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脱炭素化に向けて注目のバイオ燃料 原料や問題点、作り方などを解説

脱炭素化に向けて注目のバイオ燃料 原料や問題点、作り方などを解説
バイオ燃料の種類とメリット・デメリット(デザイン:増渕舞)
IHテクノロジー社顧問・ブロガー/財部明郎

気候変動対策として、世界ではさまざまな取り組みが行われていますが、バイオ燃料も化石燃料の代わりとなるエネルギー源として注目されています。この記事では、自動車や航空機で使用されるバイオ燃料について、その種類や原料、利点や問題点、作り方などについて紹介します。

財部明郎さん
財部明郎(たからべ・あきら)
1953年生まれ。1978年九州大学大学院工学研究科応用化学修了。同年三菱石油(現ENEOS)入社。以降、本社、製油所、研究所、調査会社などを経て2019年退職。在職中はエネルギー調査のため世界20カ国以上を訪問。また、ブログ「世界は化学であふれている」を運営し、エネルギー、自動車、プラスチック、食品などを対象に、化学や技術の目から見たコラムを執筆している。石油産業誌に『明日のエコより今日のエコ』連載中。技術士(化学部門)。

1.バイオ燃料とは

バイオ燃料とは、生物資源(バイオマス)を原料とした燃料のことです。昔から使われてきた薪や炭、和ろうそくなども、それにあたります。ほかに、バイオマス発電に使われる木材チップや家畜糞尿(ふんにょう)から出るバイオガスなどもバイオ燃料に分類されることがあります。

この記事では、自動車や航空機で使用されるバイオ燃料に焦点を当てて解説します。

(1)バイオ燃料の種類とそれぞれの原料

バイオ燃料には、以下のようにさまざまな種類があります。

バイオ燃料の種類
バイオ燃料の分類(筆者作成)

このなかでも、代表的なものがバイオエタノール・バイオディーゼル・バイオジェットの三つです。それぞれの原料とあわせて詳しくご紹介します。

①バイオエタノール

バイオエタノールとは、植物を原料にしたバイオ燃料です。化学的にはエタノールと同じもので、エチルアルコールともいわれます。お酒の成分としてよく知られています。

精製するときは、そのバイオ燃料を製造する地域で手に入れやすいものが使われます。例えば、バイオエタノールの生産量が最も多いアメリカでは、中西部に広がる広大な農地で作られるトウモロコシを原料としています。

世界第二のバイオエタノール生産国はブラジルで、サンパウロ州を中心とした南東部(サンパウロ州、パラナ州、ミナスジェライス州など)で栽培されているサトウキビを原料としています。ちなみに、バイオエタノールがアマゾンの破壊につながっているといわれることがありますが、サトウキビはアマゾンでは栽培されていません。ヨーロッパで原料として使われるのは小麦、東南アジアではキャッサバなどです。

また、近年では農林業廃棄物(例えば、トウモロコシの芯や茎、林地残渣《ざんさ》など)や成長の早い樹木、雑草類などのセルロース系バイオマスを原料とすることが研究されていて、これを第二世代バイオエタノールといいます。

②バイオディーゼル

バイオディーゼルとは、植物性や動物性の油脂を原料としたバイオ燃料です。

例えば、植物性ならパーム油、ナタネ油、大豆油、カメリナ油、ジャトロファ油、動物性の油脂ならタローオイル(牛脂)が使われます。

バイオディーゼル原料として期待されるジャトロファ
バイオディーゼル原料として期待されるジャトロファ(筆者提供)

また、ユーグレナやボトリオコッカスのような微細藻類から産出される油類も提案されています。一度、てんぷらなどの調理に使った植物油(廃食用油)が用いられることもあります。 

バイオディーゼルにも第一世代と第二世代があり、その違いは製造方法です。第一世代はメチルエステル化、第二世代は水素化という方法で作られます。

③バイオジェット

バイオジェットとは、現在、ジェット燃料の代替となる燃料として世界中で研究・開発されている再生可能航空燃料(Sustainable Aviation Fuel=SAF)のひとつです。植物油や糖類、あるいは古紙などのバイオマスを原料としています。

(2)バイオ燃料の活用事例

現在、ガソリン車にはガソリン、ディーゼル車には軽油、ジェット機にはジェット燃料がそれぞれ使われていますが、バイオ燃料はこれらの石油系燃料の代わりとして使うことができます。

