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〈問う 8月総選挙:1〉雇用 生きるのに精いっぱい

2009年8月8日

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 所持金は1万2千円。銀行口座に571円。それが全財産という男性(40)は7日朝、広島市の東区役所に生活保護を申請した。「夢も希望もないんよ」

 07年秋以降、南区にあるマツダの工場で派遣社員や期間従業員として働いた。マツダが用意したアパートに住み、手取りは約15万円。だが今年2月、約100人の派遣社員と期間従業員に会社側が告げた。「3月末でやめてもらいます。苦渋の選択です」。まるで物扱いだと思った。

 4月末にアパートを出てから、カプセルホテルやサウナ、ネットカフェを転々。最後の給料約9万円を食いつぶし、5月末からは雇用保険で月約11〜13万円を受給したが、7月で支給は終わった。

 今、市民団体「反貧困ネットワーク広島」(代表・山田延広弁護士)の紹介で、南区のワンルームマンションに住む。同ネットが「シェルター」と呼ぶ、生活保護の受給が決まるまでの仮住まいだ。

 職歴に合う自動車関連産業の求人はほとんどない。他業種も即戦力を求めるケースが多い。「昔はまじめに働けば暮らしていけた。日本は、努力しても報われない国になってしまった」

●10年ぶり正社員 

 4カ月に40社――。広島市安芸区の男性(43)がハローワークなどで採用を申し込んだ数だ。2月に尾道市内の製缶会社で「派遣切り」に遭った当初はこだわっていた「正社員募集」の文字も、いつしか気にしなくなった。

 6月のある日、タクシー会社の採用面接を受けた。社長はその場で「保証人を探してほしい」。半ばあきらめていた正社員に決まった瞬間だった。正社員として働くのは、約10年ぶりという。

 大阪出身。高校を卒業後、主にアルバイトや派遣労働者として生活費を稼いできた。非正規では貯金もできず、生きるのに精いっぱいだ。「せめて家庭を維持できるくらいの仕事がないと、結婚すらできない」と憤る。

●「声上げないと」 

 6月20、21日に福山市内の公園で開かれた「福山派遣村」。派遣切りにあった人たちを対象に雇用や生活相談、カレーライスの炊き出しがあった。開村の中心は、同市大門町のシャープ福山工場で働いていた元派遣社員たちだ。

 昨年末に派遣元から解雇された同工場の20〜40代の男女39人は「泣き寝入りはしない」と「福山シャープ関連労働組合」を結成。派遣元の人材派遣会社(本社・大阪市)に、解雇撤回や賃金補償を求めて1月7日から団体交渉を開始。その結果、3月下旬に協定書を締結して雇用契約の残存期間に応じた賃金相当額や解決金の支払いを勝ち取った。

 解決までに、県内外の労組などからカンパ、食料などの支援を受けた元派遣社員たちは「恩返しがしたい」と再び団結し、派遣村を開いたという。元労組委員長の女性(26)は「声を上げないと何も伝わらないし始まらない」。

     ◇

 構造改革が叫ばれた前回衆院選から4年。昨秋以降の経済危機が市民生活を直撃している。「8月総選挙」を前に、県内各地の暮らしの現場を歩いた。

 (松尾俊二、鬼原民幸)

 <県内の雇用情勢> 広島労働局などによると、完全失業率は今年1〜3月で4.1%(季節調整値)と、昨年同期比で0.6ポイント上昇した。6月の有効求人倍率は0.51倍で、昨年同月より0.61ポイント低下。非正規労働者数は07年に約3万7千人だったが、昨年10月から今年8月に、約4400人が雇い止めや派遣切りに遭った。県社会援護課によると、昨年6月に約3万5100人だった県内の生活保護受給者は、今年6月に約3万8600人に増加。今年に入り月200〜600人のペースで増えているという。

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