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アースオーバーシュートデー、2022年は7月28日 1年間の生物資源を使い果たす日

アースオーバーシュートデー、2022年は7月28日 1年間の生物資源を使い果たす日
グローバル・フットプリント・ネットワーク提供
編集部

地球が1年間に生み出す生物資源を人類が使い果たしてしまう日を示す「アースオーバーシュートデー」。2022年は、7月28日にその日を迎える。人類は1年間で「地球1.75個分」の資源を消費していることになる。「地球1個分」の持続可能な暮らしを実現するために、私たちはどうすべきだろうか。(編集部・竹山栄太郎)

アースオーバーシュートデーとは

アースオーバーシュートデー(Earth Overshoot Day)は、地球の生態系がその年に食料や衣類・建材などとして供給できるすべての生物資源の容量(バイオキャパシティー)を、年初から数えて人類が使い果たす日を指す。オーバーシュートは「行き過ぎる」という意味で、人類の資源使用量はこの日に地球の再生能力を超え、年末まで地球に「借金」しながら暮らすことになる。

アースオーバーシュートデーの日付は年によって変わり、毎年、国際環境シンクタンクのグローバル・フットプリント・ネットワーク(Global Footprint Network)が発表している。国連の統計資料などをもとに、バイオキャパシティーと、人間活動による使用量(地球環境への負荷)を示すエコロジカルフットプリントを比較することで算出され、計算式は以下の通り。

(地球のバイオキャパシティー÷人類のエコロジカルフットプリント)×365=アースオーバーシュートデー

バイオキャパシティーには、森林や放牧地、農地、漁場などが含まれ、エコロジカルフットプリントには農畜産物や水産物、林産物、二酸化炭素を吸収するための森林などの需要量が含まれる。(参照:About Earth Overshoot Day|アースオーバーシュートデーの公式サイト

50年以上続く「赤字」状態

地球の生態系は1970年代初頭にオーバーシュートに突入した。アースオーバーシュートデーは1971年には12月25日だったが、年々早まる傾向にあり、10年ごとにみると以下のようになる。

1972年 12月14日

1982年 11月19日

1992年 10月15日

2002年 9月21日

2012年 8月4日

2022年 7月28日

(出典:Past Earth Overshoot Days|アースオーバーシュートデーの公式サイト。National Footprint and Biocapacity Accounts 2022 Editionをもとに再計算した日付で、リンク先に一覧がある)

2020年は前年より24日遅い8月22日だったが、これはコロナ禍で資源使用量が減った影響によるもので、グローバル・フットプリント・ネットワークは「例外的」だと指摘している。2021年は7月30日(発表時は7月29日)だった。

2022年の7月28日は、2018年と並んで過去もっとも早かった。地球が1年間かけて生み出す生物資源を、人類が7カ月足らずで使いきることを意味する。

1971年以降のアースオーバーシュートデー
1971年以降のアースオーバーシュートデー(2022年のデータをもとに再計算した日付。グローバル・フットプリント・ネットワーク提供)

オーバーシュートが50年以上続いていることは、「生態学的赤字」が積み重なっていることを意味する。グローバル・フットプリント・ネットワークと協力関係にある日本のNPOエコロジカル・フットプリント・ジャパンによると、オーバーシュートの蓄積により、「耕作地の生産性の低下、漁場資源の枯渇、生物多様性の損失、地球温暖化などの問題につながっている」という。

世界中が日本の消費水準だと5月6日

グローバル・フットプリント・ネットワークは、国別のオーバーシュートデーも公表している。これはその国の人々と同じ水準で全人類が地球の資源を消費した場合、使い果たしてしまう日付だ。資源の消費量が少ない国の場合は、「なし」ということもある。

2022年のデータでは、日本は世界全体(7月28日)よりも3カ月近く早い5月6日だった。主な国の日付は以下の通り。

2月10日 カタール

3月13日 カナダ、アラブ首長国連邦、米国

3月23日 オーストラリア

4月2日 韓国

5月4日 ドイツ、イスラエル

5月5日 フランス

5月6日 日本

5月12日 スペイン

5月19日 英国

6月1日 南アフリカ

6月2日 中国

8月12日 ブラジル

11月11日 エジプト

12月3日 インドネシア

12月20日 ジャマイカ

なし アフガニスタン、バングラデシュ、インド、ケニア、ジンバブエなど

(出典:Country Overshoot Days|アースオーバーシュートデーの公式サイト

国別のオーバーシュートデー
国別のオーバーシュートデー(グローバル・フットプリント・ネットワーク提供)

先進国のほうが、よりたくさんの資源を利用していることは言うまでもない。グローバル・フットプリント・ネットワークによると、世界中の人々が日本人と同じ水準の暮らしをしたら地球は「2.9個」必要となり、日本人の需要に応えるためには日本が「7.8個」必要になるという。

世界中の人々が日本人と同じ水準の暮らしをしたら、地球は2.9個必要になる
世界中の人々が日本人と同じ水準の暮らしをしたら、地球は2.9個必要になる(グローバル・フットプリント・ネットワーク提供)

「使い果たす日」を遅らせるためにできること

早まる傾向が止まらないアースオーバーシュートデー。この日付を遅らせ、「地球1個分」の暮らしに近づけるために何ができるだろうか。

グローバル・フットプリント・ネットワークの公式サイトでは、「可能性の力(Power of Possibility)」と題したページで、オーバーシュートを解消するための解決策を紹介している。そのなかで紹介されている取り組みには以下のようなものがある(かっこ内はアースオーバーシュートデーの改善効果)。

・炭素1tあたり100ドルのカーボンプライシングの設定(63日)

・再生可能エネルギーの拡大=低炭素源から75%の電力生成(26日)

・世界の食品廃棄物を半分に削減(13日)

・カーシェアリングの普及(3日)

・家庭の照明のLEDへの移行(1.8日)

また、エコロジカル・フットプリント・ジャパンは、「日本のエコロジカル・フットプリントを削減する5つの方法」として以下を呼びかけている。

1. 省エネと再生可能エネルギーへの転換を進める。

2. 都市集中ではなく分散型の居住と経済を推進する。

3. 輸入製品の環境負荷を減らす。

4. 食生活を見直し、加工食品の利用を抑え、季節の地元産の利用を増やす。

5. 食料廃棄を減らす。

グローバル・フットプリント・ネットワークの創設者マティス・ワケナゲル氏は、「資源の確保は、経済力を左右する重要な要素になりつつある。気候変動と資源制約がさらに進むという避けられない未来において、自ら率先して資源を適切にマネジメントする能力を高めることが、すべての都市、企業、国の利益となるはずだ」とのコメントを発表している。

竹山栄太郎
竹山栄太郎 ( たけやま ・えいたろう )
朝日新聞SDGs ACTION!副編集長。2009年に朝日新聞社入社。京都、高知の両総局を経て、東京・名古屋の経済部で通信、自動車、小売りなどの企業を取材。2021年にSDGs ACTION!編集部に加わり、2022年11月から副編集長。
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