NPOとは? 自分らしく関わる方法や設立時のポイント、事例も解説

社会貢献が当たり前のように求められる時代になり、NPOという言葉も一般化しました。この記事では、NPOの活動に興味がある人や自分で設立したい人に向けて、30年以上非営利活動に従事し、「場づくり」をおこなってきた筆者が、NPOの定義や実態、参加方法、そして誰でもできるNPOのつくり方などをまとめました。

1972年生まれ。大学在学中の1990年より「子どもの居場所づくり」に関する教育運動に参加。1996年にれんげ舎を設立。まだNPO法人格も存在しない当時、大学卒業後に就職せず活動を仕事にしたパイオニア。長年の活動経験を生かしたコンサルティング・講演は全国で年間150回以上にのぼる。著書『場づくりの教科書』(芸術新聞社)。Voicyパーソナリティ。
目次
1.NPO(Non-Profit Organization)とは
NPO(Non-Profit Organization)とは「非営利団体」のことです。社会的な目的や使命(ミッション)を持ち、利益ではなくその目的を達成するために活動する団体を意味しています。
日本社会で「NPO」というときには、法人格を持たずに活動する「任意団体としてのNPO・市民活動団体」と、「NPO法人(正式には「特定非営利活動法人」)」を指す場合がほとんどです。
「非営利団体」を広く捉えると、学校法人や宗教法人、社会福祉法人や財団、労働組合や生協なども、全て含まれてしまいます。同窓会だって非営利ですよね。でも、それは学術上の定義の話であり、通常それらの団体を「NPO」と呼称することはありません。
(1)NPOが必要な理由
そもそも、なぜ「NPO」があるのでしょうか?
社会生活を営んでいて、困っている人がいるのを知り、そうした人の「役に立ちたい」と思うことがあります。あるいは、自分自身が悩みや課題を抱えていて、「助けが必要だ」と思うこともあります。そんな時に、「この窓口に行けばすぐに解決する」という受け皿があればいいのですが、どこに行けばいいのか、誰に相談すればいいのか、わからないこともあります。ニーズに対応した受け皿が、社会に存在しない場合があるからです。
そういう状況に対して、「困っている人たちを助けるために、自分たちでなんとかしよう」と考えたり、「自分と同じ悩みや課題を抱えている人に呼びかけて、集まって助け合おう」と考えたりして、自主的に団体を設立する。そうした市民活動団体が日本にはたくさんあります(自主的に設立され、登録などもされないため、実数を把握することはできません)。
つまり、「NPO」という言葉が入ってくるずっと前から、NPOは存在していたということです。
(2)NPO法におけるNPOの活動分野について
そうした団体に注目が集まったのは、1995年の阪神・淡路大震災でした。ボランティアとして集まった個人や団体が大きな役割を果たしたことがきっかけとなり、そうした団体がより活動しやすくなるようにするため、1998年に「特定非営利活動促進法(NPO法)」が制定されました。
「任意団体として活動するより法人格があったほうがいい」と考えるNPOが、要件を満たして法人格を取得するようになり、現在のように「任意団体としてのNPO・市民活動団体」と「NPO法人」が混在するようになりました。
NPO法人は正式には特定非営利活動法人といいます。「特定の非営利活動」というと「特別な活動だけ」という印象がありますが、下記のように、おおよそ考え得る限りの活動分野が網羅されています。また、必ずしもアクティブな団体の実数統計ではありませんが、下のグラフのように、NPO法人は5万368件、認定及び特例認定のNPO法人は1267件となっています(2023年3月末時点)。
1. 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
2. 社会教育の推進を図る活動
3. まちづくりの推進を図る活動
4. 観光の振興を図る活動
5. 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
6. 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
7. 環境の保全を図る活動
8. 災害救援活動
9. 地域安全活動
10. 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
11. 国際協力の活動
12. 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
13. 子どもの健全育成を図る活動
14. 情報化社会の発展を図る活動
15. 科学技術の振興を図る活動
16. 経済活動の活性化を図る活動
17. 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
18. 消費者の保護を図る活動
19. 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
20. 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
(参考:平成十年法律第七号特定非営利活動促進法|e-GOV法令検索)
これらの活動の分野は、制約ではなく、実際の活動がこれらにつながりがあるかどうかで解釈されます。例えば、「子どもたちが交流しながらスポーツを楽しみ、それを大人が応援する」というような活動は、「13 子どもの健全育成を図る活動」にも該当しますし、「6 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動」にも該当します。視野を広くとれば、「3 まちづくりの推進を図る活動」だとも捉えることができます。
そのため、これらの活動分野から、個別のNPO法人の目的や事業内容を把握することはできません。

2.NPOを理解するうえで重要なポイント
