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エシカル就活とは? 注目の理由や実践方法、企業に必要な対応を紹介

エシカル就活とは? 注目の理由や実践方法、企業に必要な対応を紹介
エシカル就活の定義と注目されている理由(デザイン:増渕舞)
キャリアコンサルタント/沼田絵美

エシカル就活とは、さまざまな「社会課題」解消に事業として取り組む企業への就職を志望する就職活動スタイルのことです。エシカル就活の由来からいま注目されている理由、学生のみなさんの参考になるエシカル就活のポイント、企業に求められる対応まで、エシカル就活の基礎知識を紹介します。

沼田絵美さん
沼田絵美(ぬまた・えみ)
国家資格キャリアコンサルタント&フリーライター。超氷河期時代の就活を経て人材広告会社の営業を10年。退職後は大学キャリアセンター相談員や講師、採用支援のお手伝いに企業取材など、かれこれ20年間近く「就職・採用」かいわいで仕事をする個人事業主。

1.エシカル就活とは

エシカル就活とは、環境問題や社会問題に事業として取り組む企業を志望する就職活動のスタイル、またそれをマッチングするプラットフォームを指します。

エシカル就活について知るためにまず「エシカル」という言葉を確認しましょう。「エシカル」という言葉の意味やその背景から、エシカル就活について紹介します。

(1)そもそもエシカルとは

エシカル(ethical)とは「倫理的・道徳的」という意味の英語です。

「犠牲の上に豊かさが成り立ってはいけない」という考え方のもと、「よい行い」をすることを積極的に選ぼうとする行動を形容するようになりました。

エシカルという考え方が日本に広がり始めたきっかけのひとつは、2015年に消費者庁が「人や社会・環境に配慮した消費行動:倫理的消費(エシカル消費)」の普及に向けた調査研究会を発足したことです(参考:エシカル消費とは|消費者庁)。

この調査研究会の報告書では、「倫理的消費」(エシカル消費)を「人や社会・環境に配慮した消費行動」と定義しています(参考:「倫理的消費」調査研究会取りまとめ ~あなたの消費が世界の未来を変える~ p.1|消費者庁)。

消費者のニーズを受けて、ビジネス側でも「エシカルな事業展開」を重視する流れが加速しました。

例えば、

● フェアトレードで取引される

● 児童労働や搾取が行われていない

● 被災地復興、地方再生、障害者自立などさまざまな支援につながる

● 食品ロスを減らすため消費期限を伸ばす

● ゴミを減らすため、簡易包装やリサイクルに取り組む

このような商品開発への取り組みは「エシカル」の考え方がベースになっています。

消費行動や企業活動だけでなく、個人のボランティア活動など「よりよい行い」につながるものはすべて「エシカル」と表現できると言えます。

この「よりよい行い」に取り組める、つまり社会が抱えるさまざまな課題の解消に貢献できるビジネスフィールドであることを就職活動の「軸」として就活に取り組むスタイルを、「エシカル就活」と名づけたのは、大学生の勝見仁泰さんだとされています。

勝見さんが起業した株式会社Allesgoodが、2021年に「取り組んでいる社会課題」のカテゴリーから企業を検索・応募できる就職活動プラットフォーム「エシカル就活」を立ち上げたことをきっかけに、「エシカル就活」という言葉が注目されるようになりました。(参考:社会課題に取り組む企業と学生がつながるSNS型プラットフォーム「エシカル就活-ETHICAL SHUKATSU-」をリリース|PR TIMES

(2)エシカル就活とSDGsの関係性

とはいえ、現時点で「エシカル就活」という言葉そのものが多くの学生に認知されているという状況ではありません。

ただ、企業選びをするうえで「社会貢献度が高い」ことを高く評価している学生が増加しているのは事実です。

これには、SDGsの認知度が向上していることが関係します。

株式会社ディスコによる学生モニター調査「就活生の企業選びとSDGsに関する調査」による、就活生のSDGsの認知度データがあります。

SDGsの認知度
出典:就活生の企業選びとSDGsに関する調査(2021年8月調査)p.1|株式会社ディスコ キャリタスリサーチ

2020年に就職活動を行った学生と比較しても、わずか2年の間に「まったく知らない」という学生がほぼいなくなったことがわかります。大学に限らず、小・中・高校でもSDGsについて学ぶ機会があることを考えても、今後さらに「エシカル」の視点が学生の志望度に影響を強めていくと予想されます。

