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焼おにぎりを除菌ティッシュに ニチレイフーズ、「ハミダス」が生んだアップサイクル

焼おにぎりを除菌ティッシュに ニチレイフーズ、「ハミダス」が生んだアップサイクル
ニチレイフーズの「『焼おにぎり』除菌ウエットティッシュ」のパッケージ(左)とウエットティッシュ
編集部

ロングセラーの「焼おにぎり」が除菌ティッシュに――。冷凍食品を製造販売するニチレイフーズが、焼おにぎりの工場から出た規格外のごはんを「アップサイクル」した除菌ウエットティッシュを売り出した。異色の商品が生まれた背景には、「ハミダス活動」とよばれる、担当にとらわれない挑戦を促す社内の仕組みがあったという。(編集部・竹山栄太郎)

看板の食品が全く違うジャンルで「変身」

ニチレイフーズは2022年7月、「『焼おにぎり』除菌ウエットティッシュ」を生活雑貨店のロフトで先行発売した。冷凍食品「焼おにぎり10個入」の生産過程で発生する、製品にできないごはんを発酵・蒸留のうえエタノールにし、グループフルーツ種子のエキスなどを配合した。不織布にも植物由来の生分解性セルロースを使い、環境負荷を減らしたという。

「焼おにぎり10個入」はニチレイフーズの看板商品で、大阪・高槻の関西工場で生産している。生産過程ではラインからこぼれたり、形が崩れたりした「規格外ごはん」が発生してしまうという。

ニチレイフーズではこのような残渣(ざんさ)を以前から肥料や飼料にリサイクルし、廃棄を防いできた。今回、別のものに作り替えて付加価値をむしろ高める「アップサイクル」を実現しようと、独自の発酵技術を持つスタートアップのファーメンステーション(東京)と組んだ。規格外ごはんからエタノールと発酵粕を生成。エタノールは除菌ウエットティッシュに使い、発酵粕はニワトリの飼料にする。

10枚入りで税込み187円。7月19日からロフトの全国22店舗で販売しており、10月末までの3カ月間で4万個の販売をめざす。

「アップサイクル商品」であることをアピールする
銀座ロフトの売り場に掲げられたパネル。「アップサイクル商品」であることをアピールする=2022年7月19日、東京・銀座

パッケージにもなじみ商品由来のこだわり

ニチレイフーズは、この商品がSDGsの目標12「つくる責任つかう責任」の達成に貢献するとしている。なぜ焼おにぎりから除菌ウエットティッシュなのか。発案者の原山高輝さんは、「食に携わるメーカーとして、フードロスの削減やリサイクルは『一丁目一番地』。肥料や飼料へのリサイクルにはすでに取り組んでいるものの、『プラスα』の価値をつけたいと考えました」と話す。

そこで目をつけたのが発酵技術だ。最初は主力商品の「本格炒め炒飯(チャーハン)」の活用を検討したが、具材や油分を含む残渣では発酵がうまくいかないとわかり、焼おにぎりを原料にすることになったという。

パッケージデザインは、冷凍食品のものを引き継いでいる。「長く親しまれている商品のパッケージにすることで、楽しんで使ってもらえればという思いです。SDGsのストーリー性とバラエティーグッズのおもしろさ、どちらかだけではダメで、両立することにこだわりました」(原山さん)

「焼おにぎり10個入」とパッケージデザインを合わせた
「『焼おにぎり』除菌ウエットティッシュ」(左)のパッケージデザインは「焼おにぎり10個入」と合わせた
銀座ロフトの店頭に並んだ品々
銀座ロフトの店頭に、先行販売のため並んだ品々=2022年7月19日

社会課題解決のため担当領域をハミダシて活動

ニチレイフーズでは、従業員が自分の担当領域を越えて社会課題解決に取り組む「ハミダス活動」をおこなっている。2011年の開始当初は社内の風土改革が目的だったが、いまでは環境保護やSDGsにまで活動領域が広がっているそうだ。

今回の除菌ウエットティッシュはこの活動の一環で生まれた。原山さんはマーケティング部広報グループに所属しており、「『食品残渣をもっと有効活用できないか』という声が社内で上がっており、その思いを受けて発案した」という。

ニチレイフーズの原山高輝さん
ニチレイフーズの原山高輝さん=2022年7月19日、東京・銀座の銀座ロフト

原山さんは「ほかの残渣の活用や、ウエットティッシュ以外のものを作ることも模索していきたい」と話した。

竹山栄太郎
竹山栄太郎 ( たけやま ・えいたろう )
朝日新聞SDGs ACTION!副編集長。2009年に朝日新聞社入社。京都、高知の両総局を経て、東京・名古屋の経済部で通信、自動車、小売りなどの企業を取材。2021年にSDGs ACTION!編集部に加わり、2022年11月から副編集長。
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