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オムロンなど8社、「健康経営アライアンス」を6月設立へ 2023年度に300社参加めざす

オムロンなど8社、「健康経営アライアンス」を6月設立へ 2023年度に300社参加めざす
「健康経営アライアンス」の設立を発表した8社の幹部ら=2023年3月10日、東京都内(提供)
編集部

オムロンなど8社は3月10日、業界横断で健康経営を進める「健康経営アライアンス」を6月に設立すると発表した。社員の健康づくりのノウハウを共有したり、各社の製品・サービスを組み合わせたりすることで効果を高め、健康保険組合の財政健全化や医療費抑制にもつなげるねらいだ。2023年度中に300社の参加をめざす。(副編集長・竹山栄太郎)

健康経営のノウハウ集めて「型づくり」

アライアンスでは、オムロンのほか、味の素、SCSK(住友商事のIT子会社)、キリンホールディングス、島津製作所、JMDC(医療統計データサービス企業)、日本生命保険、三井住友銀行の8社が代表幹事会社を務める。このほか、TDKや野村証券、三菱UFJ銀行など11社の参加が決まっている。

発起人の山田義仁・オムロン社長は、3月10日に東京都内で開かれた記者発表会で、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務になったことや、企業健康保険組合の半数超が赤字決算に陥っていることを背景に挙げたうえで、「『人生100年時代』に向けて、高齢者を含むすべての社員が生き生きと元気に働き続けられること、そして社員の健康管理と医療費給付をまかなう企業健保の仕組みを持続可能なものにすることが、企業経営者の責務だ」と話した。

山田社長はそのための方策として2点を示した。一つは「データ革命によるイノベーション」で、代表幹事会社の1社でオムロンと資本業務提携するJMDCのデータや技術を活用することを念頭に、「検診、レセプト(診療報酬明細書)など多種多様な医療データとアルゴリズムを用いることで、ハイリスク者を高い精度で予測し、改善を促したい」と説明した。

もう一つの方策が「協働と共創によるオープンイノベーション」。山田社長は、現状では各社の健康保険組合が独自の取り組みをおこなっており、好事例が共有されていないと指摘し、「ノウハウを集約することで、健康経営実践の『型』をつくっていきたい」と述べた。あわせて、社員の健康増進に役立つソリューションの開発に各社が協力して取り組んでいく考えも示した。

健康経営アライアンスのねらいについて説明するオムロンの山田義仁社長
健康経営アライアンスのねらいについて説明するオムロンの山田義仁社長(提供)

「共創」でソリューション開発も

代表幹事会社の各社は「先進的に健康経営に取り組むリーディングカンパニー」(オムロンの山田社長)。分析・計測機器を手がける島津製作所は2017年に健康宣言を制定し、運動・食事・睡眠・こころ・禁煙の5分野を定めて社員の健康増進に取り組んできたといい、上田輝久会長は「アライアンスを通じて社会全体の健康づくりと各企業の事業の発展を共同で推進していくのは、非常に意義深い取り組みだと考えている」と述べた。

キリンホールディングスはヘルスサイエンス事業に力を入れており、坪井純子常務執行役員は「1社でできることだけではなく、社会全体の課題として健康に取り組んでいきたい。今回のアライアンスを通じて一端を担えれば」と話した。

三井住友銀行は、人事担当役員がCHO(Chief Health Officer、最高健康責任者)として健康経営を進める。高島誠頭取はビデオメッセージで「従来の概念にとらわれず、参画企業のみなさまと知恵を出し合い、健康経営の新たなステージへ進んでいきたい」と語った。

健康経営アライアンス設立の記者発表会に登壇する8社の幹部ら
健康経営アライアンス設立の記者発表会に登壇する8社の幹部ら(提供)

アライアンスは2023年度中に300社の参加をめざし、2024年度には成果指標や実践の「型」を検討する。2025年度以降は各企業の実践レベルの底上げを図りつつ、健康増進・重症化予防ソリューションの「共創プラットフォーム」の構築にも取り組む計画だ。

「共創」の例として、オムロンの石原英貴執行役員は、高血圧の人が脳卒中や脳梗塞になるリスクを下げるため、オムロンの血圧計で血圧を測るだけでなく味の素の減塩食品を食べてもらう、といったイメージを紹介し、「1社だけでは持ち得ない製品・サービスを組み合わせることで、新たなソリューションをつくっていく」と話した。

企業・団体や省庁、学術機関などを対象に参加を募っており、詳細は健康経営アライアンスのウェブサイトに掲載されている。

竹山栄太郎
竹山栄太郎 ( たけやま ・えいたろう )
朝日新聞SDGs ACTION!副編集長。2009年に朝日新聞社入社。京都、高知の両総局を経て、東京・名古屋の経済部で通信、自動車、小売りなどの企業を取材。2021年にSDGs ACTION!編集部に加わり、2022年11月から副編集長。
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