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SDGs目標2「飢餓をゼロに」とは? 世界や日本の事例解説付き!

SDGs目標2「飢餓をゼロに」とは? 世界や日本の事例解説付き!
SDGs目標2「飢餓をゼロに」とは(デザイン:吉田咲雪)
ライター&オンライン講師/藤田まみ

世界では新型コロナウイルス感染症により飢餓人口が増加しました。その影響でSDGs目標2「飢餓をゼロに」を2030年に達成するのは難しいと懸念されています。とはいうものの、「目標2とは?」「世界の現状や事例は?」と疑問に思いますよね。今回は、飢餓の原因や対策をくわしく解説します。

藤田まみさん
藤田まみ (ふじた・まみ)
ライター&オンライン講師。小学校教諭歴6年。退職後、社会とのつながりに悩むも、サステイナブルライフと出会い、自分らしい生き方を実現。現在はSDGsや教育分野の記事を執筆。自分・社会・環境を大切にする輪を広げるために、noteで積極的に情報発信をしている。著書『ふだん使いのSDGs』。

1.SDGs目標2「飢餓をゼロに」とは

SDGs目標2「飢餓をゼロに」とは、飢餓を終わらせるために掲げられた目標です。食料の安全保障や栄養不足の改善を実現し、持続可能な農業を促進することを目指しています。

目標2アイコン

(1)SDGs目標2「飢餓をゼロに」の内容

より具体的な内容を知るために、ターゲットをみていきましょう。

ターゲットとは、具体的な達成目標を意味します。目標2には全部で8個あるので、それぞれ説明していきます。

2.1 2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。
2.2 5歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。
2.3 2030年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。
2.4 2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。
2.5 2020年までに、国、地域及び国際レベルで適正に管理及び多様化された種子・植物バンクなども通じて、種子、栽培植物、飼育・家畜化された動物及びこれらの近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基づき、遺伝資源及びこれに関連する伝統的な知識へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する。
2.a 開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。
2.b ドーハ開発ラウンドの決議に従い、すべての形態の農産物輸出補助金及び同等の効果を持つすべての輸出措置の並行的撤廃などを通じて、世界の農産物市場における貿易制限や歪みを是正及び防止する。
2.c 食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食料市場及びデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、食料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にする。

引用:我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ p.16-17│外務省

(2)目標2が必要とされている理由

では、どうして目標2が必要なのでしょうか。

日本で生活していると、飢餓はそこまで深刻ではないのではないかと感じる方もいるかもしれません。しかし、世界に目を向けると、毎日十分に食事ができずに苦しむ人が多く存在しています。

FAO(国連食糧農業機関)やIFAD(国際農業開発基金)などを含む国連5機関が共同で発行している報告書「世界の食料安全保障と栄養の現状(2021年版)」によると、2020年に飢えに苦しむ人の数は7億2000万人から8億1100万人に達すると予測されています。中間値(7億6800万人)を考慮しても、2019年より1億1800万人も多い数字です。

また、食事ができないことは、数億人もの人々が十分な栄養摂取ができず健康でいられない状況であるともいえます。成長期の子どもの栄養不良は特に深刻な問題です。

慢性的な栄養不良により、健やかな発達ができない子どもは、世界でどれくらいいるのでしょうか。

実は、発育阻害の5歳未満児は、2020年時点で1億4920万人いるといわれています。これは、全世界にいる5歳未満児の22%にあたります(参照:The UNICEF/WHO/WB Joint Child Malnutrition Estimates (JME) group released new data for 2021│WHO)。

飢餓や栄養不足で苦しむ人々を一刻も早く救うためには、持続可能な食料生産を実現させなければなりません。そのために、「飢餓をゼロに」という目標2は必要であるといえます。

