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下水処理場の遊休地で再エネ発電 秋田県・市の計画が「脱炭素先行地域」に

下水処理場の遊休地で再エネ発電 秋田県・市の計画が「脱炭素先行地域」に
再生可能エネルギー導入を計画する秋田臨海処理センター。一帯は風力発電の適地で、奥に見える風力発電設備は民間企業が運営するもの=秋田市
編集部

下水処理場が脱炭素に貢献――。下水処理場の遊休地に太陽光や風力発電設備を設け、再エネ由来の電力を周辺の公共施設で活用する秋田県・市の計画が、環境省の「脱炭素先行地域」に選ばれた。年間約1万tの二酸化炭素(CO2)排出量を減らすだけでなく、人口減少に直面する下水道事業の経営改善にもつなげるねらいだ。(編集部・竹山栄太郎)

3種類の再エネ発電を組み合わせ

秋田県の提案名は「流域下水道を核に資源と資産活用で実現する秋田の再エネ地域マイクログリッド」。2022年4月、2030年度までに電力由来のCO2排出の実質ゼロをめざす「脱炭素先行地域」の第一弾26地域のなかに選ばれた。

秋田県が秋田市向浜地域で運営する下水処理場「秋田湾・雄物川流域下水道 秋田臨海処理センター」と、近隣にある秋田市運営の屎尿(しにょう)処理場「秋田市汚泥再生処理センター」に再生可能エネルギーの発電設備を設け、発電した電力を周辺の公共施設に供給する。事業期間は2022~2025年度の4年間で、県の総事業費は約45億円。脱炭素先行地域に選ばれたことで国からの支援を受けられる。

脱炭素先行地域に選定された計画の全体図
脱炭素先行地域に選定された計画の全体図(秋田県提供)
秋田臨海処理センターでの再生可能エネルギーの導入計画
秋田臨海処理センターでの再生可能エネルギーの導入計画(秋田県提供)

県の秋田臨海処理センターでは、消化ガス・風力・太陽光という3種類の再エネ発電設備を新たに設ける計画だ。消化ガス発電は、下水汚泥を消化槽で発酵させる際に出るガスを使う発電で、導入量は800kW。風力発電は2300kWで、1基を想定する。周辺は冬場を中心に強い風が吹き、全国トップクラスの適地とされるため、民間企業の風力発電設備も多く建っている。一方、太陽光発電は5000kW。一般に雪国は太陽光発電にあまり適していないとされるが、この地域は強風のために太陽光パネルの上に雪が積もらず、冬でも発電が見込めるという。

これとは別に、市の汚泥再生処理センターにも500kWの太陽光発電設備を設ける。

発電した電気は二つのセンターで自己消費し、余った分は電線を通じて約2km離れた地区にある県立総合プールなど七つの公共施設に送る。不足する電力は外部から再エネ電力を購入し、全体として電力由来のCO2をゼロにすることをめざす。

民間企業が周辺で構える風力発電設備
秋田臨海処理センターからは、民間企業が周辺で構える風力発電設備が見える

センター内の空き地利用で一挙両得

下水処理場でなぜ脱炭素に取り組むのか。それにはいくつかの背景がある。

秋田臨海処理センターは、秋田市や男鹿市など3市4町1村をカバーする県内最大の下水処理場で、1日平均11万3000m3の汚水を受け入れている。

秋田臨海処理センターの沈砂池
秋田臨海処理センターの沈砂池

秋田県が直面する最大の課題が人口減少だ。汚水量の減少は下水道事業の経営悪化につながる。効率化のため、県は県内の処理場の数を2015年度の243カ所から、2035年度には約半分の122カ所に減らす方針。2020年度から秋田市が担当していた市中心部の処理区を秋田臨海処理センターで引き受けるなど、集約によるコスト削減を進めているが、さらなる経営改善策が求められる。

一方、脱炭素も喫緊の課題だ。県は2022年4月、「2050年カーボンニュートラル」を宣言した。CO2排出量を2030年度に2013年度比で54%削減する目標(森林吸収分含む)で、日本政府の46%削減より高い水準を掲げる。秋田臨海処理センターは県有施設全体の約1割にあたる年間約8000tのCO2を排出しており、この削減は県全体の目標達成のカギとなる。

そこで県が目をつけたのが、秋田臨海処理センター内の未利用地の活用だ。県は1982年の稼働開始に合わせ、将来的な増設を見据えて土地を埋め立てて敷地面積を確保した。しかし、汚水量が当初の想定ほど伸びず、現在は約44haのうち半分以上が空き地になっている。この未利用地に再エネ発電設備を建てれば、既存の資産を生かしつつ経営改善が図れ、脱炭素化にも貢献する――というねらいだ。それに加えて、新規雇用や地域のにぎわい創出にもつながるとの期待もある。

秋田臨海処理センター内の未利用地
秋田臨海処理センター内の未利用地。現在は土砂の仮置き場となっている

需給調整へあの手この手

ただ、再エネの電力供給量は変動が激しい。今回の計画では、その弱点をカバーする手段も複数用意している。

一つ目は余った電気をためる蓄電池。二つ目が水素製造装置だ。冬場は風力発電の発電量が増え、電力が余る。その電力を使い、水を電気分解して水素をつくり、ためておいた水素で電力が足りない季節に発電する仕組みだ。「冬に余った電気を冬のうちに使いきるのは難しいが、水素を使えば電力のシーズンシフトができる」(秋田県下水道マネジメント推進課副主幹の黒崎亨さん)。

さらに三つ目として、「デマンドレスポンス」と呼ばれる需要側の電力制御もとりいれる。例えば、供給先の一つ、県立総合プールを巨大な蓄熱槽とみなし、太陽光発電量が多い昼間にヒートポンプでプールを加温しておき、電力が足りなくなる夕方にはヒートポンプを止める、といった具合だ。

「終末」から価値創造の起点に

電力供給を受ける公共施設群には総合プールのほか、高校野球の秋田大会にも使われるこまちスタジアム(秋田県立野球場)、秋田県総合食品研究センターなどがある。二つのセンターも含めた電力需要量は合計約2万512MWhになる。これをCO2フリーの電気でまかない、年間約1万tのCO2排出量を削減する構えだ。

秋田県立総合プール
秋田県立総合プール
こまちスタジアム(秋田県立野球場)
こまちスタジアム(秋田県立野球場)
秋田県総合食品研究センター
秋田県総合食品研究センター
秋田県産業技術センター高度技術研究館
秋田県産業技術センター高度技術研究館

秋田県下水道マネジメント課政策監の高橋知道さんは「下水処理場は『終末処理場』と言われるが、これからは生産工場の役割を担わなければいけない。新たな価値の創造がSDGsの観点からも重要だ。下水道を起点にできることを実装していきたい」と話した。

高橋さんと黒崎さん
秋田県下水道マネジメント推進課の高橋知道さん(右)、黒崎亨さん
竹山栄太郎
竹山栄太郎 ( たけやま ・えいたろう )
朝日新聞SDGs ACTION!編集部員。2009年に朝日新聞社入社。京都、高知の両総局を経て、東京・名古屋の経済部で通信、自動車、小売りなどの企業を取材。2021年から現職。
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