「つくる責任 つかう責任」 大量消費時代に考える 和洋九段女子中学校高等学校で出張授業

SDGs169ターゲットアイコン日本版制作プロジェクト
フラグスポート(マニフレックス)
制作・朝日新聞DIALOG 撮影・伊ケ崎忍

SDGsの達成目標年次とされる2030年に社会の担い手となる世代に、早くからSDGsを「自分ごと」として認識してほしい――。そんな願いを込めて、SDGsの17の目標達成に必要な行動を示す169のターゲットを、わかりやすい日本語のコピーにするプロジェクトが進んでいます。全国の子どもや学生たちから、コピー案を募集中です。

プロジェクトを主催する「SDGs169ターゲットアイコン日本版制作委員会」は、各地の学校に出向いて出張授業を実施しています。10月26日と11月2日には、東京都千代田区の和洋九段女子中学校高等学校で開催され、中学2年生から高校2年生まで150人が参加しました。

協力するのは、世界的な寝具ブランド「マニフレックス」を日本国内で展開するフラグスポート。創業以来50年以上、快適な眠りと地球環境に配慮した製品開発に注力してきました。長期にわたって安心して使え、廃棄しても有害物質が出ない製品がもっと広がってほしい——。そんな企業としての願いを受け止めながら、生徒たちは今回、SDGsのゴール12「つくる責任 つかう責任」にひもづく五つのターゲットのコピーづくりに取り組みました。

ゴール12
「つくる責任 つかう責任」 
取り組んだターゲット

12.4 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。

12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用および再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。

12.6 特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。

12.8 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発および自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。

12.a 開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
(外務省などによる仮訳)

簡潔に分かりやすく 10班で議論

生徒たちはそれぞれ興味のあるターゲットを選び、事前に出された宿題のワークシートに沿ってターゲットが設定された背景や達成に向けた取り組みについて調べた後、三つほどのコピーを考えて10月26日の授業に臨みました。

ターゲットごと10班に分かれ、教室に集合。高1と中3の計14人による3班が取り組んだのはターゲット12.5です。国連のホームページから英語の原文をコピーして持ってきた生徒もいました。14人はさらに3、4人の少人数グループに分かれ、事前に考えてきたコピーを発表し合います。「捨てられるときのことを考えて」「モノを買いすぎない」など、ターゲットの内容を端的に表現したものから、「賞味期限、消費期限を分けて考えよう」などの具体的なごみ減量への呼びかけまで、様々な案が飛び交いました。

みんなのアイデアをもとに、一つのコピーに。Aグループは「かんがえる きょうも未来の環境を」でまとまりました。「考える」の「かん」、「今日」の「きょう」で「かんきょう」と読ませるコピーです。Bグループは「3R(リユース・リデュース・リサイクル)、ゴミをへらそう!」。「廃棄物削減」という難しい言葉を、あえて「ゴミ」「へらそう」と言い換えました。

Cグループは「リサイクルしてゴミを減らそう」と、シンプル。Dグループは「自分が捨てたもので環境がくずれていく 必要か見分けよう」です。お刺身のツマが捨てられていくのを見てもったいないと思った経験から、ターゲットを食品ロスの問題と結び付けて考えたそうです。賞味期限や消費期限の違い、大量消費と大量廃棄の問題も話し合い、すべてを含む言葉にまとめました。この中から最終的にAグループの「かんがえる きょうも未来の環境を」を3班として発表する案に選びました。

ターゲット12.8に取り組んだ8班には、中2の16人が参加しました。こちらも4グループに分かれて、各自が持ち寄ったコピー案のどれがいいかを話し合い、まずは①すべての人が共通の生活様式を送れるような理解をうながす②どんな人でも暮らしやすい生活のありかたを考えよう③プラスチックゴミで多くの魚を巻き込まず、海を大切に④このライフスタイルを守るために理解を深め、広めていこう、の4案に絞りました。そのうえで全員投票し、9票を獲得した③に決定。「わかりやすいし、魚の気持ちがわかって説得力がある」との声が出ていました。

モノの来た道・行く末は
蟹江さん

その後、全員で講堂に移動し、SDGsの専門家、慶応義塾大学大学院の蟹江憲史教授から話を聴きます。蟹江さんは今回のゴール「つくる責任 つかう責任」について「モノの来た道や行く末を考えよう」と呼びかけました。私たちの目の前にあるモノがどのように作られたのか、捨てた先にどう処理されるのか、あるいはどうリサイクルやリユースされるのかを考えることで、より気持ちの良い消費につなげよう、という思いです。