①ガソリンの代わりとして活用

ガソリンの代わりとして活用されているのが、バイオエタノールです。アメリカで販売されているガソリンのほとんどにはバイオエタノールが10%混合されていて、近年では混合率を15%まで増やしたものも市販されています。さらに、バイオエタノール混合率を85%まで増やした燃料E85も一部市販されていますが、これはE85専用車しか用いることができません。

バイオエタノール生産量第二位のブラジルでは、市販されているガソリンに必ず20から25%のバイオエタノールが混合されています。そのほかに、ガソリンでも100%のバイオエタノールでも燃料にすることができるフレックス車という車両が発売されており、ブラジルで新規販売される車両の80%以上がフレックス車となっています。

一方で、バイオエタノールをそのままガソリンに混合して使うと、自動車の部品に悪影響を及ぼすことや流通過程で水の混入が問題となることがあります。そのため、ヨーロッパや日本では、バイオエタノールにイソブテンというLPGの一種を化合させてETBE(Ethyl Tert-Butyl Ether:エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)というバイオ燃料にし、ガソリンに混合して使っています。ETBEはバイオと石油のハイブリッド燃料といえるでしょう。

②軽油の代わりとして活用

軽油の代わりとして活用されているのが、バイオディーゼルです。第一世代のバイオディーゼルは特にヨーロッパでの生産量が多く、軽油に混合して市販されています。一方の第二世代のバイオディーゼルは、石油から作られた軽油よりもむしろ優れた性能を持っているため、注目が集まりつつあります。

我が国においても、主に廃食用油を原料としたバイオディーゼルが作られています。例えば、京都市では、市内の飲食店などから回収した廃食用油をバイオディーゼルに加工して、市内のゴミ収集車やバスの燃料として使用しています。

バイオディーゼル燃料で走るマツダの小型車デミオ
バイオディーゼル燃料で走るマツダの小型車デミオ=2021年11月、岡山県美作市の岡山国際サーキット(撮影・朝日新聞)

④バイオジェット(SAF)

ジェット燃料の代わりとして活用されているのがバイオジェットです。多くはまだ試験段階ですが、一部は実際の旅客機に使用して商業運転が始まっているものもあります。例えば、我が国ではJALとANAがそれぞれ羽田発の定期便で使用した実績があり、今後も積極的に使用を増やしていく予定です。

2.バイオ燃料のメリット・デメリット

次に、バイオ燃料のメリット・デメリットについてご紹介します。

(1)バイオ燃料のメリット

①大気中のCO2を増加させない

バイオ燃料は、自動車やジェット機で使用すると二酸化炭素(CO2)を発生します。その点は石油系燃料と同じですが、バイオ燃料の場合、原料となる植物は成長するときに空気中のCO2を吸収しています。そのため、結果的に大気中のCO2を増加させません。この差し引きゼロの関係を、カーボンニュートラルといいます。

また、この点から、SDGs(持続可能な開発目標)の目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や目標13「気候変動に具体的な対策を」にも寄与します。

SDGs目標7、13のアイコン

ただし、これはバイオ燃料を燃やして発生するCO2に限ったもので、製造過程や流通過程で化石燃料を使った場合に発生するCO2は考慮されていません。

②インフラがそのまま使える

現在使われているガソリンや軽油などとほぼ同じ流通設備で、運搬や貯蔵をすることができます。また、使用する自動車や航空機についても、若干の改造が必要になる場合もありますが、基本的に現在のものをそのまま使うことができます。 

③海外からの輸入に頼らずに済む

バイオ燃料は農作物を原料とするものであり、それらは国内で生産できるため、石油のように海外からの輸入に頼る必要がありません。このため、特に農業国ではエネルギー安全保障上の利点があります。 

④農業振興につながる

バイオ燃料は農業従事者にとって重要な収入源となっています。特に農業国においてはバイオ燃料は非常に重要です。バイオ燃料の最も大きな利点は農業振興かもしれません。

(2)バイオ燃料のデメリット

①食料と競合する

バイオ燃料を推進するなかでよく聞くのが、食料として使えるものを燃料としていいのかという疑問です。確かに、世界には飢餓に苦しむ多くの人たちがいます。しかし、食料を作っても余剰となって販売できないため、休耕地や耕作放棄地となる農地も世界には多数存在します。またバイオ燃料の製造や販売によって雇用が生み出され、これで収入を得ている人たちもいます。単純にバイオ燃料を作った分だけ飢餓が進むわけではありません。

②森林を伐採して結果的に環境を壊してしまうことがある

バイオ燃料を増産するために、新たに農地を増やす必要がありますが、このために森林を伐採する場合は問題があります。森林は野生生物のすみかとなっているのに加え、空気中の湿度の調整をしたり、洪水を防いだりしていることがあるからです。