実際、この調査で、企業がSDGsに積極的に取り組んでいることが志望度に「影響する」と回答した学生は、「とても影響する(志望度が上がる)」「やや影響する」を合わせて4割を超えています。

企業のSDGsへの積極的な取り組みによる志望度への影響
出典:同 p.4

2.エシカル就活が注目されている理由

「Z世代」と呼ばれる若者たちが、「企業規模や知名度よりも、世の中に貢献している実感を得られる仕事ができることを重視したい」と考え、「エシカル就活」に注目する理由は何か。学生側と企業側、二つの視点から確認していきましょう。

(1)さまざまな社会課題を身近に学ぶ機会の増加

2023年4月に就職する四年制大学の学生が生まれたのは2000年ごろ。当時は就職氷河期のまっただなかで、2000年3月卒の大卒求人倍率は過去最低の0.99倍を記録しました(参考:大卒求人倍率調査(2023年卒)|リクルートワークス研究所)。

リーマン・ショックや東日本大震災などを成長期に経験した彼らが、物質的な充足感よりも精神的な「意味」を求める傾向があることは、世代論評でも取り上げられてきました。

(2)SDGsへの取り組みをPRする一般企業の増加

2015年9月の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されて以降、日本企業でも各社それぞれが取り組む「action」と目標を設定、公表する動きが活発化しました。IR情報やCSRの取り組みのページにとどまらず、企業PRのポイントとして採用ホームページでも積極的にSDGsへの取り組みを取り上げる企業も少なくありません。

上記のディスコの調査データでも、就職活動中に企業のSDGsの取り組みに関して「よく見聞きした」という学生が3割強(35.6%)にのぼり、「ある程度見聞きした」(50.0%)を合わせて8割以上が「見聞きした」と回答しています。

就職活動が始まるまで「エシカル就活」にも「SDGs」にも接点や興味を持ったことはないけれど、就活での企業研究を通じて貢献したいと考えるようになったケースは珍しくありません。

(3)社会課題解決を事業の中心においた起業家の存在

幼いころからさまざまな社会課題について身近に学ぶ機会を多く共有しているZ世代が、社会人として自分の就職を考えたとき、すでに多くの社会起業家というロールモデルが存在していたことは重要なポイントです。

自身も社会起業家として「ビジネスの力で『世界一』虐待問題を解決する」ことをミッションとする株式会社RASHISAを大学生のときに立ち上げた岡本翔さんも、この点を非常に強く感じています。

NPO法人、事業会社、社団法人など法人格はさまざまであっても、いわゆる「就職氷河期世代」である1970年代後半~1980年代前半生まれの人たちが次々に社会課題の解決を目指して社会起業を開拓してきたため、いまの若者たちはすでに「現実的な道」として認識できていたと言えます。それに加えて、SNSというコミュニケーションツールで、先駆者たちが身近な存在としてアクセスしやすくなったという事情もあります。

この点が、社会課題の解決が「身近」で「自分のやりたいこと」としてイメージしやすくなった最大の理由と言えるでしょう。

3.就活生がエシカル就活をするためには?

では、就活生が実際にエシカル就活をするためには、具体的に何をしたらいいのでしょうか。筆者は主に次の3点がポイントになると考えています。

1. 「世の中の役に立つ仕事」とは何か自分の言葉で定義する

2. 「自分が役に立てる仕事」を考える

3. 多角的に情報収集する

順に詳しくご紹介します。

(1)「世の中の役に立つ仕事」とは何か自分の言葉で定義する

「世の中の役に立つ仕事がしたい」。この言葉は、エシカル就活に限らず、一般の就職活動でも学生たちがよく口にする志望動機です。しかし基本的に「世の中の役に立たない仕事」はそうあるものではありません。

