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プラスチックの脱「大量生産・消費・廃棄」どう進める? WWFと企業、学生が議論

プラスチックの脱「大量生産・消費・廃棄」どう進める? WWFと企業、学生が議論
イベント後に記念撮影した「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025 みらいダイアログ」の登壇者たち=2022年6月1日、東京・渋谷
編集部

国際環境保全団体の世界自然保護基金(WWF)ジャパンは6月1日、プラスチックの大量生産・大量消費・大量廃棄からの脱却に向けた道筋を探るイベント「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025 みらいダイアログ」を東京・渋谷で開いた。企業の担当者や専門家、大学生らが集まり、サーキュラーエコノミー(循環型経済)実現のためのアイデアや課題を語り合った。(編集部・竹山栄太郎)

プラスチック流出減へシステム転換を

イベントは、プラスチック資源を循環させる仕組みを整えることでプラスチックごみ問題の解決をめざす「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」の一環。「環境月間」の6月のスタートに合わせて開催された。「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」はWWFジャパンの呼びかけで、2022年2月、イベントに登壇した5社を含む国内大手10社が参画して立ち上げられた。

イベントではまず、WWFジャパンプラスチック政策マネージャーの三沢行弘さんが、プラスチック問題の現状を説明。海洋への流出量が2040年には現在の3倍の年3000万tに増えると予測されているとして、「リサイクルだけでなく、削減と回収も含めてトータルでしっかりとおこなうことが必要で、そのための解決策がサーキュラーエコノミーだ。社会のシステムを変えることで流出量を右肩上がりから右肩下がりにできる」と解説し、企業に協力を呼びかけた。

WWFジャパンの三沢行弘さん
WWFジャパンの三沢行弘さん

また、京都工芸繊維大学未来デザイン・工学機構教授の水野大二郎さんが基調講演し、サーキュラーエコノミー実現にデザインを役立てる「サーキュラーデザイン」の考え方を解説した。水野さんは、「サーキュラーエコノミーは単純に、使い捨てである直線型の経済モデルから循環にすればよいということではなく、どうやって物質の使用量を削減するか、すなわちモノをつくらなくてもビジネスを回せるかにつながっていく」と述べた。

まずは自社の現状を「見える化」

続くパネルディスカッションで、日本コカ・コーラサスティナビリティー推進部部長の飯田(眞利子)征樹さんは、「使用済みペットボトルをもう一度ペットボトルに戻す『ボトルtoボトル』『(同じ製品に生まれ変わる)水平リサイクル』の割合が国内では15.7%にとどまる。業界全体で割合を引き上げていく必要がある」と話した。

日本航空ESG推進部の張叶さんは、空港で乗客から預かる手荷物用の袋の配布をやめて、年間150万枚の使用を減らした事例を紹介。「いままではサービスの品質を重視し、大事なかばんをカバーするために袋を提供してきたが、お客さまの環境意識の高まりで『もったいない』という声もあった」と説明した。

ファシリテーターを務めた大学院大学至善館教授の枝廣淳子さんは、「自社の現状を見える化してデータで押さえておくこと、製品を使っていく生活者と連携・共創することがポイントになる」と指摘した。

パネルディスカッションの登壇者
パネルディスカッションに登壇した(左から)WWFジャパンの三沢行弘さん、大学院大学至善館の枝廣淳子さん、日本航空の張叶さん、日本コカ・コーラの飯田(眞利子)征樹さん、京都工芸繊維大学の水野大二郎さん

デザイン・技術で工夫 大学生が提案

第2部では、SDGs研究の第一人者として知られる慶応義塾大学・蟹江憲史教授の研究会で学ぶ大学生2人が、サーキュラーエコノミー実現のためのアイデアを披露し、企業や環境省の担当者も交えて語り合った。

慶応大の落合航一郎さんは、「リユース(再利用)容器は返却するのが面倒」という声をふまえた「リユース包装容器『Leaf Cycle』」を発表。容器を葉っぱのようなデザインにし、返却する際に木の幹の形をしたラックにかける仕組みにすることで、容器返却が増えるほど木が茂っていくように見えるため、返却を促せると提案した。

<span>落合航一郎さんのアイデア</span>
慶応大の落合航一郎さんが提案した「リユース包装容器『Leaf Cycle』」(WWFジャパン提供)

田中文也さんは、現状の商品パッケージは素材が多様化し、水平リサイクルを進めにくくなっていると指摘。店内にパッケージの素材や規格を統一した商品を並べ、来店客がAR(拡張現実)機能つきのサングラスを通じてオリジナルのデザインを認識して買い物する「ARパッケージコンビニ」のアイデアを発表した。

田中文也さんのアイデア
慶応大の田中文也さんが提案した「ARパッケージコンビニ」(WWFジャパン提供)

循環型経済へ業界で協調・競争を

これらの提案もふまえて、企業の担当者が各社・業界の状況や課題を紹介した。ネスレ日本執行役員コーポレートアフェアーズ統括部長の嘉納未來さんは、「パッケージ開発ではおいしく栄養価のあるものを安全に届けること、その国の気候や地域・製品の特性に合わせることに注意している。国ごとに異なるリサイクルの法律や設備についても考えなくてはならず、頭を悩ませている」と明かした。

キリンホールディングスCSV戦略部の別所孝彦さんは、「業界で統一すべき部分と競争すべき部分の両方がある。飲料業界では、各社がペットボトルに関する業界団体のガイドラインに沿ってリサイクルしやすい形状で製造する一方、ボトル軽量化の取り組みではしのぎを削っている」と述べた。

パネルディスカッションの登壇者
環境省の平尾禎秀さん(前列左)、キリンホールディングスの別所孝彦さん(前列右)、慶応大の落合航一郎さん(後列)
パネルディスカッションの登壇者
ネスレ日本の嘉納未來さん(前列左)、ユニ・チャームの上田健次さん(前列右)、慶応大の田中文也さん(後列)

ユニ・チャーム執行役員ESG本部長の上田健次さんは、「消費者へのヒアリングでは環境に配慮した製品を支持する声が多いが、実際にはそれほど選択してもらえない。消費者の本音は行動にあると思う。消費行動をよりよい方向にうながすため、先手先手を打つ必要がある」と語った。

環境省循環型社会推進室長の平尾禎秀さんは、「政策を担当していると、一方で『生ぬるい』、一方で『やりすぎだ』と言われ、不安になることがある。企業も同じではないか。そういうとき、消費者側から力を送ってもらえると動きが早まる」と述べた。

<span>パネルディスカッションの登壇者</span>
イベント後に記念撮影した登壇者の皆さん
竹山栄太郎
竹山栄太郎 ( たけやま ・えいたろう )
朝日新聞SDGs ACTION!編集部員。2009年に朝日新聞社入社。京都、高知の両総局を経て、東京・名古屋の経済部で通信、自動車、小売りなどの企業を取材。2021年から現職。
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