ここでは、NPOの輪郭をより鮮明にするために、NPO法人と会社を比べたり、誤解の多い「非営利」の意味合いを整理したりしていきます。
(1)会社との違い 営利と非営利
日本社会で会社といえば、それは「営利法人」のことです。構成員への利益分配を目的とした法人のことで、よく目にする株式会社や合同会社などがこれに含まれます。一方で、NPO法人は「非営利法人」です。余剰利益が積み上がっても、それを構成員で分配することは禁じられています。
この比較から、非営利とは「利益を目的とせず、利益を分配しない」ことを意味していることがわかります。例えば、株式会社は利益を株主に配当として還元しますが、NPO法人の余剰利益は、本来の目的に即した非営利事業の拡充に使われます。
ちなみに、NPO法人が解散した場合、資産を関係者で分配することも禁じられています。残余財産は、国や地方公共団体、他のNPO法人など定められた相手に帰属することになります。
(2)非営利とは「無料・無償」を意味しない
NPO法人は非営利なので営利を目的としてはいませんが、なんでも無料・無償で提供しているわけではありません。「事業をやって稼ぐことができるなら、非営利ではないのではないか?」という疑問を持たれる人が多いので、その点を解説しましょう。
例えば、NPO法人が困窮者に食事を無償提供する場合、当然ですが、食材の購入や調理、それを配布するために費用がかかります。そのお金はどこから来るのかというと、原則として自分たちで何とかしなくてはなりません。
そのため、無償ではなく対価が設定される場合もあります。また、無償提供する一方で、利益を得るための別の事業をしたり、寄付を募ったりといった工夫が求められています。自治体や民間の補助金・助成金などが活用されることはまれで、「NPOになればどこかからお金が入ってくる」ということはありません。
(3)非営利には「公益・共益・私益」がある
NPOは社会的な目的を掲げていますが、社会的な目的といっても幅広く、分類が難しいですよね。そこで、NPOを理解するために、「公益・共益・私益」という三つの視点を紹介します。
社会的な目的の分類 | |
---|---|
公益 | 「公益」とは、広く社会一般の利益になるという意味合いです。特定の誰かではなく、誰に対してでも開かれた活動である必要があります。 |
共益 | 「共益」とは、構成員共通の利益になるという意味合いです。互助会的な活動や組合員のみに限定した活動は共益活動といわれます。 |
私益 | 「私益」とは、例えば「まだ幼いのに外国での手術が必要な◯◯ちゃんのための募金活動」のようなものです。人助けですが、個人の利益のための活動です。 |
「NPO法人」は、NPO法において「不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする」と定められており、公益活動を主とする団体でなければなりません。一方で、任意団体としてのNPO・市民活動団体の場合は、その限りではありません。
(4)その他のポイント
①NGOとの違い
ニュースなどでNPOと同じような感じでNGOと呼ばれる団体が紹介されることがあります。NPOが「Non-Profit Organization(非営利団体)」の略称であるのに対し、NGOは「Non-Government Organization(非政府団体)」の略称です。貧困問題や環境問題などの世界的な課題に対し、国際的な活動を展開する非営利団体を指しています。
NGOという名称が使われるようになったのは、国連での国際会議がはじまりで、政府組織と非政府組織を区別するために使用されたといわれています。必ずしも並列する概念ではありませんが、「国際的な活動をするNPOをNGOと呼ぶこともある」と考えて差し支えありません。
②NPO法人と認定NPO法人の違い
「NPO法人」と似たような法人格で、「認定NPO法人」があります。認定NPO法人とは、一定の基準を満たしたNPO法人が取得できる法人格のことです。NPO法人への寄付を促す目的で設けられた認定特定非営利活動法人制度(認定NPO法人制度)で認定されると、認定NPO法人を取得できます(参照:認定制度について|内閣府NPOホームページ)。
NPO法人と認定NPO法人の最も大きな違いは「寄付に関する税制」です。個人や法人が認定NPO法人に寄付をした場合は、寄付者に対して税制上の優遇措置が適用されます。寄付者にメリットがあるわけですが、認定NPO法人側も寄付を集めやすくなるメリットがあります。
③NPOとSDGs(持続可能な開発目標)の関係
SDGsは「誰一人取り残さない」というメッセージと共に、17の国際目標が設定されています。NPO法人の20の活動分野とそれを比較すると、大部分において重なり合っていることが確認できます。
ただ、活動に共通点があっても、成り立ちには異なる点もあります。
SDGsは国際的な枠組みがまずあり、日本もそこに参加しています。実際の取り組みは、業界団体・企業・草の根的な活動などさまざまなレベルでおこなわれていますが、国内においては日本政府が主導しています。「大きな文脈」から活動が組織されています。
一方で、NPOの活動のなかには「困っている人を助けたい」「こんな課題を解決したい」というような個人の気づきや問題意識が源になっているものが数多くあり、こちらは「小さな文脈」から活動が組織されています。
SDGsのような政府発の大きな文脈に対しては、自分ではその妥当性や信頼性を検証していないのに、「国がやっていることだから正しいのだろう」と考える人もいるでしょう。だからこそ広まっているともいえますが、そこには問題も生じます。
既存の社会制度やその時々の政府の動きではカバーされない人々、それこそ「取り残された人」のために、NPOなどが自分発の小さな文脈で動くことで、まだあまり知られていないニッチな(または潜在的な)社会課題が解決されていくこともあります。
3.NPOの活動内容や事例
あなたは「NPO」といわれると、どんなイメージが浮かびますか?