(3)そもそも飢餓はなぜ起こるのか

では、飢餓はなぜ起こるのでしょうか。そこには、継続的に食料が確保できない原因が複雑にからみあっています。解決すべき四つの原因をみていきましょう。

①気候変動

気候変動と飢餓は深く関わっています。洪水や干ばつなどが原因で、食料生産ができない地域が増えています。

例えば、2010年夏、パキスタンで大雨により大洪水が発生しました。その影響で以下の被害を受けたそうです。

・農地が浸水

・農作物に壊滅的な被害が及ぶ

・1000万人が食料支援が必要な状態になった

一方、ロシアでは同じ年、深刻な干ばつが発生し、次のような被害がありました。

・小麦の収穫量が著しく減少

・国際市場における小麦の価格を上昇

・貧しい国の人々は必要な食料を買うことが困難になった

このように、気候変動が進むと、食料生産に大きな影響があることが分かります(参考:気候変動~飢餓を悪化させる厳しい現実│WFP)。

②世界人口の増加

世界人口の増加も影響しています。

UNFPA(国連人口基金)の「世界人口白書2022」によると、世界人口は、2022年現在で79億5400人です。日本のように、人口が減少している国もありますが、全体でみると増加が続いていて、2050年までには約100億人に達するといわれています。

人口が増えると食料の需要も増加するため、大量の食料を生産して確保しなければなりません。今後、飢餓が悪化するのは容易に想像できるのではないでしょうか。農林水産省は、2010年と比較すると、2050年の食料需要量は1.7倍になるとの予想を発表しています。

世界全体の品目別食料需要量の見通し
出典:2050年における世界の食料需給見通しp.13│農林水産省

けれども、現状では食料の需要と供給のバランスがとれていません。国連も、2050年までに増加が見込まれる20億人に食料を確保するためには、グローバルな食料と農業のシステムを根本的に変える必要があると言及しています(参考:目標 2 飢餓をゼロに|国連広報センター)。

これ以上、飢餓人口を増やさないために、持続可能な食料生産システムが求められています。

③新型コロナウイルス感染症の大流行

ここ数年、新型コロナウイルス感染症の大流行で、飢餓が悪化しました。

国連の「持続可能な開発目標(SDGs)報告2021」によると、2020年には、世界全体で新たに7000万~1億1600万人が、パンデミックの影響により飢餓を経験した可能性があるといわれています。

理由はさまざまですが、低所得者層が経済的な困窮によって、食べ物を十分に得られなくなっていると考えられます。感染対策とともに、食料を安定して供給できる環境を整える必要があるのではないでしょうか。

④食品ロス

食品ロスも原因の一つです。

FAO(国連食糧農業機関)の報告書「世界食料・農業白書 2019(THE STATE OF FOOD AND AGRICULTURE 2019)」によると、世界では食料生産量の3分の1(約13億t)が毎年廃棄されています。

実は、食べられずに捨てられた食料は、世界の20億人分に及ぶそうです。つまり、食料を必要としている人々がいる一方で、必要量以上の食料が捨てられているのです。

食品ロスの削減は、飢餓をなくすことに大きく関わっています。

2.目標2に対する世界・日本の取り組み事例

では、飢餓のない未来を実現するために、世界や日本ではどのような取り組みが実施されているのでしょうか。

(1)世界の取り組み事例

①WFP(国連世界食糧計画)

WFP(国連世界食糧計画)は、全世界の2万人のスタッフが「飢餓は過去のものにするべきだ」という強い情熱をもって活動しています。117の国と地域で、紛争や災害で困窮している人々の命を救うために、食料を提供しています。

・女性と子どもの栄養強化
・小規模農家の生産性向上
・気候に関する災害への備えと対応支援
・学校給食支援

など、飢餓をゼロにするためのさまざまな活動に取り組み、2020年にはノーベル平和賞も受賞しています。

日本での公式支援窓口である国連WFP協会は、「レッドカップキャンペーン」を行っています。レッドカップマークがついたお菓子やレトルト食品を買うと、売り上げの一部が企業から寄付され、学校給食支援につながります。2011年の開始から10年間(2021年8月末時点)の寄付額は約6億円で、約2000万人の子どもたちに学校給食が届けられたそうです(参照:レッドカップキャンペーン│国連WFP)。

