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お魚を食べ続けるために、選んで買いたい。持続可能な水産物であることを示すMSC「海のエコラベル」

お魚を食べ続けるために、選んで買いたい。持続可能な水産物であることを示すMSC「海のエコラベル」
一般社団法人MSCジャパンの鈴木夕子さん(写真左)と石井幸造さん(写真右)。
Sponsored by MSCジャパン

海に囲まれ、古来より魚食文化が育まれてきた日本。私たちにとって魚介類はかけがえのない存在ですが、近い将来、この大事な資源を失うかもしれません。これからも変わらず、食卓に魚を並べていきたい……。そんな願いをかなえるために、私たちができることとは? 水産資源を守る取り組みとして、MSC認証制度とMSC「海のエコラベル」付き水産物の普及を進める一般社団法人 MSCジャパンの方々にお話をうかがいました。

食生活に欠かせない魚が、将来は食べられなくなるかも?

私たちの食卓からなじみの魚がいなくなる!? 耳を疑う言葉ですが、実はこれ、近い将来に起こってもおかしくない現象なんです。現在、日本に限らず世界的に見ても減少の危機に瀕している水産資源。その主な理由に「過剰漁獲と気候変動」を挙げるのは、MSCジャパンの広報担当シニアマネージャー、鈴木夕子さんと、プログラムディレクターを務める石井幸造さんです。

鈴木さん「魚は卵を産み、育つことで増えていくもの。その増える量よりも多い量を人間がとったりすれば当然、水産資源は減ってしまいます。国連食糧農業機関によると、世界の水産資源のうち過剰漁獲にあたるのは2019年には35.4%※1。また、WWFの調査結果では、海洋生物の数が1970年初頭から現在までの40年余りで、ほぼ半分にまで減少したと報告されています※2

もうひとつの要因が気候変動。気候変動による海水温の変化によって魚の回遊ルートが変われば、魚たちは水温の高い南方には行かなくなるため、この状況が2050年まで続くと、熱帯海域における潜在的漁獲量は最大40%も減少※3すると予測されています」

※1 『世界漁業・養殖業白書2022(英語)』(国連食糧農業機関)参照。 ※2 2015年9月発表『生きている地球レポート<海洋編>(Living Blue Planet Report)』(WWF)参照。 ※3 『Large-scale redistribution of maximum fisheries catch potential in the global ocean under climate change(2009)』参照。

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石井さん「水産資源の生息範囲の変動については、日本国内でも最近よく話題になります。近年は、ブリが多く漁獲される海域も北上する傾向にあり、北海道での漁獲量が急増したり、サワラが日本海で多く漁獲されるようになったり。日本でのサンマの不漁についても回遊ルートの変化が一因と言われています」

鈴木さん「こうした水産資源の減少を抑えるには、漁獲量をきちんと管理することが大切ですが、国境をまたいで回遊する資源については関係国で協力しなければ実現できません」

限りある水産資源を、持続可能なものとするためのアプローチはさまざま。そのひとつとなるのが、MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)が推進するMSC認証と、MSC「海のエコラベル」です。MSCは、持続可能で適切に管理された漁業の普及に努める国際的な非営利団体。設立のきっかけとなったのは、1992年にカナダ・グランドバンクスで起こったマダラ漁業の崩壊でした。

鈴木さん「それまでの過剰漁獲でマダラの漁獲量が急減し、3万5000人もの漁業者と加工業者が失業へと追い込まれました。水産資源の管理がいかに重要か、世界に知らしめることとなった出来事です。これを機にMSC認証の構想が生まれ、1997年にはイギリス本部が設立。日本事務所はその10年後、2007年に設立されました」

私たちが水産資源を守るためにできるのは「選んで買うこと」

設立から26年を迎えたMSCが推し進めるMSC認証とは、水産資源や環境に配慮し、適切に管理された持続可能な漁業に関する認証のこと。漁業に対する“MSC漁業認証”と、サプライチェーンにおいて認証水産物とそうでないものが混ざることを防ぐための“MSC CoC認証”の2種類があり、認証を取得した漁業でとられた水産物にはその証としてMSC「海のエコラベル」付けることができます。

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鈴木さん「MSC漁業認証の取得にあたっては、3つの原則に基づいた第三者機関による審査が必要です。原則の1つ目は“資源の持続可能性”に関するもの。対象とする魚種資源は十分な量があるのか、持続可能レベルにあるのかなどがチェックされます。

2つ目は“漁業が生態系に与える影響”について。漁業が漁獲対象とする以外の魚介類やウミガメやウミドリなど他の生き物、絶滅危惧種の“混獲”の影響や、生息域・生態系に及ぼす影響が最小限に抑えられているかの確認が行われます。3つ目は“漁業の管理システム”。ここでチェックされるのは、原則1と原則2を満たせるよう、国際ルールや国内法が整備され順守されているかどうかなどです

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この3つの原則は審査時に得点化され、それぞれ80点以上を獲得する必要があります。この得点は各々の原則に関連する業績評価指標(合計で28の指標)の平均点であり、これら指標については60点を下回るものが1つでもあると認証されません。また、60点以上80点未満の指標については、期限を定めて80点以上になるまで改善するといった条件付きでの認証取得となるのだとか。また、持続可能であることを維持するために、取得して終わりとはならず、年次の監査と5年ごとの更新審査が必要となります。

