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〈論点・争点:6〉農業 「強い農家」か、小農補助か

2007年06月24日

 旧川西町(十日町市)の上野地区。水田の広がるこの地域に2月、六つの集落の農家186人を構成員とする株式会社「上野」が設立された。初代社長の清水幸夫さん(69)は言う。「農業における地域の担い手として、この会社を大木に育てたい」

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中山間地域が多い県内は、新制度が求める農地の確保も容易ではない=南魚沼市内で

 構成員のほぼ全員が兼業農家だ。国が大規模営農を目指すなかで、自分たちの農地を絶やさず、後継者難にも対応するため、昨春から法人化を目指してきた。躊躇(ちゅうちょ)する声もあったが、「このままでは中小農家は生きていけない」と説得した。

 構成員が持つ農地の合計は150ヘクタール。田植えや稲刈りなど農作業を会社が請け負い、構成員は委託費を支払う。一方で、会社は農作業に従事した構成員に給与を支払う仕組みだ。農機具も共同で使う。初年度の売り上げ目標は1億2000万円。将来的には独自の販路も持ちたいという。

 「認定農業者2151件、集落営農24件」

 「戦後農政の大転換」と呼ばれ、国が今年度から始めた「品目横断的経営安定対策」への県内の加入申請状況(農水省発表、5月末時点)だ。

 新制度の特徴は、すべての農家を守ってきた国の支援の方向が、やる気のある「担い手」に限られたことだ。コメや大豆、麦など主要5品目に絞り、認定農業者は4ヘクタール(北海道は10ヘクタール)以上、集落で農作業を共同で行う集落営農なら20ヘクタール以上の大規模農家のみ助成する(中山間地域などには特例もある)。農家に経営規模拡大や組織化を促し、「強い農家」を育てることが目的だ。

 具体的には、5品目の合計収入が過去の平均収入を下回った場合、国が差額の9割を補填(ほてん)する。米以外の4品目に関しては、外国産農産物との格差をなくすため、過去の生産実績などから算出された助成金も合わせて支払われる。

 これに対し、野党は新制度を「小規模や兼業農家の切り捨てだ」と批判する。民主党はすべての農家を対象にした戸別所得補償制度の創設を打ち出した。農産物の市場価格が生産費を下回っても、差額を国が直接補償する制度で、必要総額を1兆円とはじく。

 「民主の言ってることは確かに魅力的だな」

 南魚沼市で水田1ヘクタールを持つ男性(72)はそうつぶやく。全国有数のコメどころで、こだわりを持ってコメをつくってきた。集落営農や法人化による農作業の受委託は考えられない。「品目横断は小農いじめ。しかし、後継ぎもおらず、これからどうしていくか」

 コメの産出額(05年)が全国1位、耕地面積の広さ(06年)も全国2位の新潟県。過去には20万戸を超えた県内農家数は、05年には10万戸弱まで減った。農村の高齢化にも歯止めはかからない。農業就業人口のうち65歳以上が占める割合は62%を超えた。

 新潟農政事務所の丸山明彦・農政推進課長は「高齢化の問題は大きい。だからこそ、国が補助する対象を担い手となる人たちに絞り、強い農家をつくらねば、日本の農業はやっていけない」と説明する。

 「上野」の清水さんには、担い手対策のほかに、もう一つ気がかりがある。世界貿易機関(WTO)の農業交渉など国の貿易戦略の行く末だ。「さらに関税が削減され、安い外国産農産物が入ってくれば、魚沼米だって値段が下がるのは間違いない」

 外交や経済政策での政府の姿勢に不信感がつきまとう。「犠牲になるのはいつも農業。自分たちの食べるものは自分たちで作っていたいんです」

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