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水素燃焼の家庭用給湯器をリンナイ開発 CO2排出削減へ、2030年ごろの投入めざす

水素燃焼の家庭用給湯器をリンナイ開発 CO2排出削減へ、2030年ごろの投入めざす
水素給湯器のコンセプトモデル(左が外観、右が内部、記事中の画像はいずれもリンナイ提供)
編集部

ガス機器大手のリンナイ(名古屋市)は、水素だけを燃料とする家庭用給湯器を開発したと発表した。同社によると、家庭用給湯器での水素100%の燃焼技術は「世界初」だといい、2030年ごろの市場投入をめざす。給湯器は家庭部門の主な二酸化炭素(CO2)排出源の一つ。天然ガスの代わりに、CO2を排出しない水素を使う給湯器が実用化すれば、脱炭素社会の実現に寄与する。ただ、家庭に水素を届けるためのインフラ整備が普及の条件となる。(編集部・竹山栄太郎)

燃料の不安定さ克服へ技術開発

リンナイは2022年5月、「水素100%給湯器」の報道関係者向け発表会を開いた。水素は爆発の危険性があり、燃焼が不安定であることが課題。従来のガス用バーナーでは対応できないといい、専用のバーナーの開発を進めてきた。

水素は天然ガスの約8倍の速度で燃えるため、バーナー内部に炎が入る「逆火」という現象が起きやすく、バーナーの損傷や爆発につながる。そこでバーナーの素材や機器の構造を見直し、安全性を高めた。

水素バーナーでの燃焼の様子
水素バーナーでの燃焼の様子

また、水素供給のインフラが整った時点で天然ガスからスムーズに切り替えられるよう、天然ガスでも使え、簡単な部品交換で水素に対応できる仕組みにした。開発は3年ほど前から始め、「100はくだらない数のトライ・アンド・エラーをおこなった」(担当者)という。

水素インフラの整備に積極的なオーストラリアで2022年11月から実証実験をおこない、商品化をめざす。2030年ごろに市場投入するのが目標だという。

天然ガスと水素が燃える様子の比較
天然ガスと水素が燃える様子の比較。水素の炎は無色で見えない
サーモグラフィーで比較した様子
サーモグラフィーで見ると、水素バーナーのほうも温度が上がっていることがわかる。水素のほうが天然ガスより燃焼速度が速いため、炎の高さは低くなるという

1社で日本の排出量の「1.5%」

水素給湯器の開発の背景にあるのは、世界的なカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の潮流だ。

日本のCO2排出量(2019年度で11億tあまり)の15%前後が家庭部門からとされる。リンナイの試算によると、同社製の給湯器や暖房機器の使用によるCO2排出量は日本全体の「約1.5%」にあたるといい、内藤弘康社長は「リンナイのCO2排出削減への取り組みは日本の排出削減にとって大きな役割を担う」と話す。

リンナイは2021年11月、2050年に事業活動と商品使用時のCO2排出を世界全体でいずれも実質ゼロにする目標を発表した。従来型のガス給湯器から水素給湯器への切り替えを進めることが目標達成のカギを握る。

リンナイの2050年に向けた商品ロードマップ
リンナイが考える2050年に向けた商品ロードマップ

インフラ整備が前提に

ただ、その前提となるのが水素供給インフラの整備だ。日本では東京五輪・パラリンピックの選手村など局地的な動きにとどまっている。国内のガス各社はCO2排出削減策として、再生可能エネルギーなどで生成した水素とCO2から天然ガスの主成分のメタンを合成し(メタネーション)、既存のガス供給網を使って届ける方法を有力視している。

一方、水素導入に積極的なのはオーストラリアのほか、ニュージーランド、英国などで、ガス供給網を水素用に転換することも視野に入れており、水素給湯器の販売先の候補になる。リンナイの海外売上高比率は5割前後にのぼるため、各国の状況もみながら水素給湯器の開発を続ける構えだ。

内藤社長は、「化石燃料を使う給湯器を手がけているため、(脱炭素の流れが強まり)矢面に立たされてきた。CO2を出さない水素は我々にとって救世主だ。インフラさえ整えば水素用の給湯器メーカーとしてやっていけることになる」と話し、インフラ整備に期待を示した。

竹山栄太郎
竹山栄太郎 ( たけやま ・えいたろう )
朝日新聞SDGs ACTION!副編集長。2009年に朝日新聞社入社。京都、高知の両総局を経て、東京・名古屋の経済部で通信、自動車、小売りなどの企業を取材。2021年にSDGs ACTION!編集部に加わり、2022年11月から副編集長。
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