ゴール12だけでなく、それ以外の目標との関連を考えることも大切だと言います。「多国間で廃棄物の問題を解決する」という視点に立てば、ゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」につながり、海洋プラスチック問題と絡めると、ゴール14「海の豊かさを守ろう」につながる、と例示。広い視野でゴールをとらえる大切さを強調しました。

井口さん

講演の次は、いよいよ生徒によるコピー案の発表です。蟹江さんと博報堂のクリエイティブディレクター・井口雄大さんがそれぞれの案にコメントしました。

3班のコピー「かんがえる きょうも未来の環境を」に蟹江さんは、「五七五のリズムで日本語らしい。とにかく環境が大事だぞということが、ひしひしと伝わる」。8班のコピー「プラスチックゴミで多くの魚を巻き込まず、海を大切に」に対しては、「海の話ならゴール14であり、12ではないでしょと言われそうだが、先ほど話したように、SDGsでは他のゴールとの関連が大事。個性的で僕は好きです」と話しました。井口さんも「ここで、このコピーを出してくるのは、日本でこのチームだけだろう」と意外性を評価。会場の笑いを誘いました。

■生徒たちのコピーと寸評(1~5班)

1班 ターゲット12.4
・みんなで取り組もう!  自然思いのゴミの捨て方!
・人の生活と地球環境の対等な関係をつくろう。
蟹江さん「二つ目の案は、経済・社会・環境の三者が関連しているという話とつながっていて、いいなと思った」

2班 ターゲット12.4
・安全で地球と人にやさしい製品の管理を実現しよう
井口さん「日本語の仮訳にある化学物質という言葉が難しいと思っていたので、その言い換えがされていてよかった」

3班 ターゲット12.5
・かんがえる きょうも未来の環境を

4班 ターゲット12.5
・再利用できるものはリサイクルして、もったいないをなくそう
・無駄づかいをなくして、3Rを大切に
井口さん「もったいないと実際に言うときにこもる感情を表現すると良いと思う。かぎかっこや『!』マークを使うと伝わりやすい」

5班 ターゲット12.6
・大きな会社はたくさんの取り組みをすみずみまで届けよう。
・いろんな国の全ての企業が、できることを繰り返す。
井口さん「持続可能という難しい言葉を使わない工夫がすばらしい」

企業の責任、だけじゃない
徳田さん

26日の授業の締めくくりは、マニフレックスのマットレスを販売する株式会社フラグスポートの徳田真由美さんによる講演です。

創業当初から「あなたと地球の健康をマットレスで取り戻そう」を掲げる同社のマットレスは、芯材に金属製のスプリングやプラスチックファイバーを使用せず、環境に優しい素材を使っているそうです。また、真空のロール型に梱包することで一度に大量のマットレスを輸送できるようにし、温室効果ガスの排出削減にも配慮しています。

「つくる責任」だけでなく、「つかう責任」の重要性も消費者に届けたいという徳田さんは、「みなさんも選ぶ責任、買う責任、使う責任を意識したエシカル(倫理的な)消費で、メーカー側を動かしてほしい」と呼びかけました。

■生徒たちのコピーと寸評(6~10班)

6班 ターゲット12.6
・廃棄物処理 近況報告!!
・3Rを心がけて廃棄物を減らす
蟹江さん「一つ目の案はインパクトがあって良い」

7班 ターゲット12.8
・世界中で自然とともに暮らせる未来を。
・自然にやさしいライフスタイルを考えよう
井口さん「二つ目の案は、考えようという行動への促しがあって良い。逆に一つ目の案だと具体的な行動につながらないと思う」

8班 ターゲット12.8
・プラスチックゴミで多くの魚を巻き込まず、海を大切に

9班 ターゲット12.a
・ずっと続けられる作り方、使い方を世界中に広めよう
・皆んながずっと続けられるカンタンな作り方、使い方を広めよう!
井口さん「一つ目の案は、環境に配慮することが技術的、経済的に難しい発展途上国のことも考えながら一緒に取り組もうという気持ちが伝わる」