そして、MSC漁業認証を取得した漁業でとられた認証水産物を、消費者の元へ確実に届けるためにつくられたのがMSC CoC認証。MSC「海のエコラベル」を商品に付けるには、その商品の最終加工・包装に至るまで、原料となる水産物の所有権を持つすべての事業者が取得する必要があります。

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このMSC「海のエコラベル」が付いた商品を選ぶことこそ、水産資源を守るために私たちができるアクション。ただ、残念ながら日本での認知度はまだ低く、世界23カ国を対象とした2022年の調査では15%に留まっています。ちなみに、認知度の世界平均が48%だったのに対し、トップのスイスは83%。以降、オーストリア、ドイツ、スウェーデン、フィンランドと続き、北欧国での認知度が高いという結果になりました。

鈴木さん「これは、MSCがヨーロッパで生まれたことに加え、北欧ではニシンや白身魚など、食べる魚種が限定的であることも大きいと思います。食べる魚の種類が非常に多い日本では、何か1種類が不漁となってもなかなか気付きにくいため、あまり意識が行かないのではないでしょうか」

石井さん「日本は小売企業が多いことも一因ですね。ヨーロッパの場合、小売企業の大手数社でマーケットシェアの大半を占めている国も多く、そうした小売企業がMSC認証の水産物を取り扱っていれば、消費者がMSC『海のエコラベル』が目に触れる機会も多いのでしょう」

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たとえばヨーロッパでは、ドイツのアルディやリドル、イギリスのセインズベリー、フランスのカルフールなどの大手小売企業が早くからMSCラベルの付いた商品の取り扱いを始めています。アメリカでは、世界最大の小売企業であるウォルマートが、2006年に持続可能な水産物に取り組むことを表明し、MSCラベル付き商品を増やしてきました。

鈴木さん「こうした動きに伴ってMSC CoC認証の取得企業は一気に増えました。消費者の認知度があまり高くない日本でも、現在は大手小売企業や水産企業を含む約350社がCoC認証を取得。国別でみればこの数は世界でも上位に位置します」

どこで手に入る? MSC「海のエコラベル」の付いた水産物

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日本で流通するMSC「海のエコラベル」が付いた水産品は、約500品目にも上ります。販売されているのはイオングループや生協・コープ、セブン&アイグループ、ライフ、マクドナルドなど、私たちにとって身近なお店。さらに店頭だけでなく、航空会社の機内食やホテルのレストランなどでもMSCラベルを表示したメニューが提供されています。

石井さん「SDGsの達成に向けた活動の一環として、認証水産物の取り扱いに力を入れる企業も増えてきました。こうした企業の取り組みが拡大することで、消費者の認知向上にもつながると思います」

なお、MSC CoC認証の取得にあたっては、MSC認証の漁業でとられた水産物と、それ以外の非認証水産物が混ざらないよう、厳密に管理する必要があります。この審査は漁業認証と同様に第三者に委ねられており、水産物が認証取得業者から購入されているか、非認証水産物との置き換えを防ぐために数量などの入出荷照合で問題がないかなど厳密なチェックが行われます。

鈴木さん「MSCの試算では、持続可能ではない漁業によって失われたたんぱく質の量は、年間で7200万人分にも上ると出ています。また、国連によると、水産物が適切に管理されていれば、今世紀半ばまでには過剰分の98%が回復するとも。現在、MSC認証を取得、あるいは審査中の漁業による漁獲量が占める割合は、全体の1/5未満。MSCでは2030年までにこの割合が1/3以上になることを目指し、これからも活動を続けていきます」

買い物時のほんの少しの意識で、水産資源の未来が変わるかもしれない

私たち消費者にとって、MSC「海のエコラベル」を指標に商品を選ぶことは、水産資源の減少を抑える最初の一歩。これまであまり気にしていなかったという方も、今後は店頭でMSC「海のエコラベル」の表示を探してみてください。豊かな海を守るために、そしてずっとおいしいお魚を食べていくためにも。

取得の思いは? MSC CoC認証を取得した企業の声を紹介

●株式会社ニッスイ

ニッスイグループでは「豊かな海を守り、持続可能な水産資源の利用と調達を推進する」というマテリアリティ(重要課題)を実現するための施策のひとつとして、MSC CoC認証を取得しました。海洋資源に大きく依存して事業を行っている当社にとって、資源を守りながら利用することは責務と考えています。

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ニッスイでは、ちくわをはじめ、魚肉ソーセージや冷凍食品などでMSC「海のエコラベル」付きの商品を販売。

●マルハニチロ株式会社

海をルーツに140年の歴史を持つマルハニチログループでは、2006年12月にMSC CoC認証を取得しました。MSC「海のエコラベル」付きの商品について、お客様からは「SDGsにかなったサステナブルな商品」「世界の食循環に貢献したいので今後も購入したい」といった声をいただいています。魚食の需要が増加していくなかで、需要への対応をしつつ、水産資源の保全という要求に応えるため、MSC認証水産物の取り扱いを今後も積極的に進めていきたいと考えています。

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マルハニチロでは、「白身魚タルタルソース」「MSC骨鳥白糸鱈のみぞれ煮」といった家庭用冷凍食品のほか、缶詰製品や練り製品などでMSC「海のエコラベル」付きの商品を販売。
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