現在位置:
  1. 2009総選挙
  2. 地方ニュース
  3. 山梨
  4. 記事

〈09総選挙 やまなし〉マニフェストを問う:3 子育て支援

209年8月7日

印刷印刷用画面を開く

●「出産に壁」切実な要望

 3人目の壁――。実感するよねえ、と「ママ友」同士でうなずきあう。

 南アルプス市の団地に住む今津絵里奈さん(26)は、6歳と4歳の男の子の次に、本当は女の子が欲しくてたまらない。かわいい服を着せて、将来は母と娘の気の置けない親子関係を、と夢に描く。

 会社員の夫も同じ考えだ。でも、3人目は踏み切れずにいる。「洋服やオモチャ、これからの教育費。2人目までは『兄弟がいた方が』と迷いはなかったけど、3人だと経済的に大丈夫か心配になってしまう」。友人との会話で、大月市独自の制度が話題になる。第3子以降に計100万円の支給。「このくらいインパクトがあると、思い切って産んじゃうよね、って」

 主要政党のマニフェストには、「子育て支援」の公約が目白押しだ。民主党の「子ども手当」は1人月額2万6千円。「3人だと、パートのお給料くらいになるね」。考えちゃうな、とつぶやく。

 今津さんと子育てサークルで一緒の新津幸さん(29)も、経済的支援はありがたいと思う。ただ、同党案だと配偶者控除などが廃止になると聞かされ、分からなくなってきた。「手当は中学生までで、控除廃止はずっと続く。マイナスの話もしっかり説明してくれないと、選べない」

 知人には、子供のいない夫婦もいる。不妊治療中の30代の女友達は「子を持てない自分のところから(財源を)もっていかれるのは納得いかない」と漏らしていた。立場によって受け止め方に違いがあるのを知って、ますます選択が難しくなったと感じる。

●現金給付は疑問の声も

 子育て世帯への支援策に所得制限を設けるか否かも、立場次第で意見が分かれる。

 甲府市の高木かおるさん(49)は、所得制限なしの一律給付に賛成だ。娘2人を抱えて離婚してから、薬剤師の資格を生かし、女手一つで2人を大学生にまで育てた。一律給付には「ばらまき」批判も伴うが、「頑張って公的支援を受けない水準の収入を得て、税金をきちんと払ってきた人には、見返りがあって当然では」。

 ただ、主要政党がことごとく掲げる現金給付の拡充には疑問があると言う。「本当に子のために使われるのでしょうか」。授業料や給食費、修学旅行積立金などを軽減すればいいのに、と体験から思う。

 現金給付に否定的なのは、子育て支援NPO「ちびっこはうす」(甲府市)理事長、宮沢由佳さん(46)も同じだ。「お金をばらまけば、受け取れる人と受け取れない人との間で不公平感が生じる。介護保険のように、必要なサービスを必要な人に届ける仕組みを作るべきです」

 18年に及ぶ子育て支援の経験から、宮沢さんは確信を持って言う。「なぜ産まないのか。答えは親が自信を失っているから」。出産後の職場復帰を円滑化して収入面の自信を回復する。きめ細かい保育サービスを用意し、育児不安を解消できる経験豊かな人材を配置する……。育児世帯の多様なニーズに応えるには、総合的な施策が不可欠だ。

 「すべての子どもを大切にするというメッセージ。それが明確なマニフェストは、どれでしょうか」(吉田晋)

◆主要各党の公約

 主要各党のマニフェストには「子育て支援」の見出しが躍る。内容は(1)現金給付(2)教育費の無償化(3)保育サービスの確保(4)出産・小児医療の充実、など。

 中でも、民主党が目玉施策として打ち出した「子ども手当の創設」は、(1)のあり方を巡って大きな争点となりつつある。現行の児童手当(小学生まで1人月5千〜1万円、所得制限あり)に代えて、中学生までの子どもがいる世帯に1人月2万6千円を一律支給する。05年総選挙のマニフェストに「1万6千円」で登場し、07年参院選にあたって1万円増額されたプランだ。

 同党は「出産を控える理由で最も多いのは経済的負担を訴える声」だとして、「累進課税で応分の税負担をしている高所得者の子にも支給する」と説明する。

 同時に、所得税の配偶者控除と扶養控除(中学生まで)を廃止し、税収増の分を財源の一部に充てる。育児費用の負担軽減の意味も持つ扶養控除の廃止は、子ども手当と引き換えで理解しやすい一方、無収入か低収入の主婦などがいる世帯で、税負担能力を考慮して設けられている配偶者控除の廃止が、「子育てを社会全体で支える」(同党政策集)との説明で理解を得られるか、問われることになる。

 なぜなら、子どものいない世帯のうち、共働きや単身者は税負担が変わらないのに、専業主婦世帯だけが増税となり、子育て世帯への所得移転が行われるからだ。同党は「マイナス影響は全世帯の4%未満」とするが、それでも約200万世帯に上る。

 所得税の各種控除は、それだけで重要な税制改革の論点。手当支給で配偶者の就労動機が低下し、女性の社会進出がかえって後退する恐れがあることも議論の対象になり得る。

 一方の与党側は、支給対象を限定する現行制度の枠組みを基本的に維持する。公明党は「児童手当の支給対象の中学3年生までの引き上げと、額の倍増」を、自民党は詳細な制度設計は示さないまま「子育てに配慮した低所得者支援策」を掲げている。

 加えて(2)では「就学前3年間の幼児教育の無償化」を、自公両党がそろってマニフェストに盛り込んだ。高校授業料について、民主党が「実質無料化」を約束するのに対し、自公両党は支援対象を絞り「親の所得に応じた減免や、給付型奨学金の創設」などを挙げている。

検索フォーム