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査報告」(2019年)によると、日本人の1日あたりの食塩摂取量は男性10.9g、女性9.3g。10年前(男性11.6g、女性9.9g)と比べてやや減ってはいるものの、まだ高い水準にある。

WHOは1日あたりの食塩摂取量を5g未満に抑えることを推奨している。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、食塩摂取の目標値を男性7.5g未満、女性6.5g未満としており、日本高血圧学会では6g未満を推奨する。これらの目標と現状の間には大きな開きがある。

WHOによると、日本以外でも、東南アジアを中心に食塩を1日10g以上とっている国が少なくない。味の素サスティナビリティ推進部ウェルネス・栄養グループ長の石崎太一氏は「減塩はグローバルの健康課題であり、減塩に取り組んでいくことは食品企業の社会的責任でもある」と話す。

世界でも減塩の切り札に

味の素の減塩関連の取り組みは、製品以外にも広がっている。かつて塩分摂取量が男女とも「全国ワースト1」だった岩手県では、2014年から県やスーパーと協力して減塩を啓発してきた。

ただ、自社でおこなったアンケートの結果、「減塩に取り組みたい」という人は8割以上いるのに、実践できている人は3割にとどまった。さらに、減塩に対して「薄味が物足りない」「おいしくない」といった不満もあり、減塩を続けることの難しさがわかったという。

そこで、2020年7月からは「Smart Salt(スマートソルト、スマ塩)」プロジェクトを開始。ウェブサイトで減塩の必要性を説く動画の配信や、減塩レシピの提案をしている。石崎氏は「生活者の行動変容のためには、減塩の動機付け、実践するための励まし、『減塩してもおいしい』と思える体験の三つがポイントになる。減塩を習慣化してもらえるようにしたい」と話す。

一方、海外でもタイ、インドネシア、ペルー、トルコ、ブラジルの5カ国で、22種類の減塩製品を売り出している。ベトナムでは2012年度から小学校の給食メニューを標準化する「学校給食プロジェクト」を続けており、近年は食育の考え方もとりいれているという。

給食を食べるベトナムの子どもたち
給食を食べるベトナムの子どもたち(味の素提供)

うま味を発見したのは、東京帝国大学(現・東京大学)の池田菊苗博士。味の素の創業者である二代鈴木三郎助は、池田博士からの依頼で事業化に取り組み、1909年にうま味調味料「味の素」を発売した。100年以上の歴史を持つ日本発のうま味が、世界の減塩の切り札になるか。味の素のグローバルコミュニケーション部の黒岩卓氏は「『おいしい減塩』を世界中に広めたい」と話す。

竹山栄太郎
竹山栄太郎 ( たけやま ・えいたろう )
朝日新聞SDGs ACTION!編集部員。2009年に朝日新聞社入社。京都、高知の両総局を経て、東京・名古屋の経済部で通信、自動車、小売りなどの企業を取材。2021年から現職。
この記事をシェア
関連記事