一口に「NPO法人」といっても、実際は多種多様です。「株式会社」というだけではどんな会社なのか想像できないのと同じです。そのため、法人格の側からNPOを理解しようとすると、わかりにくくなってしまいます。
それでも、色々なパターンがあるのだという広がりを感じられるように、網羅的ではありませんが、いくつかの観点から「NPO・NPO法人」の事例をご紹介します。
(1)当事者が設立するNPO
自分が当事者として悩みや困りごとを抱えている人が、同じ境遇の人や問題意識を抱えている人に呼びかけて、団体を設立する場合があります。
例えばですが、学校に通っていない子どもを持つ親たちが「不登校の親の会」をつくり、互いの悩みを語り合ったり解決策をシェアしたりするような活動が、それにあたります。
子どもの年齢が上がって「引きこもりの若者の支援」をするように移行・発展したり、通信制高校と提携して事業をしたり、専門家や行政機関と連携して支援メニューを拡充したりといった、規模や内容を発展させるケースもあります(こうしたケースでは、任意団体としてスタートしたNPOが、途中でNPO法人格を取得することもよく見られます)。
(2)災害支援のためのNPO
日本は災害大国です。国内で大きな災害が起こると、日本中からボランティアが集まったり、諸外国が支援を申し出てくださったり、公共サービスよりはるかに大きな枠組みでの助け合いが見られます。
その流れの中で、住民や支援者がその助け合いをより専門化したり、短期ではなく継続的な活動にしたりするために、NPOを設立する場合があります。
発災からまもない間は「被災者」を「支援者」が助ける、つまり「支援する側/支援される側」という図式が見られます。それでも長く活動の場を共にするなかで、「一緒に復興を成し遂げて、よりよい地域社会をつくろう」という一つの思いに結実し、「支援する側/支援される側」という立場を超えてより活動が発展・継続するケースもあります。
(3)生業としてのNPOとボランティアとしてのNPO
NPO法人のなかには、都心にオフィスを構え大勢の職員を雇用しているところもあれば、全員が無償のボランティアで活動拠点を持たないところもあります(そういう場合、登記住所は代表者の自宅とするのがよくあるパターンです)。
ただ、こうした予算規模の大小が、活動の質や社会的価値につながっているかといえば、そうとは限りません。この世に1店舗しかない老舗の和菓子屋と、チェーンの菓子店の価値を、一概に比較できないのと同じです。
4.支援したいNPOを探す方法
ここでは、「NPOを支援したい」という人が、支援先のNPOをどのように探したらいいのかについて、まとめます。
これまでに説明した通り、NPOには法人格のある「NPO法人」と任意団体としての「NPO・市民活動団体」があります。NPO法人は内閣府のサイトなどで一覧が見られますが、ただのリストで活動の様子はわかりませんし、任意団体を網羅したリストは存在しません。
そのため、どうやって探せばいいのかはじめは困惑してしまうかもしれません。しかし、支援先を探す手がかりは、まずあなた自身の中にあります。どのような人のための、どのような活動を支援したいという思いがありますか? まずはそこに向き合ってみましょう。
例えば「子どもたちのため」の活動をしているところがいいなと思ったら、どこの、どんな子どもたちなのかもイメージしてみます。外国で食糧難に直面していたり、教育の機会を奪われたりしている子どもたちでしょうか。それとも、自宅の近くにいる、地域で普通に見かける子どもたちでしょうか。
そうしてある程度イメージが浮かんだら、それらのキーワードを複数入れてインターネットで検索したり、該当する地域の自治体(都道府県または市区町村の所管課)や、各地域にある社会福祉協議会に問い合わせたりしてみてください。「◯◯に関する活動をしているNPOを支援できたらと考えているので、紹介して欲しい」とお願いすれば、団体を紹介してくれるはずです。
