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〈参院選に訴える:6〉福祉 介護の現場、細る担い手

2007年07月10日

 「コムスンの問題が起こった時、すごく心配した。こんな田舎で、事業の次の引き受け手があるかと……」

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小浜市社協のデイサービス。高齢者たちがスタッフとゲームを楽しんでいた=小浜市遠敷の市総合福祉センターで

 高浜町内の閑静な住宅地。訪問介護大手コムスン・高浜ケアセンターを利用する沢田十三子さん(82)は振り返る。

 腰座骨神経痛や内臓障害を抱え要介護1。公務員だった夫は91年に病死した。その前の5、6年間夫を介護し、8カ月ほどは24時間介護も経験した。前年には、新潟県内で大手生命保険会社に勤務していた長男(64)が脳出血で倒れ、自宅に戻った。車いすの長男は要介護2だ。2人は、食事や洗濯の生活援助、身体介護でホームヘルパーに全面的に頼る。「今の介護維持は切なる願い」と沢田さんは訴える。

   ◇   ◇

 コムスンは介護報酬の不正請求で、今後4年半、介護サービス事業所の新規指定や更新を認められない措置を国から受けた。県内事業所は6カ所あり、6月1日現在の利用者は計300人(県調べ)。来年3月以降、順次、更新期限切れを迎える。県はヘルパーの配置や介護報酬の請求内容を調査し、今月中に結果をまとめる方針だ。

 高浜町でのコムスン利用者はうち25人。町内の高齢化率は現在24.4%で介護サービスへのニーズは高いが、町内でほかに訪問介護に携わるのは町社会福祉協議会と別の民間事業者の計2事業者だけだ。「コムスンがなくなった場合、利用者全員の受け入れは無理」と町福祉課は話す。町では対策として、京都府舞鶴市の事業者への依頼や、ヘルパーを増やすための養成講座の独自開催を検討している。

   ◇   ◇

 沢田さんは昨春、依頼先の事業者を高浜町社協からコムスンに替えた。担当のヘルパー3人が相次いでやめたからだった。訪問介護のヘルパーは町内3事業者で計24人(常勤8人、非常勤16人)。ケアマネジャーの一人(50)は「利用者への対応は今でも、いっぱい、いっぱい。なり手がないのです」。

 福祉サービスの原点の訪問介護。だが、きつい労働にもかかわらず給与が低い実態が浮かび上がる。財団法人・介護労働安定センター(東京都)の05年度の全国調査では、介護労働者の総平均賃金は月額17万2400円。年収200万円余りとなる額は「ワーキングプア」の若年労働者と重なる。年間の離職率は17.7%にのぼる。

 高浜町社協は小浜と舞鶴のハローワークにヘルパーの求人を出し続けているものの、反応はゼロ。福井市と小浜市の医療・福祉の専門学校でも介護福祉関係学科は定員割れ。景気が回復し、他業種に流れるからだ。

   ◇   ◇

 今月6日。コムスン・小浜ケアセンター(小浜市)のヘルパー22人の半数が7月末で退職する動きが表面化した。同事業所の更新期限は来年3月。その後の雇用を懸念したとみられる。市は、やめるヘルパーとその利用者との関係を可能な限り維持できる対策に懸命だ。

 7月初め、同市社協にはコムスンのヘルパー2人が面接に訪れた。8月から採用予定という。

 同社協の豊永真誠事務局長(53)は指摘する。「介護現場の最大の問題は人手不足。コムスンの問題の背景もそこにある。今の制度だと、ヘルパーは限られた時間でいかに効率的に動くかが第一で、利用者とゆっくり話すことはできない」

 厚生労働省は昨年4月からの制度改正で、全体でマイナスとなるよう介護報酬を引き下げた。一方で、新たに報酬対象として介護予防サービスを認めた。従来の「要支援」「要介護1」を、「要支援1」「要支援2」「要介護1」に再編。軽度とされる要支援者に予防サービスを受けてもらい生活の自立を促すという。要支援者には月単位の定額制を導入した。膨らむ給付の抑制が背景にあるとみられる。

 同市社協はその抑制がもろに響き、06年度の経常収支で初めて単年度赤字(赤字額689万円)を計上した。収入のほぼ100%を介護報酬に頼る民間の訪問介護事業者の経営はさらに厳しい。

 日本福祉大の石川満教授(福祉行政論)は「国の保険給付抑制のあおりで、介護労働者は生活維持ができない賃金になっている。コムスンの問題はこうした現状をはからずも明らかにした。サービスの質確保には給付の確保が前提。福祉は奉仕の精神だけでは成り立たない」と話す。

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