大丸心斎橋店、渋谷パルコを環境配慮型店舗に

撮影・朝日教之
J.フロントリテイリング/好本達也社長

百貨店で再生可能エネルギーが明かりをともし始めた。大丸松坂屋百貨店、パルコなどを傘下に持つJ.フロントリテイリングはこの10月、再生エネ100%を目指す国際的な企業ネットワーク「RE100」に加盟するなど、地球温暖化対策を加速している。好本達也社長に取り組みへの思いを聞いた。(聞き手・大海英史)


SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みを始めるにあたり、2018年、私たちが取り組む「マテリアリティ」(重要課題)を五つ設定しました。

「低炭素社会への貢献」「サプライチェーン全体のマネジメント」「地域社会との共生」「ダイバーシティの推進」「ワーク・ライフ・バランスの実現」です。

すべて重要ですが、「低炭素社会への貢献」を一丁目一番地に位置づけました。再生エネなどを使って二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガスの排出量を削減し、温暖化対策を進めることは、企業にとってもはや避けて通れない重要課題です。

温室効果ガスの排出量を削減するためには、中核事業の大丸松坂屋百貨店とパルコの店舗で使う電力の調達方法を変えていかなければなりません。当社グループが排出する温室効果ガスの約80%は店舗での使用電力によるものだからです。

そこで、建て替えを進めていた大丸心斎橋店(大阪市)では、19年9月の新装オープンに合わせて、館内で使用する電力をすべて再生エネに切り替えました。関西電力から水力発電による電気という契約で購入できることになり、実現できました。価格は少々高くなりますが、長期的な視点でみれば、再生エネを使用する価値のほうが大切です。また、心斎橋店ではテナントのご協力も得て店内の照明をすべてLEDに替え、お客様を直接訪問して販売する外商の社用車もすべてEV(電気自動車)化しました。

大丸松坂屋のキャラクター「さくらパンダ」(左)と「デッチーくん」(右)、パルコのキャラクター「パルコアラ」(中央)=撮影・朝日教之

池袋パルコや調布パルコ(いずれも東京都)でも19年10月から使用電力の一部を再生エネに切り替え、同年11月に新装オープンした渋谷パルコ(東京都)では、効率の高いエネルギーシステムを構築することでエネルギーを余すところなく活用しています。今年11月20日オープンの心斎橋パルコ(大阪市)は、大丸心斎橋店と同じように館内で使う電力をすべて再生エネにしました。

もう躊躇(ちゅうちょ)していられない、新装オープンを機に思い切りやろう、と。大丸心斎橋店と渋谷パルコは、当社グループの象徴的な環境配慮型店舗として、私たちの意志を示しています。

50年に温室効果ガスの排出をゼロに

今後、大都市圏で建物を自社保有している店舗を中心に再生エネへの切り替えを進め、当社グループの事業活動における温室効果ガス排出量(SCOPE1、2)を30年に40%削減、50年にはゼロにする。それが私たちの計画です。また、商品を仕入れるお取引先や物流などのサプライチェーンでの排出(SCOPE3)についても30年に40%削減を目指しています。今年10月には、事業活動で使用する電力を再生エネで100%調達することを目標とする国際的な企業連合「RE100」にも加盟しました。

撮影・朝日教之

大丸松坂屋百貨店では昨年、お取引先に私たちの考え方を伝える説明会を開き、530社・652人の皆さんが集まってくれました。再生エネへの切り替えを進めていく方針を伝えることでお取引先の意識も高まり、ともに取り組むことで双方の企業価値向上につながると期待しています。グローバルに展開するラグジュアリーブランドにはむしろ当社よりずっと意識が高い企業もあり、示唆に富むご意見をいただきました。

ここ数年、投資家が「ESG(Environment=環境、Social=社会、Governance=企業統治)」を重視するようになっています。とくに気候変動に対して企業がどのような対策をとるかは関心事であり、企業の評価に影響を与えます。

それだけではありません。日本の状況を見ても、一昨年の西日本豪雨、昨年の千葉県での台風被害、今年の九州の豪雨など異常気象であることは明らかです。台風が大型化し、鉄道などの交通機関が計画運休をするようになりました。お客様の暮らしに大きな影響を与え、百貨店も休業すれば売り上げにかかわります。このままではいけない。気候変動対策を進めなければいけない。強い危機感を抱いています。

J.フロントリテイリングのSDGsのロードマップ(サステナビリティレポート2020から)
30年に女性管理職50%を目指す

五つのマテリアリティには「ダイバーシティの推進」もあります。指標の一つに女性管理職比率を設けています。20年2月末の時点でグループ全体で16.6%、大丸松坂屋百貨店に限定すれば24.9%ですが、これを25年にはグループ全体で30%、30年には50%とすることを目指しています。従業員の約半数が女性ですので、管理職の比率もこれに近づけていこうという目標です。

直近のグループ全体の新卒採用では約56%が女性です。また、子育てによって仕事から一度離れたものの、育児と仕事の両立を実現したいと考える女性を募集する「マザー採用」という当社独自の採用もしています。採用者は10人を超え、豊富な経験や意欲のある人材を確保するという面で効果を発揮しています。

大丸心斎橋店(J.フロントリテイリング提供)

百貨店やパルコにとっては「地域社会との共生」も重要です。街が栄えないと店は栄えません。私たちは店舗を核に地域全体の魅力化に取り組み、地域とともに成長するビジネスモデルを追求しています。

例えば、90年代後半の心斎橋は街の活気が失われつつあり、来街客の減少に歯止めがかかりませんでした。そのため、2000年代初頭から大丸が窓口となって心斎橋筋商店街に話題性のある店舗を誘致し、地域全体としての集客力強化を図ってきました。その間、御堂筋にラグジュアリーブランドが進出したり、周辺にタワーマンションが建ったりという追い風もあって街の魅力を取り戻し、最近は中国などのインバウンド(訪日外国人)で活況となりました。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大でインバウンドの先行きが不透明な中、街の新たな魅力を創出することが不可欠だと考えています。地域社会、行政や大学などと連携して新しい魅力、価値を自分たちの手で生み出すといった模索を進め、地域の再成長の機会をつかまなければなりません。

当社グループは創業以来、300年、400年という長い歴史の中で数々の危機に遭遇してきました。そうした危機に直面するたびに、義を先にして利を後にする者は栄える“先義後利”という社是に立ち返り、日々の事業活動を愚直に実践してきたことが、今日までのサステイナブルな経営につながったと確信しています。コロナ禍で業績もかつてないほどの打撃を受けていますが、待ったなしの温暖化対策は次元の違う問題として取り組みを加速し、明らかに進化させていきます。

撮影・朝日教之
J.フロントリテイリング
2007年9月、大丸と松坂屋ホールディングスが経営統合して設立。10年に傘下の大丸と松坂屋が合併して大丸松坂屋百貨店となり、12年にパルコを連結子会社化して20年3月に完全子会社とした。百貨店事業は札幌、東京、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡など主要都市に「大丸」「松坂屋」を16店、パルコ事業はショッピングセンター「PARCO」を17店展開し、旧松坂屋銀座店の跡地などに17年にできた「GINZA SIX」に出資している。従業員数は20年2月末で9844人。
Keywords
RE100

使用電力を再生可能エネルギーで100%まかなうことを目標とする企業の国際的なネットワーク。「Renewable Energy 100%」(再生可能エネルギー100%)の略。英国の国際環境NPO「The Climate Group」などが運営している。2020年10月27日現在、世界で263社、このうち日本から40社が加盟している。

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