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〈09総選挙 やまなし〉マニフェストを問う:1 中小企業

2009年8月4日

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◇「実態、貸し渋り状態」 有効な対策を求める

 7月下旬。国中地域の病院の診察室から、60代の男性が出てきた。両脇に付き添う妻や長女と笑顔で会話を交わすことはなかった。

 男性は同月中旬、突然の過呼吸に襲われ、救急車で搬送された。「うつ」と診断され、そのまま入院。退院後は週に1回、通院している。「銀行に融資を断られ、精神的に追い込まれたためだ」。男性に代わって現在、工場を切り盛りする妻は憤る。

 「リーマンショック」に端を発した米国発の世界同時不況。自動車関連の部品などを加工する男性の工場も取引先からの注文が激減した。2〜3月は注文がほぼなくなり、加工機のリース料など月数十万円の支払いが一時困難になった。工場開設から15年近く。初めて迎える事態に家族は不安に襲われた。

 男性と妻は間もなく銀行と融資の交渉を始めた。政府が中小企業の資金繰り支援に、緊急保証制度の条件を緩和し、対象業種を広げたことを知っていたからだ。リース会社に支払いの猶予を求め、了承を取りつけた。

 だが、肝心の銀行の担当者は、1千万円を超える借入金が残っていることなどを理由に「上の方針だから」と首を縦に振らなかった。取引を始めてから返済が遅れたり、金利の減免を受けたりしたことは一度もない。悔しかった。

 男性は生命保険を解約。妻は飲食店で1日3時間のアルバイトを始めた。見かねた長女も預貯金を取り崩し、支払いに協力してくれた。

 一部の業種で持ち直しの兆しが出始めるなか、6月以降、少しずつ注文が入るようになった。そんなときに男性は体調を崩した。妻は「銀行に手のひらを返されたようなもの」と話す。

 各党がマニフェストで中小企業向け融資に努める方針を改めて表明している。だが、金融機関が審査に関与する現状では、個別の判断で融資を見送る可能性がある。県内の金融機関は「貸し渋りはない」と口をそろえるが、ある幹部は「再生の見込みがない企業に追い貸しはしないだろう」と説明。融資を受けられずに、行き詰まる企業も相次いでいる。

 男性は体調を見ながら、工場に出ている。貸し渋りの監視強化が盛り込まれたマニフェストを見やりながら、妻はいう。「マニフェストに中小企業を支援すると盛り込むだけでは、どうも信用できない。金融機関の貸し渋りに有効な対策をきちんと講じてほしい」

 (床並浩一)

    ◇

 18日公示、30日投開票の総選挙で、有権者の審判を仰ぐ各政党のマニフェスト(政権公約)が出そろった。これらの公約は、要望に応えているのか。対象とされる現場を訪れ、関係者の「今」と思いを伝える。

◆中小企業支援策、各党色とりどり

 与野党を問わず各政党はマニフェストで、資金繰りに必要な緊急融資をはじめとした中小・零細企業の支援強化を打ち出している。中小・零細の再生なしに地域の再生はあり得ないという考えからだ。

 自民、公明両党は不況が深刻化した昨秋以降、政権与党として取り組んできた中小企業対策を「実績」として強調。「信用保証協会の緊急信用保証や対象業種の拡大」(自民)や「企業再生ファンドの拡充」(公明)など従来の方針に沿った公約を掲げ、貸し渋りや貸しはがしの監視強化も主張している。

 民主、社民両党は、融資の拡充や金融機関の監視強化のほか、「中小企業の法人税率を18%から11%に引き下げる」と減税策を提示。共産党は「中小企業予算を1兆円程度に増額」、国民新党は中小・零細企業向け融資について「最長で3年間、返済を猶予する」としている。

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