10班 ターゲット12.a
・視野を広げてクリーンな未来へ
・私たちの日常と科学の力で地球にやさしい未来を。
井口さん「壮大な目標を自分たちの生活につなげようと、深く考えられていてすばらしいと思った。環境に配慮することが難しい国とも一緒にというニュアンスがあればもっといい」

環境への配慮、身近なモノにも

11月2日には講堂で授業が行われました。前回の授業の後に出された宿題は、①身近な『長く使われているもの』を探そう②身近な環境に配慮されてつくられたものを探そう③身近な環境負荷を下げる購買行動を探そう、の三つです。

まずは、それぞれのユニークな回答が紹介されました。高校1年生の織田あすかさんは、①に対して「土鍋」と回答。織田さんが生まれる前から使われていて、今もご飯を炊くときに活躍しているそうです。同じく高校1年生の平野杏佳さんは、靴箱で見つけた桐の下駄と答えました。30年以上前に撮影された写真の中で、祖父が履いているのを見たそうです。

②の「身近な環境に配慮されてつくられたもの」については、高校1年生の檜森はるかさんが「学校の購買部で買えるエコバッグ」をあげました。中学1年生の時に買って以来、教科書などを入れる補助バッグとして使っているそうです。バッグのタグをよく見ると、環境保全に役立つ商品であることを示す「エコマーク」がついていました。

③の「身近な環境負荷を下げる購買行動を探そう」では、高校1年生の陶楽舟さんが「必要かどうかをしっかり考えてから購入すること。商品の来た道や行く先を知ること」と答えました。「商品の来た道や行く先を知る」は、1日目の授業で蟹江さんが発した言葉です。陶さんは、「すごく大切なことだと思った」。その他にも、認証マークのついた商品を買うこと、エコバッグを持ち歩くことなどの回答が寄せられました。

最後に、和洋九段女子高等学校教頭の新井誠司先生とフラグスポートの徳田真由美さん、朝日新聞社「SDGs ACTION!」編集長の高橋万見子さんが、講評しました。

新井先生

新井先生は「エコマーク」や「認証マーク」に触れた回答が多かったことから、常に環境に良い商品を探す意識を持ちながら生活する重要性を感じたと話しました。また企業に対しても「環境への配慮をしていることをもっとアピールし、エシカル消費を促進させるべきだ」とコメントしました。

徳田さんは「マニフレックスにも、クリーンな環境で製造していることを示すマークがついている。消費者に対してマークの認知を進めていきたい」と話しました。

高橋さんは、マークだけでなく作り手の工夫というところまで視点を広げ、「作っている人の顔が見えたり、作る工夫を知ったりすると、もっと愛着がわくと思う」とコメントします。現在、モノの生産過程などを伝えることで消費者と生産者を直接つなげるメディアが数多く生まれてきているそうです。そのようなメディアを通して生産者を良く知ることで、より環境に配慮した商品に愛着がわき、エシカル消費を楽しむことができるかもしれません。

行動を変えるきっかけに

2日間の授業を終えて、高校2年生の中村美結さんは「SDGsの重要性を再認識した」と言います。中村さんはSDGsの17のゴールは以前から知っていたものの、169のターゲットについてはよく知らなかったそうです。日本語コピーをつくるなかで、内容について深く理解することができたといいます。また、中学3年生の神代梨左さんは「SDGsに興味を持って自分でも調べていたが、あまりよく理解できていなかった。今回はいろいろな先生が、とてもわかりやすくお話してくれた」と振り返りました。

授業は、生徒たちが購買行動を見直すきっかけにもなりました。中学3年生の長﨑亜伽里さんは、最近買った使い捨てマスクの例をあげて、「とりあえずたくさんあるといいな、と思って買い物をしていた。自分が適当に買い物をしていたことに気付いたので直していきたい」。高校2年生の市川桃衣さんは蟹江さんの「たくさんのゴールがつながっている」という話が印象に残ったといいます。市川さんは海洋プラスチック問題に取り組むプロジェクトに参加していて「海の問題とゴール12のつながりを考えながら購買活動をしていきたい」と話しました。

「SDGs169ターゲットアイコン日本版制作委員会」は、全国の子どもたちから169ターゲットの日本語コピーを募集しています。学校単位でも、個人単位でも応募できます。締め切りは11月末。こちらからご応募ください。

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