例えば、東京都内のNPOを探す場合、東京都社会福祉協議会が運営する「東京ボランティア・市民活動センター」があります。WEBサイトにも多くの情報がありますし、専門の相談員に相談することもできます(ボラ市民ウェブ|東京ボランティア・市民活動センター(TVAC))。
なお、NPOであっても、その時点で具体的な支援を求めていない場合もあります。10人くらいでやっている小規模なNPOに、突然100人のボランティアがおしかけたら、活動が回らなくなってしまいます。支援したい気持ちや参加したい気持ちを伝えることと、その時点でどのような支援を求めているのか、参加方法があるのかを、質問してみてください。
5.NPOに関わる方法
参加したい団体を見つけたら、ぜひ連絡を取ってみましょう。どんな思いがあって連絡をしたのかを伝えたうえで、どんな参加方法があるのか、どんな関わり方があるのか、質問してみてください。団体の規模や状況によって、関わり方は様々です。こちらで「こういう関わり方がしたい」と望んでも、団体のニーズは異なるかもしれません。
(1)イベントなどに参加する
まずは、興味のある団体が主催するイベントなどに参加するのも良い方法です。雰囲気がつかめますし、団体のスタッフの人と話す機会もあるはずです。
(2)ボランティアをする
団体がボランティアスタッフを募っている場合は、エントリーしてみましょう。「ボランティア」といっても団体ごとに定義はまちまちです。また、インターンシップ制度がある団体もあります。
(3)寄付をする
寄付をすることも、団体の応援になります。寄付はただ単に資金を提供するというだけでなく、「応援してくれている人がいる」という精神的な支援にもつながります。
(4)運営に参加したり実際にNPOで働いたりする
職員を雇用している団体もあれば、全員が無償のボランティアで活動している団体もあります。運営に責任のある立場で活動に参加する、求人に応募してスタッフになるなど、主体的な活動の担い手として参加する道もあります(有償なら責任があり、無償なら責任がないということではありません)。
そうした希望がある場合でも、まずはイベントに参加したり、ボランティアとして参加したりしてみると、お互いの様子がわかり、ミスマッチを減らすことができます。
6.NPOをつくる方法
NPOに関わる方法は、既存の団体に参加するだけでなく、自分で団体を立ち上げる道もあります。自分で団体を(つまり活動を)つくりたいと思ったら、どうすればいいのでしょうか?
団体設立は一部の人の特別なことではなく、誰にでも可能です。ここでは、無理なく団体を立ち上げていくための方法を三つのステップに分けて解説します。
(1)ステップ1 当面のアイデアをまとめる
まずは、現時点でのアイデアをまとめてみましょう。①どんな人たちを対象に、②どんな目的で、③どんな感じの活動をするのかを、はっきりしているところだけでいいので、埋めていきます。そのうえで、そうした活動に興味を持ってくれそうな人たちに連絡をして、仲間を集めます。
(2)ステップ2 まずは「お試しイベント」を開催する
例えば、コミュニティーカフェ(コミュニティー貢献を目的としたカフェ)をつくりたいと考えた場合、余程の資金や実行力がないと、右から左へとオープンできません。仮に可能な場合でも、そこまで思い切れず躊躇(ちゅうちょ)する場合もあるでしょう。
そんな時は、トライアルの活動の場として「イベント」や「勉強会」を開いてみます。コミュニティーカフェなら「1日コミュニティーカフェ」を開いてもいいですし、環境に関する活動をしたいなら「全3回の勉強会」でもいいですね。
こうした「お試しイベント」は、活動への意欲を確認したり、イメージを膨らませたり、仲間を増やしたりするのに役立ちます。
(3)ステップ3 定例化を視野に入れ団体設立する
何度かイベントを開いて、それを継続的な活動にしようと考えられるようになったら、団体設立の機が熟したと考えられます。場の定期開催(定例化)ができるようになると、活動が安定します。目的や活動内容、役割分担、意思決定の方法、年間計画、規約などをみんなでつくり、設立総会などを開催して発足させます。
(4)【補足】NPO? 一般社団? 法人格はどうすればいい?