②FAO(国連食糧農業機関)

FAO(国連食糧農業機関)は、国連システムの中にある機関の一つです。

・食料の安全保障
・栄養不足の解消
・作物や家畜、漁業と水産養殖を含む農業や農村開発

など、世界の食料問題を解決するために活動を続けています。

飢餓の問題を多くの人に知ってもらうため、毎年10月16日を「世界食料デー」と定めており、世界各地で「食」をテーマにしたイベントが行われています。

日本政府も、毎年10月を「食品ロス削減月間」、10月30日を「食品ロス削減の日」としています(参照:食品ロスの現状を知る│農林水産省)。

③オランダ「Instock」

ヨーロッパ諸国では、廃棄食材を活用したビジネスが増えています。オランダの首都アムステルダムでは、2050年までに循環経済を100%実現するという目標を掲げ、まち全体として廃棄物を出さない仕組みを目指しています。

Instock(インストック)」は、一流シェフが、植物由来のものや規格外・わけあり食材を使って料理を提供するレストランとして始まりました。2022年6月現在はオンラインショップや卸業にシフトし、レストランやケータリング業者向けに、廃棄食材を用いた製品を販売しています。食材の根から茎まで、鼻から尾までおいしく味わうこともモットーにしているそうです。

この取り組みをみて、筆者もコオロギせんべいを食べたことを思い出しました。それまではコオロギを食すことは考えたこともありませんでした。しかし、実際に口にしてみると想像以上のおいしさだったのです。

飢餓の要因の一つである食品ロスを削減していくには、固定概念を捨て、捨てる食材を調理したり、昆虫をお菓子にしたりなど、食の選択肢を広げていくことが求められます。「Instock」は、クリエーティブなパフォーマンスが、それに大きく貢献するとわかる好事例です。

(2)日本の取り組み事例

①スマート農業

日本政府はスマート農業の普及に力を入れています。

スマート農業とは、ロボットやAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)など最新技術を活用した農業のことです。

農家の高齢化や深刻な人手不足は日本が抱える課題。スマート農業は、これらの問題を解決する救世主として期待されています。

具体的な事例は、以下の通りです。

・農薬散布用ドローン
 従来の作業なら1時間かかる作業がわずか10分で完了するなど、作業時間を大幅に短縮可能

・アシストスーツ
 収穫物の積み下ろしなど、力仕事をアシストスーツで負担軽減できる

・自動収穫ロボット
 最適な収穫時期をAIが判断し、自動で収穫するロボット。農業の経験値に関係なく、スムーズに収穫できる

このように「作業の時短」「無人化」「労働力不足の解消」「初心者も参入しやすい環境」に大きく貢献しています。また、膨大なデータを分析して、常に的確な判断をするため、食料の収穫量や品質の向上にも役立ちます。

②TABLE FOR TWO

TABLE FOR TWO」は、直訳すると「二人のための食卓」。先進国の私たちと開発途上国の子どもたちが食事を分かち合うというコンセプトを大切にし、食料が均等に行き届いていない問題を解決するため、「TABLE FOR TWO(=TFT)プログラム」を実施しています。

これは、先進国で肥満や生活習慣病予防のためにカロリーを抑えた定食や食品を購入すると、1食につき20円の寄付金が、開発途上国の子どもの学校給食分にあてられる、というものです。

「たったの20円」と思った方もいるかもしれません。しかし、20円で、開発途上国の給食1食分まかなえるそうです。

先進国での1食が、開発途上国の1食につながるというやさしい仕組みが存在しています。

トヨタ自動車は、国内の食堂でTABLE FOR TWOプログラムを実施し、2021年9月末現在で、累計約144万食を寄付しました。この数字は、全従業員が20回以上社会貢献したということになるそうです(参照:国内すべての工場へ TABLE FOR TWOプログラムを広げよう│TABLE FOR TWO)。

