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〈参院選に訴える:2〉教育 強まる国の関与に懸念

2007年07月05日

 安倍政権が重要課題と位置づける教育改革。首相直属で昨秋に発足した有識者による「教育再生会議」(野依良治座長)は6月、首相に第2次報告を提出した。

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02年度に勝山市内の小学校で使われた6年生の通知票。「日本を愛する気持ち」が評価の対象となった=勝山市教委提供

 ゆとり教育の見直しなどをうたった1月の第1次報告に沿い、必要に応じた土曜授業の実施を提言したほか、現在の「道徳の時間」を「徳育」として教科化することが打ち出された。点数評価はしないが、個人の価値観にかかわる分野で国の関与を強める形だ。

 「教育の憲法」と言われ、戦後教育を支えてきた教育基本法は昨年12月、制定から59年を経て改正された。教育の目標として新たに「愛国心」条項が盛り込まれた。「伝統と文化を尊重し、我が国と郷土を愛する態度を養う」との表現をめぐっては、国による価値観の押しつけにならないかなどと国会では懸念も指摘された。

 福井市内の30代の主婦。普段は4人の子どもの子育てに追われる毎日だ。政治には日ごろ強い関心を持っているわけではないが、教育基本法改正には漠然とした不安を感じた。「道徳や、国が好きだという気持ちは先生や子どもそれぞれが違うものを持っていると思う。法律に書かれることで、子どもたちが一方的な価値観を押しつけられるなら心配です」

   ◇   ◇

 「愛国心」の評価は、すでに02年度から県内の小学校で導入された実績がある。当時の朝日新聞の調べでは、少なくとも勝山市9校と、当時の坂井、丸岡町(いずれも現坂井市)各1校の計11校が小学校6年生の通知票で社会科の評価の観点の一部で使った。

 勝山市の9校では「日本の歴史、政治、国際社会での役割に関心を持ち、日本を愛する気持ちと世界の人々と共存する自覚を持とうとする」と表現された。通知票の様式は管理職らが案を出し、最終的に市教委が承認したという。

 しかし、同市では「日本を愛する気持ち」のくだりが、03、04年度は「国を大切にする気持ち」に変更。05年度は「我が国の伝統」、06年度には「我が国についての理解を深め」に変わった。当時の坂井、丸岡2町の2校も「愛国心」に結びつく表現は03年度以降、用いていない。

 理由は、その評価方法の難しさだった。

   ◇   ◇

 評価する際、学校では通常、宿題の提出率や授業態度、テスト成績など客観的、公平な基準を設けて目標に対する達成度を3段階などで判断する。

 「愛国心」の評価に携わったある男性教員は「愛国心はそれぞれが持つもので、共通の目標を設定することはできなかった。何をどれだけやり、どのような姿勢や態度に愛国心があるのか、判断するのは難しかった」と振り返る。複数の教師と相談した結果、この学校では基準をつくらず、ほとんどの児童の評価をA、B、Cの3段階のうちBにしたという。

   ◇   ◇

 改正教育基本法の愛国心の規定について、文部科学省教育課程課は「内心を直接に評価するようなことは憲法の思想、信条の自由に反し、あってはならない。『愛国心』を評価の観点として目標に掲げて、学習に取り組む姿勢や意欲を評価することは可能と考える」としている。

 一連の教育改革について、和光大の梅原利夫教授(教育学)は「国家による内心の自由への介入が強まり、教育の危機である」と危惧(きぐ)する。「『愛国心』をはじめ幾多の態度目標が、改正された教育基本法や学校教育法に明記されたことで、教育現場での評価のあり方にも影響が及ぶ。教育再生会議が提案している『道徳』の教科化により、態度を評定することで内面の心が支配される。いい評価を得ようと本音とは違う態度を示せば、これこそ非道徳的である」と語る。

 先の男性教員は「国を愛したり、誇りに思ったりすることは大切なことだ。ただ、法律に書かれることで決まった価値観が押しつけられるようなことがあれば、現場は息苦しいものになると思う」と話す。

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