2015年9月、ニューヨークの国連本部で「国連持続可能な開発サミット」が開かれ、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。193の国連加盟国(うち150カ国以上は首脳が参加)の全会一致でした。
「持続可能な開発」とは、将来世代の利益を損なわないようにしながら現在世代のニーズも満たす開発を意味します。SDGs(持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals)は、アジェンダに掲げられた進むべき方向への道標であり、00年から15年まで発展途上国の開発指針となった「ミレニアム開発目標(MDGs)」の成果が土台となりました。取り残した課題に引き続き取り組みつつ、先進国を含めたすべての国において達成するべき目標へと発展し、カバーする範囲も大きく広がりました。「誰ひとり取り残さない」の理念のもとに、17の目標(ゴール)と169のターゲットで構成されています。
2030アジェンダは「5つのP」もあげています。SDGsを「人間」「豊かさ」「地球」「平和」「パートナーシップ」の概念でとらえ直しており、別の視点から考えることでSDGsへの理解をより深めるよう促しています。
世界の課題は一段と複雑さを増しており、政府だけでなく、自治体や大学をはじめとする教育機関など、それぞれが「自分ごと」として取り組み、進み具合を検証していくことが強く求められています。企業はその中でも重要なステークホルダーです。国連グローバル・コンパクトなど3団体は「SDGコンパス」で「5つのステップ」を示し、どうやって企業がSDGsに取り組んでいけばいいかの手順を解説しています。
SDGsの達成目標年次とされる2030年まで、あと10年となりました。残念ながら、現時点で達成のめどはたっていません。このため国連は、20年からの残された期間を「行動の10年」と位置づけ、具体的なアクションを拡大・加速するよう呼びかけています。
あらゆる形態と次元の貧困と飢餓に終止符を打つとともに、すべての人間が尊厳を持ち、平等に、かつ健全な環境の下でその潜在能力を発揮できるようにする[目標1、2、3、4、5、6]
すべての人間が豊かで充実した生活を送れるようにするとともに、自然と調和した経済、社会および技術の進展を確保する[目標7、8、9、10、11]
持続可能な消費と生産、天然資源の持続可能な管理、気候変動への緊急な対応などを通じ、地球を劣化から守ることにより、現在と将来の世代のニーズを充足できるようにする[目標12、13、14、15]
恐怖と暴力のない平和で公正かつ包摂的な社会を育てる。平和なくして持続可能な開発は達成できず、持続可能な開発なくして平和は実現しないため[目標16]
グローバルな連帯の精神に基づき、最貧層と最弱者層のニーズを特に重視しながら、すべての国、すべてのステークホルダー、すべての人々の参加により、持続可能な開発に向けたグローバル・パートナーシップをさらに活性化し、このアジェンダの実施に必要な手段を動員する[目標17]
政府は2016年にSDGs推進本部を立ち上げ、昨年12月には「SDGsアクションプラン2020」をつくって「ビジネスとイノベーション」「地方創生」「次世代・女性のエンパワーメント」の推進などを掲げています。ただ、ドイツのベルテルスマン財団などが各国の達成状況を分析したリポート(20年版)では、北欧など欧州各国が上位を占めるなかで日本は17位にとどまりました。目標4「教育」、9「産業と技術革新」、16「平和と公正」は4段階評価で最高の「達成」ですが、5「ジェンダー平等」、13「気候変動」、14「海の豊かさ」、15「陸の豊かさ」、17「パートナーシップ」が最低の「大きな課題」でした。また、傾向を見る指標では10「不平等をなくす」が悪化しました。
国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)で、温暖化対策を話し合っています。2015年にパリで開催されたCOP21で採択されたパリ協定は、「産業革命からの気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑える」とうたい、その達成に向け各国が温室効果ガス削減の目標を表明しています。ただ、それを実現しても気温は約3度上昇するとの試算があり、グテーレス国連事務総長は「2050年に温室効果ガス実質排出ゼロ」を達成するよう各国に訴えています。次のCOP26は英国開催が決まっていますが、新型コロナウイルスの影響で、21年秋に延期されました。
厳しい状況にあります。コロナ危機でも、貧困層や移民への感染率が高く、十分な医療や予防策の恩恵を受けられないマイノリティーの境遇が浮き彫りになっています。米国では不安が募る中、白人警官による黒人男性の死亡事件をきっかけに、差別に抗議する大規模なデモや暴動も起き、問題の深刻さがうかがえました。国連は今後、深刻な経済危機が起き、約3430万人が極度の貧困に陥ると警告。これまでにないレベルでの国際協調の必要性を訴えています。貧困や差別の根っこを断つためには、気候変動や紛争に対処し、それらを理由に生じる食料不足を防ぎ、教育の機会も充実させるなど多岐にわたる対策が必要です。
目標1
貧困をなくそう
目標2
飢餓をゼロに
目標3
すべての人に
健康と福祉を
目標4
質の高い教育をみんなに
目標5
ジェンダー平等を
実現しよう
目標6
安全な水とトイレを
世界中に
目標7
エネルギーをみんなに
そしてクリーンに
目標8
働きがいも経済成長も
目標9
産業と技術革新の
基盤をつくろう
目標10
人や国の不平等を
なくそう
目標11
住み続けられる
まちづくりを
目標12
つくる責任
つかう責任
目標13
気候変動に具体的な
対策を
目標14
海の豊かさを守ろう
目標15
陸の豊かさも守ろう
目標16
平和と公正を
すべての人に
目標17
パートナーシップで
目標を達成しよう