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ホワイト物流とは? 推進運動の企業事例や賛同メリット、課題を解説

ホワイト物流とは? 推進運動の企業事例や賛同メリット、課題を解説
ホワイト物流の定義と推進運動の概要(デザイン:吉田咲雪)
サプライチェーン・ロジスティクス研究所代表/久保田精一

最近「モノが運べなくなる」という「物流危機」がニュースで取り上げられていますが、これに関連して、「ホワイト物流」という用語を目にする機会も増えています。ホワイト物流の意味や背景、企業が取り組む際のポイントを、実際にホワイト物流に取り組む筆者が、企業事例を交えて紹介します。

久保田精一さん
久保田精一(くぼた・せいいち)
熊本県生まれ。物流分野を中心にコンサルティング活動に従事。著書に、『「物流コストの算定・管理」のすべて』(創成社刊、共著)ほか。城西大学非常勤講師、流通経済大学客員講師。中小企業大学校でトラック運送業向けの指導にも当たる。日本物流学会正会員。

1.ホワイト物流とは

「ホワイト物流」とは、トラック運送を「より働きやすい(よりホワイトな)労働環境へ改善する」という国の政策を表すキーワードです。

物流業界の主な担い手はトラックですが、トラックドライバーの労働時間は他産業より約2割も長い一方、賃金水準は他産業以下にとどまっています。最近、ドライバー不足が社会問題になっていますが、ドライバー不足を解消するには、このような劣悪な労働条件を改善することが必要です。そのような背景から、国は「ホワイト物流」を実現するための政策を展開しています。

ホワイト物流の取り組みは、言うまでもなく、SDGsの目標達成にも関連します。直接的に関係するのは目標8「働きがいも経済成長も」のなかにあるターゲット8.8「安心・安全な労働環境」ですが、ホワイト物流を実現するために必要な業務の改革などは、目標9の「産業と技術革新の基盤をつくろう」などにもつながります。また、物流の効率化の促進によって二酸化炭素排出量の削減も期待できるため、目標13の「気候変動に具体的な対策を」の達成にも寄与します。

SDGs目標8アイコン

2.ホワイト物流推進運動とは

「ホワイト物流推進運動」とは、物流に関わるすべての関係者が連携して、相互に改善を提案・実行することで、前述の「ホワイト物流」の実現を目指すという国民運動です。推進運動の事務局は国土交通省に置かれており、同省が中心となって推進しています。

(1)ホワイト物流推進運動が始まった背景

ホワイト物流推進運動のポイントは「すべての関係者が連携して取り組む」という点です。

トラック運送の労働環境改善は、トラック会社が取り組めば十分だと思われるかもしれませんが、実際には多くの関係者の協力が必要です。「貨物を積み込む際の手荷役に時間がかかる」「納品先で長い待ち時間が発生する」といったケースを想像すれば分かるように、労働が長時間化するのは、トラック会社だけに原因があるとは言えないためです。

このような問題の解決には、貨物を出荷する側の荷主企業や、納品先企業との協力が不可欠でしょう。さらに言えば、トラックの納品先は個人宅である場合もあります。したがって荷主企業や物流事業者だけでなく、市民レベルの協力も不可欠だということになります。

以上の背景から、物流に関わるすべての関係者が連携して取り組む「国民的運動」として、ホワイト物流推進運動が始められたのです。

(2)ホワイト物流推進運動の賛同企業

ホワイト物流推進に多くの関係者に参画してもらえるよう、国は産業界に対して推進運動への賛同を呼びかけています。

賛同する企業・団体は、「どのような改善の取り組みを実施していくか」といった「自主行動宣言」(図表1)を作成し、推進運動の公式ホームページを通じて事務局に提出します。これを事務局が受け付けた後に、賛同企業として公式ホームページに掲載されます。

図表1:自主行動宣言の様式(企業・組合等用)

自主行動宣言の様式
「ホワイト物流」推進運動ポータルサイトの「自主行動宣言フォーマット」を一部加工して作成

ホワイト物流推進運動の賛同企業等の数は、約1400社に達しています(2022年5月末時点)。そこから想像できるとおり、大手運送業や大手自動車、電機、機械メーカーといった、日本を代表する企業の多くが賛同企業に名を連ねています。