3.目標2達成のために私たちにできること

最後に、誰でも簡単にできて、目標2の達成につながるアクションを三つ紹介します。個人だけではなく企業でも取り組めるものもあるので、ぜひ参考にしてみてください。

(1)国産の食材を買う

一つ目は、国産食材の購入です。それぞれの国で必要な食料を、なるべく自国でまかなえるようにすることが、飢餓をなくす近道になります。

日本が輸入大国であることはご存じの方も多いのではないでしょうか。消費者として、国産の食材を買うことは、食料自給率アップだけではなく、日本の農家を応援することにもつながります。また、国産のものは輸入品に比べて輸送距離が短いため、新鮮で、環境負荷も減らすことができ、SDGsに貢献しているともいえます。

筆者自身も、すべてではありませんが、なるべく国産食材を買うように意識しています。また、スマート農業の魅力を知ってからは、スマート農業で生産された玄米も買うようになりました。味もおいしいので、リピート買いしています。

自分の買い物で未来が変わる確証はありません。しかし、「未来が明るくなる選択ができた」と思うと、買い物が楽しくなりそうな気がしませんか。

最近は、企業で国産食材を使用した商品を販売したり、飲食店でも地産地消メニューを提供したりする場面をよく見かけるようになり、選択肢も増えています。

日本でも持続可能な農業を実現させるためにも、国産の食材に目を向けてみてはいかがでしょうか。

(2)食品ロスを減らす

食品ロスを減らすことも大切な行動です。

2020年度における日本の食品ロスは、522万t。そのうち、食品関連事業者から発生した事業系食品ロスは275万t、家庭は247万tでした。消費者庁は、食品ロス削減には事業者と消費者の協力が必要不可欠であると発信しています(参照:食品ロスについて知る・学ぶ|消費者庁)。

新事業として、オランダのレストランの例のように余った食材でメニュー開発するのも魅力的ですよね。

筆者も食品ロスをなくすために、以下のことに取り組んでいます。

・魚や肉を必要な分に分けて、冷凍保存する
・小松菜やニラを切って、冷凍保存する
・人参は皮ごと食べる

このような工夫をするようになってから、食品ロスが一気に減ったと感じています。とても簡単なので、無理なく続けられるのもうれしいですよね。

(3)食料支援につながるキャンペーンやプログラムに参加する

今回紹介したような「レッドカップキャンペーン」や「TABLE FOR TWO」に、個人や企業で参加することも大きな貢献です。

筆者もレッドカップキャンペーンを知ってから、マーク付きのスナック菓子やアーモンドを買ってみました。

レッドカップマーク付きとんがりコーン
レッドカップマーク付きとんがりコーン
レッドカップマーク付き素焼きアーモンド
レッドカップマーク付き素焼きアーモンド(いずれも筆者提供)

「いつものおやつタイムが、だれかの笑顔につながっているかもしれない」と思うと、心が温かくなります。

レッドカップキャンペーンは企業の参加も求めています。国連WFP協会によると、2011年の開始から10年間(2021年8月末時点)で61社が参加したそうです。事業を通して、SDGsへ大きく貢献できるのがメリットです。

とはいうものの、「食品系事業をしていないから参加するのは難しい」と感じた方もいるのではないでしょうか。実は、食品以外でも参加可能で、カトラリー、消火器、ランドセル、ホテルへの宿泊なども、対象になっていました。

消費者にとっても、商品を買うだけで社会貢献ができるのが魅力です。

商品を扱っていない企業は、「TABLE FOR TWO」を自社の食堂などに取り入れることを、検討してみてはいかがでしょうか。

4.飢餓をゼロにするためには先進国の力が不可欠

目標2「飢餓をゼロに」は、飢餓を終わらせ、食料の安全保障や栄養不足を改善することを目指しています。

飢餓を解決するには、気候変動対策はもちろんのこと、持続可能な食料生産のための仕組みづくりが求められています。先進国がリーダーシップを発揮しながら、最新技術やクリエーティブな発想力をフル活用して、解決に向けて手を打つべきではないのでしょうか。

飢餓を過去のものにするために、企業や消費者が一丸となり、今できる行動を始めることが解決への近道といえます。

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