選挙は朝日で 2007参議院選挙 アサヒ・コム

ここから本文エリア

現在位置:asahi.com2007参院選地方ニュース青森> 記事

〈現場から:3〉くらし 将来の不安増すばかり

2007年07月11日

 青森市の茂木ナツエさん(75)は、4年前の夏に死のうと思った。

写真

茂木ナツエさんと博さん(右)。預金通帳と家計簿にしている分厚いノート(手前)。「10円でも20円でも、すべてつけています」とナツエさんは言う=青森市内で

 夫博さん(74)と2人暮らし。03年3月、博さんのパーキンソン病が悪化した。介護で家政婦の仕事を辞め、月30万円ほどの収入が途切れた。子どもはいない。

 博さんを残し、海に飛び込もうか。「恥をかかずに死ねる。それが一番いいんでないか」とナツエさんは思った。その気持ちを、親しかった近所の女性に打ち明けた。

 彼女から励まされ、生活保護を勧められた。申請は認められ、当初、2人で月15万円ほどの生活保護の「基準額」が得られた、という。

 基準額から、夫婦で得ている年金を差し引いた金額が、行政から生活保護として支給される仕組みだ。当時、この基準額には70歳以上に支給される「老齢加算」が、1人あたり1万7000円含まれていた。

 だが、04〜06年度に老齢加算が廃止された。基準額は下がり、年金が2人で月13万円ほどになる現在、冬の暖房費の上乗せを除くと、基準額との差額分は出ない。3万円の収入が減った。

 老齢加算廃止で、茂木さん夫妻の生活はますます苦しくなった。灯油や水道代を節約するため入浴は週1回、シャワーも2日に1回だ。

 今年3月、保護を勧めてくれた女性が86歳で亡くなった。葬式に「一緒にお花を出そう」と友人から誘われた。だが、金が出せない。

 「香典を出すから」と断った。「うそをつくしかなかった。本当に心がつらかった」

 ナツエさんは4月、市を相手取り、老齢加算廃止の撤回を求める民事訴訟の原告団に加わった。

 生活保護受給者が、県内で増え続けている。

 県全体で00年度、1万8000人に286億円が支給されたが、06年度には2万4000人に372億円に上った。

 国全体でも同様で、91年度は95万人に1兆3098億円が支給されたが、05年度は148万人に2兆5942億円が支給されている。

 青森市は06年度、7076人に計114億円の生活保護費を支給している。対象者のうち、老齢加算の対象となる70歳以上は2000人弱だった。

 加算分は1人あたり年約20万円で、廃止による節減額は4億円弱とみられる。国が75%を負担するため、同市の支出は1億円弱減った計算だ。

 老齢加算が廃止されたのは、「ぜいたく」と見なされたためだ。

 国の理屈はこうだ。

 厚労省によると、99年度の全国調査で、70歳以上のうち所得が下位20%の人は、平均で1カ月の生活費が6万5843円だった。

 これに対し、当時の生活扶助の基準額は平均7万1190円。老齢加算と合わせて平均で8万8112円になった。

 同省保護課の担当者は「明らかに高額だ。老齢加算がなくても高い。とりあえず老齢加算を見直した」と話す。

 低所得者への優遇措置は、老齢加算のほかにも次々と消えている。

 ひとり親の家庭に支給される「母子加算」は05年度から段階的に廃止されている。高額所得者が対象の所得税、住民税の減税は温存されたが、今年度から低所得者に影響する定率減税が廃止された。

 6月中旬、青森市の60歳代の男性は市から届いた納税通知書を見て驚いた。なんと、住民税が昨年の10倍以上、33万円になっていた。

 国から地方への税源移譲と定率減税の廃止に伴うもの、と理屈ではわかる。それでも「市から説明を受けていないし、オラたちには税のことがわからない。合点がいかない」と憤る。

 男性は水産加工業を営む。40軒ほどあった知り合いの同業者が10年ほど前からバタバタとつぶれ、今では20軒ほどになった。行政による経営支援の融資制度も「零細企業では、相手にしてもらえていない」と話す。

 「資本主義国家に生まれた経営者である以上、自由民主党だよ」。当初、運送業者として独り立ちした時に先輩から言われ、そう信じてきた。

 「国は冷たい。ここ5、6年、特にそう感じるよ」

 現在、事業は順調だが「オラが体を悪くして跡継ぎの息子が1人になった時にどうなるか。生命保険金くらいしか残せないよ」。納税通知書を見るたび、不安が募る。

 =終わり

このページのトップに戻る