図表2には、賛同企業等の内訳を整理しています。これを見ると、物流の主たる担い手である「運輸業、郵便業」が過半数を占めています。次に多いのが「製造業」で、「卸売業、小売業」が続きます。これらの業種はいずれも貨物を出荷する荷主企業であり、同時に納品先企業です。このように、物流改善に重要な役割を担う業種が上位を占めていることが分かります。

図表2:賛同企業の業種別内訳

賛同企業の業種別内訳
「ホワイト物流」推進運動の賛同企業リストをもとに作成。上段の数字は企業数、下段の括弧内の数字は割合を示す。なお「運輸業、郵便業」は、正確には「運輸業、郵便業(道路貨物運送業、倉庫業、その他の運輸業・郵便業)」。企業数には、組合や医療法人のほか、トラック協会などの業界団体も含む

(3)ホワイト物流推進運動の具体的な取り組み事例

ここでは、ホワイト物流推進運動の具体的な取り組み事例を、二つご紹介します。自主行動宣言の様式には20種類程度の「取り組み項目」が挙げられていますが、両事例はそのなかでも代表的なケースです。

①パレット活用

トラックで運ぶ貨物が段ボールのバラ積みだと、ドライバーの作業負荷は高まり、作業時間も長くなってしまいます。

そのような課題を踏まえ、加工食品メーカーA社では、出荷する製品を原則的にパレット積みにすることとしました。荷受け側の倉庫もパレットのまま保管できるよう、取引先の卸売業とも協議したうえで、業界標準サイズのパレットを採用しました。これによって、トラックドライバーの作業時間は大きく削減しました。

②船舶へのモーダルシフト

ドライバーの労働時間を削減するうえで、課題となるのが片道600kmを超えるような長距離輸送です。

トラック運送会社B社では、そのような長距離輸送では船舶を積極的に活用することにしました。具体的には、関西から北関東へ向かう便では、三重県と神奈川県をつなぐフェリー航路を利用することにしました。フェリー乗船時間をドライバーの休息時間に充てることで、ドライバーの労働条件を大幅に改善することができました。

3.ホワイト物流推進運動に賛同するメリット

次に、ホワイト物流推進運動に賛同することによるメリットを紹介します。企業にとっても以下のようにさまざまなメリットがありますので、賛同企業になることを前向きに検討すると良いでしょう。

(1)SDGsの目標達成に向けた企業姿勢のPRになる

冒頭に述べたとおり、ホワイト物流は、SDGsの目指す方向性と一致しています。したがってホワイト物流推進運動への賛同表明は、企業がSDGsの目標達成に取り組んでいることを示す絶好のPR機会になります。賛同企業名は、国交省が運営する推進運動の公式ホームページで公表されますので、高いPR効果を期待できます。

(2)自社の物流改善の推進力になる

自社の物流改善を進める「旗印」として、「ホワイト物流の推進」をうまく活用している企業もあります。

物流の改善には多様な関係者の協力が求められ、自社の経営トップや顧客企業の説得が必要な場合もあります。その際、「ホワイト物流推進運動への参画」という切り口で、協力の要請を行うことが有効です。「トラック不足でモノが運べなくなるかもしれない」という危機意識は、広く産業界で共有されていますので、取り組みの必要性への理解を得やすくなるのです。

(3)国の補助金申請の際に考慮される

物流関連の補助金などを申請する際に、推進運動への賛同がプラスに評価される場合があります。例えば、国交省の「モーダルシフト等推進事業費補助金」では、ホワイト物流推進運動への賛同表明を、評価に利用する項目の例として挙げています。

この他にも評価項目として利用されているケースがあります。国交省・経産省の両省による「グリーン物流パートナーシップ優良事業者表彰」という表彰制度の応募書類には、ホワイト物流推進運動への賛同表明の有無を記入する必要があります。受賞者の決定にどの程度反映されるかは明示されていませんが、評価の参考にはされているはずです(いずれも2022年6月時点の情報に基づく)。