また、森林は数千年から数万年かけてCO2を吸収し、その一部が腐葉土や泥炭として貯蔵されています。森林を農地に変えると、CO2が再び大気に出ていくことになるため、気候変動を促進しかねません。

3.バイオ燃料の今後

経済産業省の第6次エネルギー基本計画では、2035年までに乗用車新車販売の電動化率を100%にするとされています。ただ、商用車については電動化と脱炭素燃料使用車の導入が併記されており、この脱炭素燃料としてバイオ燃料が導入される可能性があります。

一方、航空機については、国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)が、2020年以降、温室効果ガスの排出を増加させないという目標を掲げています。航空機は電動化が難しいため、CO2を出さない航空燃料(SAF)の開発が世界的に進められていますが、このなかでもバイオ燃料が最も期待されている燃料です。

4.バイオ燃料の作り方

最後に、上記でご紹介したバイオ燃料の作り方をご紹介します。なかには自分で作れるものもあるので、温室効果ガス削減のために自分でできることはないだろうか、と考えている人は挑戦してみてはいかがでしょうか。

(1)第一世代バイオエタノール

第一世代のバイオエタノールの作り方は、基本的にお酒の作り方と同じです。原料がサトウキビのような糖の場合はそのまま、トウモロコシのようなデンプンの場合は酵素によって分解して糖にしてから、酵母菌を使って発酵させます。この発酵のあと、蒸留、脱水処理を行って純度100%に近いバイオエタノールが得られます。個人で作ろうとする場合は酒税法の適用を受けることがあるので、注意してください。

(2)第二世代バイオエタノール

第二世代のバイオエタノールは植物の茎や葉、幹の部分の成分であるセルロースやヘミセルロースを原料にします。原料は酵素や薬品を使うことによって糖にし、あとは第一世代と同じように酵母発酵を行ったあと、蒸留・脱水します。ただ、一部の糖類は酵母発酵ができないため、特殊な微生物を使って発酵を行います。 

(3)第一世代バイオディーゼル

原料の植物油に、天然ガスから作ったメタノールとアルカリ触媒を加えて、60度前後に加熱することによりエステル化反応を行わせます。その後、副次的にできるグリセリンを静置分離除去することでバイオディーゼルができます。これはせっけんの工業的な製造方法と同じで、個人でも作ることができますが、アルカリ触媒は有害なので、皮膚への付着、特に目に入らないように十分注意してください。

(4)第二世代バイオディーゼル(HVO)

原料の植物油に水素を加えて400度、圧力5MPa(メガパスカル)程度の高温高圧下で水素化触媒を使って水素化分解します。水素を使うのでHVO(Hydrotreated Vegetable Oil)ともいいます。この反応によってプロパンが副次的に生成するので、これを分離して第二世代バイオディーゼルができます。また水素化分解のあと、異性化反応を行わせて低温流動性を改善することもあります。これらは石油精製で用いられる方法と同じです。 

(5)バイオジェット

バイオジェットについては、さまざまな製造方法が提案されていますが、まだ確立した方法はありません。最も有力なのは第二世代バイオディーゼルと同じ原料と製造方法を使う方法です。そのほかには、バイオマスをいったんガスにしたあと、フィッシャー・トロプシュ法によって液体のジェット燃料とする方法などがあります(これをBTL《Biomass To Liquids》といいます)。

5.バイオ燃料は畑で採れる石油

実はバイオ燃料は新しいものではありません。例えば、ヘンリー・フォードが作った自動車も最初はバイオエタノールが使えるようになっていました。また、ルドルフ・ディーゼルがディーゼル機関を発明したときに使った燃料は植物油だったといいます。

その後、石油技術が進んだため、もっぱら石油が自動車用の燃料として使われるようになりましたが、そもそもバイオ燃料は当初から自動車や航空機の燃料として用いられていたものです。

いうなれば、バイオ燃料は畑で採れる石油です。農業は食料だけを生産するものではありません。綿や絹などの繊維や天然ゴム、洗剤の原料など食料以外のものも生産されてきました。だから燃料を作る農業があってもおかしくはないと思います。

バイオ燃料は、気候変動やエネルギーへの対応だけでなく、貧困や飢餓、技術革新にも貢献できる可能性があります。一時期「食料か燃料か」という論争が起こりました。しかしバイオ燃料は「食料か燃料か」ではなく、「食料も燃料も」という方向に進むべきでしょうし、それは可能です。

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