そのため、世の中で『どのように』役に立ちたいのか、自分の言葉で考えてみることから始めましょう。解決しなければならない多数の社会課題のなかでも、より興味をもって能動的に行動できる分野があるはずです。

(2)「自分が役に立てる仕事」を考える

より強く興味・関心を持てる分野が見えてきたら、次に考えたいのは「その社会課題解決に自分がどのように役に立てるか」という視点です。

営利が最優先ではないエシカル分野だからこそ、社会性と事業性の両立は大きな課題となります。その両立を目指すためには「自分の能力をどのように生かすか」という視点が必要です。

例えば「目の前で困っている人の手助けが直接できること」にやりがいを感じるのか、当事者の反応は見えなくても仕組みづくりや事務処理など自分の能力を発揮できることにこだわりたいのか、自分軸で貢献できることを考えましょう。

(3)多角的に情報収集する

就職活動の情報ツールとして最も認知度が高いのは、いわゆる就職ナビサイトです。フリーワード検索機能を利用してSDGsに関連したキーワードを検索する、といった使い方も可能です。

エシカル就活で、自分が興味・関心のある社会課題解消にビジネスとして参入する事業会社が少ない・わかりにくい場合、「就職情報から探す」という方法以外の手段も活用しましょう。

例えば以下のような手法があります。

● SDGsの活動報告を検索し、該当した企業の採用ホームページを調べる

● ボランティア募集サイトから、運営企業・団体を調べる

● SNSを通じて実際に活動している人の声やキャリアについて調べる

このような情報収集を通じて、自分が本当に「やりたいこと」が何なのか、じっくり考えることが大切です。

合同企業説明会のブースで説明を聞く参加者たち
合同企業説明会のブースで説明を聞く参加者たち=2022年3月1日、東京都江東区(撮影・朝日新聞)

4.エシカル就活に対して企業が行っておきたい対応

最後に、エシカル就活に着目する学生を採用したい、と考える企業が取り組むべき対応をご紹介します。

(1)就活生よりもまず社員への理念共有を

「SDGsの取り組みを説明会のコンテンツにしたら満足度が高かったから、来年から採用広報では積極的に扱っていこう」……このような「採用のための一手法」としてエシカルを取り上げるのは本末転倒になるかもしれません。

「本当にエシカル就活に関心がある学生がOB訪問で『実際に社員としてSDGsに貢献していると実感できるのは、どのような仕事に取り組んでいるときですか』と質問したところ、現場の社員は自社で設定しているSDGs目標の存在を知らず、がっかりした」というケースもありました。

エシカル分野に貢献したい、その理念はまず、社員に向けて共有する必要があります。

(2)具体的な業務内容の積極的な開示

エシカル分野の取り組みと、実際の業務内容に大きな乖離(かいり)がある場合は入社後の離職にもつながります。会社としてあるエシカル分野に協賛・資金提供しているが、実際の社員の業務内容には一切関わりがない、といったケースです。

学生によっては「本業の利益を通じて社会貢献をしようとする姿勢が素晴らしい」と評価する場合もあるでしょう。会社としてどのような社会課題に具体的にどのように貢献しているのか、また新入社員を含め、社員が業務としてどのように関わるのか、積極的に開示することで入社後のミスマッチを減らしましょう。

5.エシカル就活で選択肢を増やそう

いま、「エシカル」の視点で「よりよい就活」を考えたとき、「一人ひとりの学生が自分にとってのよりよい就職活動」を考え、自分に合ったスタイルでの就職活動を選べることが求められています。

例えば、企業が通年採用を導入したことは選択肢を増やすひとつの手段です。また、企業規模や本社所在地といったデータだけではない視点をできるだけ多く採り入れて学べるよう、大学のキャリアセンターでも多くの企業研究の機会を提供しています。

学生は仕事に必要な能力を磨き、自分の将来を選ぶために行動すること。企業はさまざまな就業の選択肢を用意し、社員の能力を社会全体の利益に貢献できるよう努めること。

よりよい社会をつくるために今できることをひとつずつ積み重ねていくことが、持続可能な社会を創り上げていく近道なのかもしれません。

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