ステップ3の段階では、「任意団体としてのNPO」として設立するのか、それとも「NPO法人」として設立するのかを、判断することになります。また、いわゆる社会貢献活動をおこなう場合でも、一般社団法人など他の法人格も検討すべきです。
法人格の有無とは何を意味するのでしょうか。一般に任意団体に比べて法人のほうが社会的信用が高いといわれています。ただ、それは広く浅い信頼のことで、法人格があれば信用されると考えるのは早計です。
とはいえ、法人格があると、団体名で銀行口座を持ったり、契約の主体となったりすることができます。一方、法人格に応じた報告義務や透明性の確保が求められ、それにひも付いた事務作業なども発生します。
以下は、NPO法人・一般社団法人の簡単な比較表です。
NPO法人 | 一般社団法人 | |
根拠法 | NPO法 | 一般法人法 |
営利/非営利の分類 | 非営利 | 非営利 |
目的と事業 | NPO法20分野の公益活動を主とする | 公益事業、収益事業、共益事業などを制約なくおこなえる |
構成員 | 10人以上 | 2人以上 |
設立時の法定費用 | 0円 | 11万円 |
その他にも公益社団法人、一般財団法人など法人格の選択肢は多岐にわたります。また、非営利の法人格を検討したものの、結果的に株式会社や合同会社などの営利法人を選択するケースも見られます。
最近では、「社会起業家」という言葉もよく耳にするようになりました。社会起業家とは、社会課題を営利的な手法(ビジネスの手法)によって解決する起業家のことです。社会課題の解決を目的とする点で、社会起業家がつくる組織とNPOは共通しています。
有名な例としては、バングラデシュでグラミン銀行を設立したムハマド・ユヌス氏が挙げられます。融資など決して受けられない最貧困層の人たちに対し、マイクロファイナンスと呼ばれる自立のための少額融資をおこない、最貧困状態からの自立的脱出をサポートしました(2006年のノーベル平和賞を受賞)。
法人格は、社会とつながるためのツールであり、アイデンティティーではありません。もし法人格選びに迷い、かつすぐに法人格が必要でない場合は、まずは任意団体として設立をして活動し、必要を感じたら法人化するというのもよい方法です。
実際にNPO法人を設立する場合は、10人以上の仲間を集め、申請書を作成し、所轄庁に提出し、不備がなければ認証されます(書面による審査です)。申請から認証、登記までの流れは内閣府のホームページに記載があります。書類作成が初めての人でも、お住まいの自治体に大抵はこうした申請の相談窓口があります。また、NPOの設立や運営をサポートするNPOもあります。
7.自分発で社会に関わるためには
「NPOで活動しています」
「これは社会貢献活動です」
そう聞いて、あなたはどんな印象を持ちますか?
「すごいな、善いことをしているんだな!」と思いますか。それとも「なんか怪しいな……」と思うでしょうか。ここまで読んでくださった人なら、「NPO」というカテゴリだけで、団体や活動の良しあしは判断できないということを、ご理解いただけているはずです。
社会貢献活動は、昭和の時代よりずっとオシャレになりました。筆者はまだNPO法人格が日本にない1990年代の初頭からこうした活動に従事しており、そうした変化を目の当たりにしてきました。
オシャレになると注目度が増しますから、それ自体は良いことです。でも同時に、形骸化・ファッション化の問題も深刻です。「人前ではおそろいのオシャレなTシャツを着てゴミを拾うけど、自分しかいない山の中では拾わない」というようなダブルスタンダード、見た目と内実の乖離が生じてしまうからです。
よく考えてみれば、営利法人である一般企業も、消費者が抱える課題を解決するためにプロダクトをつくったり、サービスを提供したりしています。それは多大な社会貢献だといえます。そういう意味では「社会起業家」という名称には、社会貢献という意味が重なってやや過剰なところがあるかもしれません。
大切なのは、そうした名称や形式にとらわれず、あなたが(あなたと仲間たちが)解決したい課題に対し、自分に合った有効な手段でアプローチすることです。NPOに寄附したり、参加したり、設立したりすることは、その手段のひとつです。
問題意識を発信し、仲間を募り、イベントなどをおこなっていくなかで、活動のための「場」や「組織」がつくられていきます。状況とタイミングによっては、NPOなどの法人格が必要になることもあるでしょう。
どんな大きな活動も、はじめはたった一人の「もっとこういう社会になったらいいのに」という思いから始まっています。周りに流されず自分発で社会と向き合えば、自分らしく社会と関わる手段がきっと見つかるはずです。