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〈定点観測 岩木山のふもとから:1〉

2007年07月07日

 すぐそこに、岩木山がそびえる。旧岩木町新岡地区。合併して今は弘前市となった。集落を囲むように斜面にリンゴ畑が広がっている。

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農家はゴルフボール大に成長したリンゴの摘果作業に追われている。参院選の期間中も摘果で忙しい。収穫まで大半が手作業だ=4日、弘前市新岡で

 6日午後4時半、集落中心の五差路にワゴン車が止まった。「農家のみなさんも安心できる年金制度を実現したい!」

 マイクを握ったのは参院選青森選挙区に立候補を予定している民主党新顔平山幸司氏(37)。地元三上隆雄県議(73)とともに訴えた。

 リンゴ農家の修さん(61)は配られたチラシに目を通した。「農家への戸別所得補償制度を軸とした政策展開をします」とあった。

 「本当に実現できるのだろうか」と修さん。

 新岡地区は150戸ほどの集落だ。ほとんどがリンゴ農家で、自民党支持の人が大半だ。

 2年前、修さんも「郵政解散」による総選挙の時は、迷わず自民党の候補者に入れた。

 しかし、今回はまだ決めかねている。「一番の関心は農政だね。でも農家を守ってくれるのがどの政党なのか。違いがわからんね」

 リンゴが「作れば売れた」という30年以上前は、20キロ1箱で5000円だったふじの価格が、今では2、3000円。その一方で、新しい機械や農薬は年々高くなる。

 土地を売って借金を清算しようとしても、農地売買を厳しく制限している農地法の下では、買い手がついても、せいぜい1ヘクタール数十万円だ。

 30代の娘3人はそれぞれ仕事を持ち、「リンゴ園を継いでくれ」とは言えない。修さんは「10年もしたら、ここらへんは廃園だらけになるかもしれない」と思う。

 3日夜、妻の利美さん(57)は「原爆発言」で辞任表明した久間防衛相のニュースをテレビで見た。ひどい発言だったと思う。だが、与野党の批判の応酬には違和感を感じた。

 「非難合戦より政策を論議してほしいのに。農業なんて、議員にとっては二の次、三の次なんでしょ」。リンゴ畑と国会との遠い距離。どの党に一票を託せるか、これから考えるという。

 小集落にもかかわらず、新岡地区は弘前市議会議員を2人選出している。それぞれの陣営で活動を始めていた。

 旧岩木町長の田中元さん(59)は2日、弘前文化センターであった自民党の現職山崎力氏(60)の支部総決起大会に出席した。400人ほどの参加者が気勢を上げた。

 田中さん、山崎氏は同い年。20年来の知り合いで個人的にも親しい。4月に会った時は、まだ楽観ムードだった。田中氏は「中央で何か起きれば分からないぞ」と声をかけた。あの時の指摘が現実味を帯びるようになるとは、驚くばかりだ。

 もう1人、佐藤哲市議(54)は6月28日、弘前市亀甲町で、比例区から立候補を予定している国民新党の新顔津島恭一前衆院議員の事務所開きに出席した。

 佐藤さんはリンゴ農家で自民党員だった。

 だが、2年前の郵政解散を機に離党し、国民新党を支援している。

 「農家と地方を食い物にする自民党にはもう戻らない。今回の選挙は農家の投票行動にかかっている」

 和彦さん(70)は、10年前にリンゴ栽培をやめた。「肥料や苗代で経費がかさんで採算がとれなくなった」。今は自家用に野菜を作るだけだ。

 選挙のたび、自民に投票してきた。参院選の関心は年金問題だが、与党には同情している。「カッコいいこと言う野党も信頼できない。国の財政が苦しいのに何ができるっていうんだ」

 農業は継がずに、弘前市内の建設会社に勤める長男の昌一さん(45)は違った考えだ。

 2年前の総選挙では小泉前首相の「改革の信念」に共感して、自民に一票を投じた。会社から「動員」がかかり、自民候補の集会にも出た。

 だが、昌一さんはこう言う。「今、思えばだまされた」

 交付税の削減によって地方の財政難は加速し、公共事業の削減が建設業界を直撃した。

 給料は上がらず、8月支給されるはずのボーナスもあてにできない。

 「結局、低所得者が搾り取られるだけという政策が見えてきた。地方で雇用がなくて苦しんでいるのに、中央官僚は天下りした特殊法人を渡り歩いて何千万円ももらっている。許せないね」

 天下り改革として国会で成立した改正国家公務員法についても、「不十分な案を数の力で通した」と手厳しい。

 「どことは決めていないが、今度は自民以外に入れたい」

  ×  ×  ×

 12日公示、29日投開票される参院選。津軽の典型的な農村・新岡地区でリンゴ農家を中心に、農政、格差問題などで揺れ動く有権者の声を「定点観測」する。次回は公示後に掲載。=文中、名前のみの人は仮名です。

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