補助金などの制度は年度ごとに変更されますので、今後も同様に評価されるとは限りません。しかし、ホワイト物流の推進は国の重要な政策であることを踏まえると、当面は同様なケースで評価項目として活用されると考えられます。

海老名SAの駐車場に並ぶ物流トラック
深夜の東名高速・海老名SAの駐車場に並ぶ物流トラック=2020年5月、神奈川県海老名市(撮影・朝日新聞)

4.ホワイト物流推進運動に賛同する前に知っておきたいこと

ホワイト物流推進運動に実際に賛同する際に、あらかじめ知っておくべきポイントをいくつかご紹介します。

(1)賛同にはデメリットはない

賛同企業になるために必要な手続きは簡単で、前述の自主行動宣言を提出するだけです。物流量、出荷先など自社の企業秘密情報を記入する必要もありません。

自主行動宣言に記載した内容を実現できなかったときのことが気になるかもしれませんが、そのような場合にも、罰則が課せられるといったことはありません。もちろん、そのような事態に至らないように、実現を目指す必要はあります。

このように、書類作成に多少の手間がかかるという点をのぞくと、賛同したことによるデメリットは、特に想定できません。

(2)荷主企業は物流事業者との連携がポイント

賛同するために提出する自主行動宣言には、「予約受付システムの導入」「パレット等の活用」など数多くの項目が挙げられており、このなかから自社の取り組み項目を選択する様式となっています。荷主企業の担当者としては、このうち、どの項目を選んで提出すべきか、悩まれるかもしれません。

その場合にはまず、自社の物流現場を担っている委託先物流事業者の悩みや要望を聞き、改善項目に反映することが必要です。というのも、自社の物流の「ホワイト化」を阻(はば)んでいる要因が長時間待機なのか、手荷役作業の多さなのかといった実態は、現場を担当している当事者でないと正確に把握できないからです。

そのような意味で、宣言作成の前にまず、物流事業者と意見交換の機会を設けることが望ましいでしょう。専門の物流事業者ならではの改善アイデアを仕入れることができるかもしれません。

(3)トラック運送業は「働きやすい職場認証」の取得もおすすめ

国のホワイト物流関連の政策には、推進運動と並んでもう一つ、「働きやすい職場認証」という大きな柱があります。これは、労働法令の順守をはじめとする一定の条件を満たすトラック運送会社などを、「働きやすい職場」として公的に認証する制度です。この制度は、同様にドライバー不足が問題となっているバスやタクシーも対象です。

制度自体は2021年に創設されたばかりですが、すでに多数の会社が認証を取得しています。今後は求職者が運送会社の求人に応募する際に、認証を取得しているかどうかを判断材料にするケースが増えることが予想されます。

そのため、人手不足に悩む会社は、推進運動への賛同とあわせて、職場認証の取得も検討することをおすすめします。なお、職場認証の対象は運送業などに限られます。認証取得の方法など詳しくは、下記のホームページをご参照ください。

5.ホワイト物流は喫緊の課題

前述のとおり、ドライバー不足が産業界の重大な関心事となっていますが、この問題は今後、さらに深刻化することが予想されています。

実は現在の法規制では、ドライバーは他産業よりも長時間の残業が許容されているのですが、働き方改革の観点から、この規制を「他産業並み」へと改めることが決まっています。具体的には、2024年にドライバーの残業時間の上限規制に関する制度改正を行う予定となっています。

言うまでもありませんが、残業時間が減るということは、同じ量の貨物を運ぶのに、より多くのドライバーが必要ということになります。従ってこの改正によって、ドライバー不足が更に深刻化することがほぼ確実です(これを業界では「2024年問題」と呼んでいます)。

ホワイト物流の目的はドライバー不足の解消ですが、ドライバー不足は解消するどころか、悪化することが予想されているわけです。

目前に迫る2024年に向けて、推進運動への賛同を手始めに、各社がホワイト物流に早急に取り組むことが必要だと言えるでしょう。

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